CHAPTER 1

 ニッサ・レヴェインはカサカサ、ポキリという音を聞いた。下生えを抜けて自分のほうへハイバが駆けて来ているのはわかっていた。彼女は、毒のある角に用心深い目を向けたまま、手の上に止まった猛禽甲虫を慎重につかんだ。彼女が見守っていると、その虫は毛のある紫の羽を広げた。
 「こちらに、速く」ハイバが言った。草むらから大声で。
 ニッサは見上げ、彼が動けないのを見た。彼の目は握りこぶしほどの大きさの甲虫に向けられていた。彼は後ずさったが、遅すぎた。彼を感知したのか、その甲虫は突然彼の顔めがけ飛び上がった。ハイバはしゃがみ、そして後ろ向きに倒れた。甲虫は彼の耳の側を通り過ぎ、木々の間に消えていった。ニッサはそれを見守っていた。
 「いつものように、静かに頼むわね」彼女は言い、彼女は甲虫が飛んでいった枝の隙間に目を向けた。微風が葉を揺らし、ニッサは息を吐いた。
 「いつの日か」ハイバは言った。「そう言わなくなりますよ」
 彼女はハイバが体をはたくのを見ていた。森の地面の只中で、汗を吸った革、ジャーウォレル樹の樹液、苔の臭いが彼から漂ってきた。
 「我々タジュールはこんな下のほうをこそこそして過ごしたりしません」甲虫の飛び去った方向をちらっと見つつ、彼は言った。「下のほうでは何でもそうしているのですかね」
 ニッサは彼の力量を見極めて、心の中で微笑んだ。多くのタジュールと同じく、ハイバは軽装でよく訓練されている。彼のベルトには短剣が1本下がっていて、彼のクライミングフックとロープに当たってガチャリと鳴った。彼の胴まわりと腿は腰帯がぐるぐると複雑に交差していて、肩の背負い紐はイボイノシシの皮と変わり樹の樹皮でできている。後者は千切れないほど丈夫だ。彼の両腕は長い筋肉が可能な鞍付けがされていて、彼女も知っているように瞬発力は驚異的だ。彼は瞬きの半分ほどの間に、切り立った崖の表面に取っ掛かりを見つけ、1本の指で3人のエルフを支えることができる。

彼女は、彼なら以前よりさらに多くを支えてのけるだろうと見て取った。彼は以前、彼女がぐらつく岩の峡谷でつま先の支えが外れたときに彼女の命を救ったことがある。タジュールとは違い、彼女の属するジョラーガ・エルフたちは登攀技術は高くない。だがその欠点を補って余りある隠密行動、召喚能力、勇猛果敢さを持ち合わせている。
 彼女は肩をすくめて、長い杖の皮ヒモを肩の後ろの定位置に投げ掛け、ハイバの後を着いて行った。
 定住樹への帰り道はくさびを打って登っていく。栓抜きのような形の変わり樹の幹と苔が広がる枝の道は、10人のエルフが肩を並べて歩けるほどに広い。彼らはすぐにぶらさがった地衣類の間に隠されたロープの橋を見つけた。それはいつもニッサにそよ風に揺れてうごめく蛇を思い出させる。 ヘビなんて。 ニッサはゴクリと唾を飲み込んだ。蛇はオンドゥのいたるところに満ちている――実際のところ、彼女が近寄ろうとしたロープの手すりの周りに1匹巻きついていた。 ヘ、ヘビなんて。 ニッサは手すりを通り過ぎるときに震えださないよう努めた。 吸血鬼のほうがヘビなんかよりよっぽど汚らわしいわよね。 ハイバは彼女の渋面に気がついた。エルフの青年は、彼らが歩くにつれにやにや笑っていた。
 「まだ蛇が怖いのですか」彼は言った。質問というより断定だった。
 「"まだ蛇が怖いのですか"と考えているように思えたけれど、葉の語り手の隊長殿に対して?」彼女の公的なタジュール・レインジャーの肩書きを使って言い直した。「あなたそう言いたいのよね?」
 「まさしくそう言いたいのですよ、葉の語り手の隊長殿に」ハイバは言った。彼が自分をからかっていることはわかっていた。別に気にしすぎたとも思っていなかった。ハイバはか弱きエルフたちがこの場所で友と呼べる近しい存在だったからだ。
 彼らが木々のまさに近くに来たところだった。彼女は火の臭いを嗅ぎ取った。だが木はとても巧妙にカモフラージュされており、彼らがその幹に辿り着くまで、森は破られることなき静寂に包まれているかのように見えていた。変わり樹の絶え間ない軋みだけがその静寂を満たしていた。
 静寂は、彼女を引き取った部族の持つ別の奇妙な一面であった。彼らが沈黙を要することが彼女には理解できなかった。古き故郷であるバーラ・ゲドは騒がしい場所だったが、そこのジョラーガに戻ることもできないのも確かだった。彼女がタジュールとの約定を果たすまでは。それはジョラーガの最高指導者全員がしてきたことだった。一定期間、ほかの部族と共に異国の地で暮らすということ。しかしニッサの場合さらに長期に渡っていた。彼女は過去に久遠の闇を旅してきたのだ。見渡す限りの草原の平坦な地へ、金属と火の地へ、お互いを支配しようとする人々が住む終わり無き都市の地へ。だが、それらの次元のひとつとして彼女には合わなかった。そのどこよりも、ゼンディカーより美しく、マナに溢れた次元はなかった。だから彼女はすぐ後ろ髪を引かれる思いを持ったのだ。

 ニッサは自分の考えから抜け出た。ハイバは歩くのを止めて、橋の真ん中でじっと立っていた。長い耳が上に反り返っていた。はるか下方に、彼女は地面部分のくぼみを周る猛禽の翼が空を過ぎていく音を聞いた。上方は、栓抜き状の枝の緑のもつれは奇妙に止まっていた。そのとき、彼女はそれを聞いた。リズミカルなひっかく音。前方のどこか、上のほうだ。なにか物音を立てるよりも彼女は慎重に背中の装備帯から自分の杖を抜き放つほうが良いことを熟知していた。
 どうやら数は多いらしい。変わり樹森には危険な肉食動物が山ほど居る。シム猫はその鋭い背中の爪で蹴りつけるし、割った石で作られた剣を持つ森トロールなんかも居る。おそらく不死のタジュールであるかもしれない。夜中に森の地上部分をうろつきまわる輩で、コーの伝説では眼球の穴から生ける者の脳を吸い取るのだという。
 それともそれ以外の何か、最近ひそやかに噂される新たな森の脅威かもしれない。何かが見えてきていた。
 ひっかき音は続いていた――変わり樹の枝の堅い木の向こうから、鋭く長い爪の音。まさかオンドゥのベイロス!? 彼女の心は突如悲鳴を上げた。彼女はそれを見たことがある。エルフの数倍の大きさがあり、身軽に幹から幹へと飛び移る――体長の50倍近くの距離を跳ぶのだ――タジュールをその太い鉤爪で真っ二つにする。気ままに彼らは襲いかかり、家族全員を平らげてしまえる。
 ニッサとハイバはじっと留まって木々のきしみを聞いていた。その削りカスでハイバが微笑み、彼のベルトからフックを取り出すまでは。彼はとても慎重に、通行証の代わりとして近くの枝にそれを放り投げた。間も無くその枝の向こうから口笛が響き、ハイバはフックを戻してベルトに掛けると前へ歩いていった。
 二人の見張りが苔の巣の梯子の上に腰掛けていた。そのエルフたちが姿を見せる前にニッサが数秒その巣を見つめていなければならなかったほど、彼らは上手に隠れていた。彼らが通り過ぎるときに1人が頷きを返した。その2人の後ろの枝は、器用な魔力で長い角笛のように加工され、定住樹に警告を吹き鳴らせるかのように思われた。
 目前に開けた定住樹の定住地の全景には、彼女はタジュールの建築家に賞賛を送らずにはいられなかった。一ヶ月ここで生活していても、いまだにこの光景には腕の産毛が逆立つ感動を覚える。超巨大な変わり樹の幹や枝に、数千もの鮮やかな色の木と苔、面晶体の形をした小屋が絡み合い、編み上げられた樹皮の巨大なベルトとなって巻きついているのだ。

 複雑に組まれた木の支柱、ロープ製の吊り橋、板張り歩道は弧を描く輪の木で飾られていた。樹皮を突き刺すあらゆる試みも変わり樹は治してしまっているという事実は彼女の驚きをただ高めていた――かの器用な部族はクギをひとつも使わずに驚くべきことをやってのけている。ロープの橋はきしむ階段と板張り歩道のひとつと合流した。ハイバは太い枝の頂上にある屋敷へと向かう道を先に立って進んだ。他のタジュールも同じ方向へ歩いている者がいた。多くの者は互いの間で聞こえるくらいのひそひそとした話しぶりで会話をしていて、体中に皮ヒモを巻きつけた完全装備で細身の剣を携えていた。ニッサの記憶にあるジョラーガは、過去の戦闘で受けた傷跡に死んだ敵の血を塗って誓いを叫ぶような者たちばかりで、タジュールのように背が高く素晴らしい者は1人たりとも居なかった。
 彼らが着いたときには屋敷は人で溢れかえっていた。白いジャディ樹製の窓枠に座って、乾燥させたクコの実の小袋をあちらこちらに手渡ししているタジュールもいる。部屋の中央の一段高くなった講壇には、ニッサが見かけたことが無い2人のエルフが立っていた。彼女は静かな口調によって訪問者が重要人物であることを見抜いた。
 ハイバが彼女の耳の近くに寄った。
 「語り部スティーナ殿です」彼は言った。
 その語り部と重要な訪問者の2人を、その部族とともに過ごしているときに定住樹の傍で止まったのを彼女は以前見たことがあった。この部族がいかに大きかろうと講壇に立つ2人のような訪問者に匹敵するものは居ないように見えた。部屋の中央に立つその女性にニッサは注目した。語り部スティーナは簡素な緑の革製胴着を身につけ、彼女のアドバイザーも同様の服装をしていた。ロープも皮ヒモもなく、スティーナも助手も武器というものは持っていないようだった。装備が何も無く、武器もない彼女らの立ち姿にニッサは警告したくなった。しかし、タジュールはその重要人物であることとその無防備さに関してそうは考えていないようだ。彼女は世界を見るための彼らなりのやり方を取りいれ始めていた。
 彼女が腕を広げ、話し始めた時、ニッサは彼女が何を着ていたかも忘れてしまった。
 「ともがらよ」語り部スティーナは言った。その言葉は全員の頭上の空中をきらきら光りながら渡るように思えた。口を開く者は居なかった。あるタジュールはクコの実の小袋を木の床に落としてしまった。かすかに微笑んだまま語り部の目は部屋をぐるりと見渡し、ニッサと目があったとき、その微笑は消えた。「ともがらよ」突然大きな声で彼女は繰り返した。「私があなたがたの所まで遠く旅して来た今、多くは語りません。私達は森の根が大規模に腐れていっていることを他の方々に警告するためにオンドゥに来ているのです。」

 スティーナの瞳は一瞬震えた。彼女が話しているとき、唇には緑のリン光が散った。そして口から出る言葉は喉にからみ、耳障りになり、さえずるほど甲高くなっていった。彼女の揺れる瞳は見開かれ、彼女の唇には再び笑みがこぼれた。「こは今まさに森を渡る伝染病を伝える言葉なり。そなたらの誰がそれをわかろうか?」
 ニッサは彼女の顔を見ないようにしようとはしなかった。彼女はその次元にあるどの言語にも属さないことを知っていた......それは火打ち石が互いに打ち合わされるような音だった。 山トロールですらもっと楽しげに話をするでしょうね。
 スティーナの瞳はさらに震え、他の何かと交信するにつれ再び白目を剥いた。「これは何だ?」心配げな男性のタジュールの男性の声が、彼女の喉から響いてきた。「この穴は何なんだ? スタイナ、ラウリ、あれを射て」
 「しかし風が」女性の声が言った。「あの風が」
 30回ほど心臓が脈打つ間、沈黙が続いた。
 ニッサはスティーナの頬の肉と目の周りがひきつり、けいれんしているのを見て取った。彼女の顎は上下左右に引っ張られているようだった。彼女は偵察隊の面々の最期の瞬間を再び体験しているのだとニッサにはわかった。白目を剥いていたスティーナの目は瞬きしてあるべき場所に戻った。彼女は微笑を取り戻した。彼女の周りのタジュールは静まり返っていた。すべてのエルフはその頭を垂れていた。彼らの唇は少し緑色になっていることに彼女は気づき、心配げな顔をした。時折集会でそういうことが起きる。ジョラーガは彼女の部族民たちとは絶対に分かり合えないだろう――はたから見れば恥ずかしい。だが小さな出来事ですらうまくいかないとき、タジュールはこうやって解決しているのだろう。ニッサは待つことにした。屋敷の窓の向こうには木々によって分割された空が見えた。
 「スタイナはわたしの姉の名です」群衆のなかから、あるタジュールが言った。「わたしたちは1週間ほど前から彼女の便りを聞いていません」
 別の者が口を開いた。「あれは葉の語り手グロウリの声じゃないのか」
 「彼は遥か西方を巡回していたな」さらに別のものが言った。囁き声に近い声色だった。
 風、ね。 ニッサは考えた。 森の中で風があるところって何処かしらね。そよ風程度なら、ある。でも風が吹くことはない。 彼女はまだ全体の地形についてもタジュールの国についても欲しているほどの知識は持ち合わせていなかった。だが、風が吹くというのは森の中でも稀なことであるのは承知していた。
 ハイバがしゃがみこんだ。彼の唇は緑色になっていないことにニッサは気がついた。「拘束の輪だ」彼はぼそりと言った。「台地のところだ」
 彼の考えに応えて、部屋にいる誰かが言った。「拘束の輪も西方にあるな」

 「拘束の輪だと」同時に他のエルフらが繰り返した。ニッサはそうやって彼らがアンデッドのようにひそひそ話すのは嫌いだった。
 ニッサ。 語り部スティーナの声が、突然彼女の頭の中で響いた。語り部の目は彼女に向けられていた。彼女は大きな声で話し始めた。「貴方はタジュールの一部隊を連れ、この脅威を探し出し、排除するためにその力を振るいなさい」
 ニッサは頷いた。変わり樹に到着してからは彼女はタジュールの葉の語り手なのだから。タジュールは常に彼女に最も難しい任務を課してきた。定住樹にいる多くの者が彼女の能力、語る知識に感銘を受けた。そして多くの者が彼女を脅威と考えもした――ジョラーガの侵略計画の第一歩ではないかと。だが理由はどうあれ、ニッサは危険な任務をこなすのは好きだった。彼女が離れたところでどうだと言うのだろう?ナメクジ油のランタンに照らされた定住樹の冷えた部屋、そしてタジュールの疑り深い視線。
 ニッサは屋敷をぐるりと見渡した。タジュールの大半がそのホールに列をなしていた。彼女は後方の近場のドアに向かい歩いていった。ハイバが後に続いた。
 彼女が通る先を他のタジュールが道を開けた。そうでなくては。 彼女は考えた。彼らはジョラーガと仲良くなりすぎたりはしない。 ハイバは違っていた。彼は「お行儀良い」ジョラーガの魔法や戦闘をありのままに受け止めていた。彼女が初めて定住樹に来たとき、彼女と同じ夕食のテーブルにつくことを拒否したタジュールも居た。彼女には彼らを責めることもできない。彼らがジョラーガと過ごしてきた日々は決して喜ばしいものではなかったからだ。1日じゅう、夜通し襲撃部隊を率いたり固い地面で寝ることなどについて瞑想でもしてそれが喜ばしいかどうかの考えをまとめない限り、ジョラーガに対して特別良く思うことなど何一つ無いのだ。読書と音楽への不信感を除けば、ニッサにはジョラーガの生活様式は好ましいものだった。彼女の血にはバーラ・ゲドの悪臭を放つジャングルを持ちあわせていたが、まだそこに戻るわけにはいかなかった。だから、彼女を信用しないエルフの国を守るための偵察隊を彼女が率いているのだった。
 ホールから歩いて出て行く間、ニッサは語り部スティーナから聞いたことを思い返していた。かの指導者は遠く離れた二股入り江の崖にある、崩壊した古代の建築物の傾いた宮殿に住んでいる。その宮殿は崖の端へゆっくり伸びているジャーウォレルの古代樹の大枝の中に包まれている。噂によれば、一ヶ月に一度、二股入り江の深みから登ってきては津波を起こす月クラーケンと語り部は協力関係にあるということだ。

 ハイバの手がニッサの肩を掴んだ。彼女は途中で足を止め、振り向いた。サラサラと音を立てる絹と染め上げられた革に身を包んだタジュールが彼女らの周りを静かに歩いていた。彼女の副官の長い耳は空に向けられ、彼の大きな顎は"聞いてください"と動いた。彼の耳はいろいろな意味で彼の一番の資産だ。それがあるだけでひときわ彼を役に立つものとしている。彼は3倍の背の高さほど離れた枝にいるフクロウの羽繕いの音を聞くことが出来る。エルフのなかでもたいしたものだった。彼女たちが共に偵察行をしている間、彼女は彼の表情をよく読めるようになっていた。彼女は彼の唇の曲がり方やまぶたが目のどこに落ちかけたかで、どんなクリーチャーが潜んでいるかを言い当てることができた。けれども、その時、屋敷の外の板張り歩道に立っている彼が見せた表情は、彼女が初めて見るものだった。
 次の瞬間、警告角笛の音が下生えの向こうから響いてきた。板張り歩道にいたタジュールは歩くのを止め、森の地面を見下ろしていた。ニッサは身をかがめて、背中にヒモで回されている杖に手を伸ばした。それを掴む前に、ハイバが彼女の手首を掴み、枝の端から離れるよう引き寄せた。地面が上へ吹き上がった。ハイバはその間にベルトからフックを外して投げていた。フックは古い木の割れ目を掴んだ。その刹那ロープが引っ張られた。ニッサは歯がカチンと噛みあわされるのを感じた。彼女達は次の瞬間長い弧を描いて木から放り出されていた。
 ハイバがロープを放すとニッサは回転しだすのを感じた。彼女たちが向かっている幹がぼんやりと見えた。距離を測り、無理やり反転し彼女の足で枝の苔むしたくぼみを蹴りつけた。彼女はハイバの腕をつかむと、大柄なタジュールがよろめいている狭い枝に引き寄せた。イーカ鳥がどこか遠くで鳴きわめいていた。彼女たちの頭上の梢に浮かぶ一対の面晶体が突然互いにぶつかり合った。それくらいは印象に残らない程度のありふれた光景だった。戦いの音に耳を済ませたが何も聞こえてこなかった。突撃角笛も、魔法が流れてくる風切り音も、鋼がぶつかりあう音も。一瞬、ニッサは遠くで誰かの悲鳴を聞いたような気がした。ハイバに聞いても彼も首を横に振った。
 次の瞬間、ハイバは顔を上げた。また悲鳴が上がった。「なにか来ます」彼は言った。彼はベルトに留めていた短剣を抜き放ち、ニッサは杖を両手で構えた。彼女は低い笛の音を聞き取り、投げ矢か何かが来ると思った方向へ杖を振りかざした。その木々にいたものは、甲高く鳴きながら空を飛び、彼女たち目掛けて飛び出してきた。
 彼女がよく見る前にそれ――腕が多い灰色のもの――は、彼女とハイバに打ち倒され、中空へと落ちていった。ニッサはハイバが自分の剣を空中で振る音を聞いた。そいつらは森の地面にぶつかり、別々の方向に回転して割れた。ニッサはは跳ねるように動き、その間も両手で杖を握り締め、よく使う呪文をつぶやいた。いつものように、彼女の杖は魔力の波の線にそって燃えるような熱を持ち、その葉脈のような光は彼女の頭からねじれて放出されていた。彼女の持つバーラ・ゲドのジャングルとのマナの繋がりが確実に強くなるのを感じ、葉脈は赤く光り始めた。次の瞬間、4人のジョラーガの戦士が散開して彼女の周りに立っていた。森の地面の鈍い明るさのなかちらちらと光り、ジャングルランのような香ばしい臭いがした。彼らの目は鋭く、背中から小弓をさっと取り出し、矢をつがえ、流れるような一挙動で放った。矢は彼らが見下ろす木々にかがんでいる2匹のものに飛んで行った。それらは灰色と黒色で、キチン質の幾何学模様の板で覆われていた。そのクリーチャーの腕は二股に分かれていて、足はてらてらと光る触手だった。頭はなく――肩のところにはこぶだけしかなかった。体のほうにはまぶたの無い青い眼で覆われていて、表情らしいものもなく矢をその細い腕で叩き落とした。後方から、彼女はくすくす笑いとさえずるような声を聞いた。彼女が振り向くと、さらに4匹のクリーチャーが枝の上で静かに体を揺らしていた。ジョラーガたちはさらに矢を射つが、そのクリーチャーによってほとんどがはたき落とされてしまう。1本の矢が目標をとらえ、それの上部胴体に刺さった。そのクリーチャーは奇妙なうめき声をあげ、前のめりに倒れ、回転しながら地面に落ちていった。残っていたクリーチャーたちは驚くべきしなやかさで跳び、森の地面までの道を駆けて死んだそれに群がり、その触手を伸ばして触れた。
 死んだそれの上に立っている別のクリーチャーめがけ、ジョラーガたちはさらに矢を射た。残りの4匹はゆっくりと振り返った。その眼に、ニッサは一瞬息を止めた――それらの体を覆う、無表情な青い眼。そこには怒りも悲しみも、悪も善もなかった。彼女がゼーム獣を見るときのようなやりかたで自分を見ていることが癪に障った。獲物として見られてる。
 ジョラーガは3匹目のクリーチャーを撃ち、残った3匹の獣はその腕――細い触手で滑るように突進してきた。1匹がジョラーガを捕らえ、次のものがニッサを捕らえ、喰らおうと引きずった。呪文をつぶやき、ニッサは杖を振り上げて一番近くに居たクリーチャーの体に打ちつけた。そいつは後ずさり、固い肉のうちに緑に光るへこんだ部分をその青い眼が見た。突如茎と葉がその印から湧き出した。
 ニッサは過去にも敵に種を植え付けたことがあるが、こんな反応は見たことがなかった。彼女はペトラ巨人がその植物を外そうと引っ張ったのを見たことがある。がっちりと食い込んだ植物を引っ張ると、その根は灰色の心臓をがっちりと抱え込んだまま飛び出してきたものだった。しかし、この触手を持つクリーチャーは植物が育つのを見ているだけで、そのクリーチャーの背よりも高く育つまでちらちら光り、伸びていった。つぼみが現れ、そのクリーチャーの頭のまわりを閉じて口のように折れまがり開いた。
 ニッサのかたわらでヒュウと何かが鳴り、彼女の背後で構えていたクリーチャーがハイバの短剣を胸に突きたてたまま倒れた。森の地面の腐った葉のなかに横たわったまま、触手が剣の柄をまさぐった。最後のクリーチャーは残りのジョラーガが射た矢で倒された。ニッサは杖で地面を叩き、深呼吸をした。魔力の奔流が彼女の足裏から背骨にかけて波打ち、周辺でちらちらと光った。彼女は走り、空へ跳んだ。杖を振って先端をトンとそのクリーチャーの頭に当てた。まだらな光が木のまわりに散り、しばらくの間それはそこに立っていたが、次の瞬間地面に崩れ落ちた。
 ニッサは着地して、後ろのクリーチャーのところへ歩いていった。彼女はその体を近くで観察しようとかがみこんだ。その体を捕らえていた植物はすでに茶色になって枯れていたことに彼女は驚いた。彼女はもっと詳しく調べようとしたが、ハイバが背後の定住樹へと走り出したため、ニッサは最後にその地面に伏したクリーチャーに一瞥をくれた後、ジョラーガの残った2名をつれて後を追った。
 ハイバは巨大な定住樹――100人のエルフが手を繋いで囲むことができるくらい――の根元で留まっていた。だがエルフの代わりに20匹ほどの触手を持つクリーチャーが周りに横たわっていた。いくつかは矢ぶすまにされていて、1匹はツタにからみつかれていた。すべて上から落ちてきていた。ハイバは木に飛びついて登るのに時間を無駄にはしなかった。ニッサとジョラーガも続いた。定住地の広い足場には20匹以上の死んだクリーチャーが散らかされていた。若干数がまだもがいており、青白い手に長ナイフを握り締めたタジュールの一隊が止めを刺して回っていた。ニッサは1人のエルフがナイフをクリーチャーに深く突き刺し、永遠に動かなくさせているのを見ていた。

 「こっちです」ハイバが言った。彼は屋敷へ向かって走っていた。彼は屋敷の戸口の外にいる小さな群衆の近くで立ち止まった。その一団はかがみこみ、何かを運んでいた。彼女じゃない、ニッサは走りながら言い聞かせていた。しかし、そうではなかった。彼女が着いたときには、彼らは語り部スティーナの死体を運びだしていた。彼女は変わらぬ笑みを浮かべたままだった。しかしかの指導者の胴着はぼろぼろで、血にまみれていた。屋敷の周りのタジュールの群集は、行列が過ぎてゆくのを見守っていた。過ぎ去ってしまった後、彼らは彼女を顧み、とても友好的とは言えない表情で彼女を見た。ニッサは屋敷の壁にもたれかかっている残り2名のジョラーガをちらりと見た。彼ら、あたしの部族民たちは、あたしのことをどう思うべきなんだろうか?
 ......そんなこと、考えてもしょうがない。か。 彼女は、語り部が殺された場所へ振り向いた。2匹のクリーチャーが近くの階段の上にくしゃくしゃになって横たわっていた。彼女はその1匹を裏返した。
 「何をしてるんです?」ハイバが言った。
 ニッサはそれを無視して膝をついた。そのクリーチャーの触手はもう動いていなかった。慎重に触手から先端まで動かしたりしながら検分した。彼女は不思議なものに気づいた。クリーチャーの右腕の下に、口先のようなチューブが4フィートほど口をあけていた。そのチューブは肉のようで、非常に細く、輪をつくっているためぶらさがることはなかった。
 「こいつら、口が無いわ」彼女は言い、上の方をちらりと見た。タジュールの一団が屋敷の戸口から静かに見守っていた。
 「口が無いから、何です?」ハイバが言った。彼はその一団をちらりと見た。
 「どうやって物を食べるのかしら?」やわらかい触手をつつきながら彼女は言った。ハイバの肩をすくめる音が聞こえたが、見上げることはしなかった。「食べるためでないなら、こいつらはなぜここに?」
 「タジュールが嫌いなんじゃないですかね?」ハイバは言った。その意見は彼女のためでもあったが、それは無視した。
 ハイバは戸口の周りに立っている一団へと歩いていった。ニッサは彼らがぼそぼそと話しているのは聞こえたが、単語までは聞きとれなかった。そのかわり、彼女はクリーチャーをさらに念入りに調べた。
 それはゼンディカーで彼女の見たことのあるどれとも似つかないものだった。触手を持つがエラも無く、指の間に水かきも無い。まぶたのない眼とうねる肌は地下の生物を思わせるが、どうやったら口を持たない何かが地中で生きていけるのだろう?武器も衣服も持たなかった。そしてこのクリーチャーはなにか洗ったような、ツンとする臭いがする。彼女は蛇を思い出した。彼女は嫌そうに唇を突き出した。
 まだこのクリーチャーのほうが可愛げがあるわよ。 これらが枝に並んでいるのを見た瞬間、彼女はそんなことを感じた。そんなことを考えていると、ハイバが階段を降りてきて傍に立った。
 「こいつら、何に近いと思う?」彼女は立ち上がって言った。
 「おとぎ話に出てくるようなのに似てますね」彼は言った。
 そのとおりだ。彼女が子供のころ聞かされた古いお話に出てくる怪物に似ている。 潜むもの。
 「"潜むもの"って、触手がついてたかしら?」彼女は尋ねた。
 「我々はそれをそんなふうに呼びません」ハイバは言った。「我々のやつに触手は無かったと思います。角がありましたね」
 彼女はうなずいた。まだ、それらについて何かあったような。
 ハイバは屋敷の戸口にいるタジュールへとあごをしゃくった。「彼らの1人は苔ひび割れからやっとのことで来たばかりだそうです。このクリーチャーどもは我々のところに来る前にそこを襲っていたんです」
 苔ひび割れとは、白もつれ毛河流域の木の生い茂る小さな峡谷の底にある隣の定住地の名前だった。
 「その人は他に何か?」ニッサは尋ねた。
 「ジョラーガに協力はしない、と」ハイバは言い、彼女に向かって渋い顔で苦笑した。
 「彼は、ジョラーガに協力はしない」ニッサは繰り返した。「笑っちゃうわ」行動を決めるまで、2秒ほど考えていた。「了解よ」彼女は言った。「あたしたちはジップ(吊り下がり滑降移動手段)で行く。苔ひび割れへ向かう意志のあるタジュールは乗り口でそれを掴め」彼女は板張りの階段を下りかけて立ち止まった。「そうしない者は、ここで震えながらこの脅威をジョラーガのせいにしているがいい」
 「ジップでですね、葉の語り手?」ハイバは彼女の次に叫んだ。
 「そうだ、ジップでだ」彼女は復唱した。
 ハイバがジップラインの乗り口に着いたときには、20人のエルフが集まっていた。全員完全装備で、彼らの戦闘装飾色で塗られていた。赤い円を目のまわりに塗っている者、青い唇の者がいた。それぞれの様式はそのエルフ固有の族霊(守護獣霊)を現している。「いいじゃない」彼女はひとりごちた。「でも戦えるのかしら?」彼女はジョラーガ流の文様を描いていた。目へ向かって顔の横から黒色の線が何本も引かれている。ジョラーガである、という印だった。それは自分の力しか信じない、という意味でもある。他人の心は闇の森、とジョラーガのことわざは言う。
 彼らは全員、ツタで編まれた天井のないゴンドラに乗り込んだ。ゴンドラは弧を描くツタと変わり樹の袋に収められた2つのジャディ樹製の滑車でジップラインとつながれている。樹皮で編まれたジップラインは緑の森の先へと繋がっていた。
 カゴはニッサが足で押すと跳ね、横に揺れた。彼女は以前これに乗ったことはあったので、見かけのわりにはこれが十分機能することは承知していた。こういった奇妙なからくりはタジュールが抜きん出ている部分だった。
 それがきちんと動くかどうか、ニッサは絶対の信頼を置いているわけでも無かったが、ゴンドラは目的地へ向け移動していた。
 ハイバは前面部にいて、フットペダルでこのスピードを緩めることができる。だがそのことを知らないかのようにニッサには思えた。そのため、ゴンドラはぐんぐん速度をあげて森の中を滑走していった。枝がゴンドラの側面をピシピシと打ち、風は編まれたツタの隙間を通って歌うような音をあげた。間も無く白もつれ毛河が遥か下方に見ることができた。岩の間を激しく水が打ち付けている。痩せたオンドゥのベイロスが後ろ足で立ち上がり、河の隣から彼らをじっと見ているときには彼女も息をするのを忘れた。ジップにいる彼らをさすがのベイロスも捕らえることはできなかった。苔ひび割れに近づいてきたことを、タジュールたちが矢を直し、背から弓を取って準備を始めたことで理解した。ニッサは目を閉じて自分の耳の先を流れる風を感じ取った。彼女は森で息をし、彼女の血管を樹液が流れている感覚を覚えた。そして彼女に会うために登ってきているかのような波動を遥か彼方の地面の大いなる純粋な塊を感じ取った。間を置かず苔ひび割れの定住樹が、その手前のもっとも高い変わり樹よりも上にそびえ立っているのが見えてきた。ハイバはまだ速度を落としていなかったので、ニッサは手を伸ばし、周辺の変わり樹の木々の魔力の力線をまとめあげ、接続した。彼女はその瞬間、森全体に満ちた不可視のマナと繋がった。これらの木々はその特徴的なねじれ方でマナのスパイクのまわりに育っている。マナに接続したことで、ニッサはゴンドラの進みを遅くすることができ、最終的にゆっくりと止まらせた。彼女が目を開けると、エルフ全員が彼女を見ていた。
 「あなたたち、奴らのど真ん中にのこのこ出向いていくとでも思っていたの?」彼女は言った。「あたしはあなたたちが森で最高の戦士ではないのはわかってるわ。でもそうなるようにせいぜい頑張ることね」彼女はその言葉で彼らが怒るのは感じていたが、睨み合うかわりに縁から後ろを見やった。森の地面は遥か下方で、下生えと枝ではっきりとは見えなかった。「行くわよ」彼女は言った。返事は待たなかった――部族評議会の会合ではないし、そのほうが手間がかからない――彼女はゴンドラから跳び、近くの枝にふわりと着地した。彼らも不承不承ながら少し遅れて続いた。全員が枝に降り立ってから、彼女は彼らに向き直った。まだらに落ちかかる影で彼女の黒と白のカモフラージュは完璧に機能していた。「さあ」彼女は囁いた。「あなたたちは皆誇りあるジョラーガよ。ジョラーガのように、我らの敵に不意に襲い掛かり、何であろうとそれを殲滅するのよ」

 彼女は背を向けて枝から枝へ、彼らの先に立って降りたり、定住樹に近くなるようさらに登ったりしていった。ニッサは時折足を止めた。しかし、奇妙なことに、彼女には何も聞こえなかった。そのときハイバが止まり、彼の長い耳の先端を手でパッと払い、左方向を指差した。すぐに彼女にもその枝の折れる音とこすれる音が聞こえた。彼らは忍び寄り、その木に近づくにつれその音も大きくなった。
 彼女のジョラーガは立ち止まり、小さな乾燥した硬鎧蟲の殻を取り出した。タジュールが見守るなか、彼女のジョラーガは矢の先端を殻の中に入れ、再び矢筒に戻した。その後彼らは蟲の殻を持ち、タジュールもぎこちなくその矢の先端を殻の中身に浸した。
 「血茨の濃縮液よ」ニッサはひそひそ声で言った。「首があるなら、そこに打ち込むのよ」彼女はハイバに合図した。彼らは手と膝を落ろし、枝の端に忍び寄って慎重に葉をかきわけた。
 ハイバが最初に良い眺めを得ていた。ニッサは彼が鋭く息を吸い込むのを聞いた。すぐに彼女にもその理由がわかった。そこにいたクリーチャーは、少なく見積もっても100匹を下らなかった。しかし、彼女が衝撃を受けたのはその数ではなかった。それは太陽だった。陽光が森の地面に届いているのだ。周りにある変わり樹により、森の地面にはほとんど日光は届かない。しかしそのクリーチャーはニッサが考え付かない方法でそれをやりとげていた。そいつらは小さな変わり樹を押し倒していた。倒れた木から葉を取り去り、大きな穴を掘って葉をその中に詰め込んだのだ。そのクリーチャーは、彼らが戦ったことのあるどんな生き物とも異質だった。そいつらの中には空を飛んだり、宙に浮いて細く汚らしい触手腕を広げているものもいた。触手があって地面をはいずったり丸まって動いたりするものもいた。固い骨でできたような、顔と言うものが欠如している白い頭を持つものもいた。いくつかは巨体だった......踏み潰すものと同じぐらいの大きさで太かった。ほかのものはエルフ3人分ほどの高さがあった。彼女が目を疑ったのは低く唸りをあげて立っている、残りのものより遥かに高い、塔のようなものだった。「あいつが木を倒して殺したのね」ニッサは呟いた。「あれから先にやるわよ」
 触手を持たないクリーチャーもいた。死体のように肌は白く、革ヒモのようなもので肩と肘が縛られていた。その青白いものたちが数匹、木から葉を取り去っていた。他のものは地面に散在するタジュールの死体に群がり、首の切り傷から血を啜っていた。

 「下位吸血鬼め」ハイバが囁いた。
 ニッサは観察を続けた。吸血鬼の1人が不意をつかれ触手を持つクリーチャーに首をかじられていた。残酷ではなかったが正確だった。エルフが枝からイチジクをもぐのとそう変わらない。その後そのクリーチャーは吸血鬼の胸に空いた穴を探り当て、右腋の下の管を差し込んだ。その吸血鬼が白く、白くなっていくのをそのクリーチャーはしゃがんでそれを見下ろしていた。
 「何をしているんでしょうね?」ハイバは囁いた。
 「攻撃準備」ニッサは言った。彼女は不気味な現場から目を離した。「いいわね?」
 その単語を彼女が言い終わらないうちに、彼らの背後で枝が折れた。触手を持つクリーチャーが上に居た。定住樹で彼女たちが遭遇した木を登る種類の奴らだった。およそ30匹。枝から枝へ跳びまわっている。
 彼女は右から左へと杖を振り、彼女のいる枝から魔力を引き出し、立ち上がりながら帯状のエネルギーを放った。そのマナが木に当たると動き出し、互いに引き合い、枝の壁を形成し、怪物を捕らえようとツルを伸ばした。エルフらは枝の間を縫ってクリーチャーどもを射はじめた。ニッサが見ている間に早くも2匹が落ちていった。他のクリーチャーたちは壁に向かって自ら突進し、エルフたちに射殺されながらも激しく壁を壊していた。地上からも、彼らのいる木目指して多数のクリーチャーが走り寄って来ていた。
彼女の胴回りの2倍はあろうかという触手を持つ巨大な奴は、のっそりと動いていた。 まずいわね。 とニッサは思った。
 彼女は悲鳴に近い声で警告を発した。エルフの数人は振り返ったが、その前に葉群を突っ切って飛行型のクリーチャーがぶつかった。その1匹はニッサの隣に立っているタジュールを強打し、彼女はそのエルフが即死したのがわかった。もう1匹が彼女へと向かって来た。彼女は好きな花、デンドライトの秘密の名を囁いた。その呪文で彼女の杖に風が生まれ、クリーチャーはそれに打たれて枝の後ろ側へ吹き飛ばされた。他のエルフらは振り向いて飛行型クリーチャーを彼らのもとに登ってくる前に撃ち落としていった。木登り型のクリーチャーは別方向から枝とツタの壁にとりついていた。ニッサが素早く見やると、壁はかなりぼろぼろになっていた。

 そのとき、彼女は足元の変わり樹がガクンと右へ傾ぐのを感じた。足を踏ん張ったが、木はもう一度動いた。彼女は葉の隙間から巨体のクリーチャーが変わり樹の幹を押しているのを見た。
 飛行型クリーチャーが彼女にぶつかってきて、一緒に葉に当たりながら落ちてしまった。彼女は静かに呪文をつぶやき、枕のように前方へマナを押し出した。次の瞬間彼女の落下速度は遅くなり、結果的に彼女と一緒に落ちているクリーチャーの次に着地した。そいつは死体になっていた。さらにクリーチャーが彼女へ向かって来ていた。青い眼を持つクリーチャーが2匹と、森トロール2匹ぶんほどの巨体のものが1匹。肩を当てて木を押している巨体のものは、足がかりを探して柔らかい地面を削っていた。彼女は集中し、マナの沸騰を感じた。彼女の手が緑色に光り始めた。彼女は杖をねじり、彼女の茎の剣を引き出した――長く細い緑の茎がその木の内部に隠されていたのだ――1匹のクリーチャーが頭を下げて突撃してきた。彼女は脇に踏み出し、右足を中心に素早く回転した。通り過ぎるその獣の胴体に、こともなげに硬い茎を突き刺した。それが心臓というものを持っているとすればまさにその位置だった。彼女は木の柄を押し続け、ぐいと引き抜いた。次に囁かれた単語で、血にまみれた茎はしなやかに伸びた。彼女が腕を振ると、茎はしなって木を押しているビヒモスの腕を切り落とした。そいつは切り口から青白い血を流しながら彼女へ向き直った。 叫び声も、怒りも無いわね。 彼女は思った。 たいしたことが無いと思っているわけでもなさそうで、そのクリーチャーは単に別の肩を木の幹に当てて押し続けただけだった。
 彼女がそのビヒモスの別の腕も切り落とそうとしたとき、新手が彼女の横手から突進してきた。彼女が落ちてきたときのように、蹴って反転し、エメラルド色のマナを放ってその触手の半数を弾き飛ばした。彼女が着地したときに、木が右へと傾ぎはじめた。その平坦な根の球が地面から持ち上げられていた。ニッサは激しくその巨大なクリーチャーを打った。彼女はそいつの背中によじのぼり、肩に登った。そしてその首があるべき場所に彼女の茎の剣を巻きつけた。からみつけて引っ張ると、何百という青い眼が瞬きし、彼女を見た。だがそのクリーチャーは押すことを止めなかった。彼女は単純な動物というのは見たことはあるものの、こんなものは初めてだった。彼女は数分間引き続けた。何か魔法でもかかっているのか、あるいは金属でできているのかと背筋が冷たくなるほど、切り裂くことができなかった。だが最後にはそのクリーチャーは弱り、目の前の幹にもたれるようにして息絶えた。
 背骨は無いといけないわよね。 ニッサは考えた。彼女は剣を杖の中に収めながら周りを見渡した。その木は新しい角度で落ち着いたようで、北にずれて揺れていた。その枝に彼女の隊が目に入ることを願って幹を目で追っていった。しかし、弓音の戦闘の雄叫びも聞こえてはこなかった。彼女は幹から歩き出した。大きなこすれるような音がどこか梢のむこうから反響してきていた。木の上の空に浮かんだ2つの面晶体が互いにこすれあう慣れ親しんだ音が、彼女の意識を戻した。
 彼女は歩いて開けた場所へ進んだ。若いジャディ樹の枝の白い樹皮の下でしゃがみこんだ。狭い谷が彼女の右側に広がっていた。そのはるか下には白もつれ毛河の轟音が峡谷から反響して幹にも響いていた。
 日光は木々の間から漏れ前方で輝いていた。夢の中にいるようで、彼女はそこへ歩いて行った。
 彼女は森の端で足を止めた。日光に目が慣れてくると、あのクリーチャーらが剥ぎ取って穴に詰め込んでいない植物が点々とある刈り取り区画を見ることが出来た。なにもなくなった地面は不規則に掘り起こされていた。苔ひび割れのタジュールの死体がその穴との間にばたばたと倒れていた。もっとも近い30歩ほどのところにある死体は頭蓋骨が潰されて横たわっていた。数人の吸血鬼が優しくも見える様子で死体に跪いていた。彼らはボロを着ていて、明るい日光の下でもつれた髪の毛は鈍く反射していた。腐ったような臭いは、死んだタジュールのものか吸血鬼のものかはっきりしなかった。いや、もしくは各吸血鬼の後ろでその血糊をしゃぶっている触手を持つクリーチャーのものかもしれなかった。彼女は喉に上がってきた塊を飲み込んだ。
 唐突にさえずるような音が彼女の後ろから聞こえた。ニッサは杖を構えて振り返った。タジュールとハイバが数匹のクリーチャーに追われながら駆けてくるのを期待していた。彼女は目を閉じ、ゼンディカーの森の無尽蔵の力を近くに感じ、血の中に沸き起こらせ彼女の足の下の土やまわりのツタから引き寄せた。彼女は、ケダモノどもに、木を破壊するものに、バーラ・ゲドのジョラーガが不法侵入者を、蛮刀を持った余所者をどう扱うかを見せ付けてやるつもりだった。それはタジュールの甘いやりかたとは違う――あふれる憎悪で歓迎されるジャングルの厳しさだった。

 彼女は目を開いて、ショックで杖を落としそうになった。あたしのレインジャーはどこ? ハイバはどこ? そこには、その代わりに、200匹を超えるさまざまな大きさのクリーチャーが、彼らがつくった木の線に立って、彼女を見つめていた。似ているところといえば、すべて触手を持っていることくらいだった。1匹は長い引き縄の先に縛られた唸りをあげている吸血鬼を連れていた。彼女が森で倒してきた4、5匹より大きなものまでいたが、それらは怒っているようにも見えなかった。単に彼女を見ていた。彼女を見るために首を上に向けるものもいた。いくつかは返り血を浴びていたり、タジュールの短い矢が刺さったままのものも多くいて、彼女は後悔で心が痛んだ。彼女の隊とハイバは死んだのだ。彼女は目を下に落とし、傷だらけの手を見た。白く、震えて、杖を握り締めていた。
 クリーチャーらはゆっくりと進み、もうすこしでうごめく触手に触れるくらいだった。40フィートほどまで来て彼らは止まった。それらは話をすることも、手で合図もしなかった――ただ触手を動かしただけだ。どこかで彼女はそういった行動を見たことがあったような、なにか昆虫に似ている。そう――アリだ!
 彼女の前には200匹の気味悪く整列したクリーチャーが近寄ってきていた。良い目算はなにも無かった。彼女の目は近寄ってくるものたちの上の青い空をぼんやりと見つめた。穏やかな風が彼女の髪を揺らした。遥か遠くには高い台地の上に長い碑が浮いていた。その後ろには、黄昏までには良い雨を約束する暗い嵐雲があった。美しい日だった。
 ニッサは杖をねじった。彼女がことを成し遂げバーラ・ゲドにある故郷に戻る時まで預けられた茎の剣は、音もたてず杖から抜けた。彼女は眼前に緑の柄を構えた。
 ここが人生の終着点だろうか? 彼女は変わり樹の開けた場所で、数に勝る敵を前に死を辞さぬ覚悟で立っていた。そうだ。彼女が旅してきた薄汚れた次元にはゼンディカーにある力も美しさも無い。あるのは不快な存在と不細工な者たちだけだった。彼女はクリーチャーの群れに一瞥をくれると無造作に歩き出した。「お前達のような異形が」彼女は独り言を言った。
 彼女はその瞬間でもプレインズウォークすることもできた。それより賢い選択は無いだろう。 あたしの隊は死んだ――ハイバも皆。 もしここで逃げれば、その後の人生から逃げ続けることになる。一人ぼっちで、彷徨って――バーラ・ゲドのジャングルから出てきた影。彼女は深く息を吸い込み、ゆっくりと吐き出した。彼女はジョラーガだ。だからそのように死ぬのだ。彼女はクリーチャーの並びを観察した。そのマッシュルームのような肌の臭いをかげるくらい近づいていた。40匹くらいは道連れにできるだろう。彼女は剣を振りかざし、突撃しようとした。
 突然、何かがそのクリーチャーの注意を引いたのか、それらはすべて右を向いた。ニッサも同じくそちらを向いた。
 1人の人影が森の中から出てきた。背丈からして人間だ。黒革に身を包み、銀の肩当てと胸当てがきらめいた。その髪の毛は白く、額からうしろになでつけられていた。拍手をしながら歩いてくると、彼のベルトに繋がれた大剣がガタガタと音を立てた。
 「これはこれは」彼女には聞き慣れないアクセントで見知らぬ男が言った。 別の蛮人か。 彼女は考えた。「貴様のくびきはすべて外したのかね?」奇妙な男は歩きながら尋ねた。「道に迷ってしまったのだがね、ウギンの目を探している」
 そのクリーチャーたちはそこに佇んだまま、ニッサと奇妙な闖入者の間で触手をうごめかせていた。その男はその側面へと移動した。彼女はそのクリーチャーたちのジレンマを感じ取ることができた。つまり奇妙な男によって挟みうちされることが嫌なのだ。 私なら、攻撃してるわね。 ニッサは思った。 攻撃しなさい。
 そいつらは動いた。具体的な合図も無しで、クリーチャーたちは突撃しはじめた。ニッサはその奇妙な男を見やった。その男は両腕を掲げた。次の瞬間、その男へ向かって空気が吸い込まれるのを彼女の耳が感じた。両手の間に凝縮された球体から薄黒いエネルギーの小さな流れがほとばしった。そしてその男は彼女が今までに聞いたなかでもっとも低く深い声で話しはじめた。その言語は聞いたことがなかった。見知らぬ男と突進する大群との間の大気は折れて曲がった。その後そのクリーチャーたちはひとかたまりになって、単なる腐った一山のように地に倒れた。
 恐るべき呪文だった――ニッサが目にしてきたなかでもさらに驚き怖れを感じたことは――残ったクリーチャーの反応だった。6匹ほど、その男の呪文の範囲外だったのだろうか、突進を止めなかったのだ。同族がすぐ足元で横たわっていても、そのクリーチャーは黒ずくめに向かって進み続けた。その男は続けて恐ろしい単語を呟いた。それで残ったクリーチャーも倒れた。
 ニッサは時間を無駄にはしなかった。彼女は振り向いて後ろの森......木へ向かって走り出した。少しだけ後ろを振り返ると、あれは彼女が最も恐れるものだと確信した。彼女は瞬く間に木を登った。

 彼女が作ったツタの壁はまだひとかけらが残っていた。彼女が数えていた19匹目までのクリーチャーをそれが捕らえて、矢を射て倒したものだった。しかしその壁の後ろを見たとき、彼女の心臓は喉まで出かかった。彼女の部隊の数人の死体が、まだらに落ちかかる光のなかにばらばらに引き割かれていた。ニッサの指ほどのナール蝿がてらてら光る赤い肉の上をブンブンと飛び回っていた。何ともつかない欠片が彼女の周辺の枝に引っかかっていた。ハエのブンブン言う音が彼女の耳に急にうるさく聞こえた。彼女がきびすを返し去っていくのを、枝の別れ目に載っている引きちぎられたエルフの頭部が、動かぬ瞳で見送っていた。
 彼女は探していた人を森の地面で見つけた。彼の右腕はぺしゃんこになっていて、両足も同じく平らになっていた。それでも、彼はまだ息があった。左手にはまだ弓が握られていて、彼女がどうやってもその指をこじあけることができなかった。
 「ハイバ」彼女はその耳にささやきかけた。「あたしは貴方が死んだと思っていたの。ゆっくりと息をするのよ」彼女は首根っこの下とお尻の下に手を差し入れ、彼を持ち上げた。開けた場所へと悲鳴が上がった。
 その見知らぬ男は死んだクリーチャーのまわりを首を振りつつ歩き回っていた。ニッサがハイバを抱いて開けた場所に出てくると、彼はそちらを向き、彼女が地面に下ろすのを見つめていた。その振る舞いは彼女を不安にさせたが、できるかぎり彼を楽にさせようと懸命になった。あの見知らぬ男が唱えた呪文を見たことを忘れようと努め、彼女は手をお椀型にして口に当て、その男のほうを向いた。
 「あなた、水を持ってない?」彼女は叫んだ。何かを飲む素振りをして「水は?」
 その男は彼女と傷ついたエルフの隣まで歩いてきた。近くで見ると、彼女が思っていたより背は高かった。金のまだらの瞳は、その男の青白い顔に不思議な熱を与えていた。その男は興味無さげにハイバを一瞥した。その瞳は彼女に向けられた。
 「これはじきに死ぬ」その男はハイバを見ることもなく言った。その声は喉の奥底から響いてきた。「すでに死んでいる」
 彼女はその見知らぬ男が言ったのがハイバのことか自分自身のことかどちらなのかに絶対の自信を持てなかった。
 「あんた、誰なの?」彼女は尋ねた。
 彼は開けた場所に注意を払っていた。「私は、ソリンと呼ばれている」
 ソリンは振り返り、その金色の目でニッサをまたじっと見つめた。ハイバはうめいた。
 「そして貴様は、ジョラーガのエルフであると、私は考える」その男は言った。

 「ニッサよ」彼女は言った。右手を心臓に当てて、軽く会釈をした。それがエルフの礼儀だった。
 何かが開けた場所の中央で動いた。一本の腕が音を立てた。ソリンは彼女の目の先を追った。「下位吸血鬼が生きていると、見受けられる」その男は言った。
 「吸血鬼ですって」ニッサは言った。そうするつもりはなかったが彼女の唇は曲がっていた。
 見知らぬ男はしばらく彼女を見た後、青白い唇にゆっくりと笑みを広げた。「左様」その男は言った。「然りだ」
 ソリンは引き返して開けた場所の真中まで歩き、しゃがみこんで吸血鬼におおいかぶさり、水から手を引き抜いているかのような容易さで手首を掴んで吊り下げた。彼はそのクリーチャーを引きずってニッサのいるところまで戻り、その者をハイバの隣に投げ捨てた。ニッサは不意を打たれ後ろに下がった。
 ソリンはくつくつと笑った。「貴様の故郷たるバーラ・ゲドはグール・ドラズの近くではないか」
 「ええ、そうよ」彼女は言った。「ついでに言うと、境界線を守るためにお互い争い続けているわ」
 彼女の足元にいるクリーチャーは彼女が戦ったことのある他の吸血鬼とは違っていた。彼の髪の毛は目になく、一つにまとめてきつく編んで縛っていた。その肌は同じように青白く薄い青だったが、その者は赤い線を胸から顎にかけて塗っていて、それは額から頭頂、剃りあげた首筋まで続いていた。同じような名残の角が肩とひじから伸びていた。
 「彼のバンファはどこに?」彼女は尋ねた。
 ソリンの顔は無表情なまま「ああ」と言った。「貴様が言っているのはこの者の武器のことか。落とし子の血統に取られた、と私は推測する」
 バンファ。 ニッサは、鋭く尖らせた骨でできた長柄両手武器を思い出し、身を震わせた。お世辞にも見目麗しいあの武器は、恐ろしい切れ味を持っている。彼女の体にはそれを証明する傷跡があった。 待って。 彼女は考えた。
 「あいつらをなんて呼んだの?」クリーチャーの触手をつま先で指してニッサは尋ねた。
 「こやつらは落とし子の血統だ」
 「落とし子の、血統」唇を湿らせながら彼女は言った。「何の血を引いてるってのよ」彼女の言葉は空に切えていった。
 「こいつらはこれまでの年月、眠っていたのだよ」突然、下位吸血鬼が言った。「アクームの石の寝床でね」
 開けた場所の向こうから大音量の唸り声が響いてきた。ソリンはその音に気づいていないように見えた。彼はその吸血鬼を見下ろしていた。その者は大きな、瞬きをしない目でソリンを見上げていた。 あの目ときたら。 ニッサは思った。 あの黒い虹色の目が。
 「貴様は、血統のことを、どうやって、知ったのだ?」ソリンは怒鳴った。
 ソリンの声には確かに目に見える鋭さがあった。その下位吸血鬼はその一言ごとに震え上がり、もがくように慎重に立ち上がった。その者のベルトからはたくさんの金属円筒がぶら下がっていた。編みこまれた髪の毛は前腕くらいの太さがあり、地面に届きそうだった。その者はソリンと同じくらいの背丈だったが、細身でしなやかだった。言葉を継ぐ前に、その者は金属円筒を手探りした。
 「私はあれらを解放するために居るのですよ」その吸血鬼は言った。「アクームの歯でね」
 「そうであろうな」ソリンは言った。「ウギンの目でか」
 「同じ場所です」
 別の唸り声がした。先ほどよりも大きく、木々を切り裂いて聞こえてきた。ニッサはしゃがみこみ、ハイバの下に腕を差し入れた。「あたしたちは行くわよ」彼女は言った。「もしベイロスのつがいだったら、こんな開けた場所じゃ......」
 しかしソリンには聞こえていないように見えた。その男の目はその吸血鬼を見ていた。「貴様、何者だ?」彼は尋ねた。
 「アノワン」その者は言った。「かつてはゲト・ファミリーでした。あの目に心囚われた者です」
 「さて」ソリンは言った。「貴様は私が今いる所がどこだかわかるか、アノワン、かつてはゲト・ファミリーであった者よ」
 その吸血鬼の目はハイバを抱き上げたニッサに向いた。「変わり樹森のどこかです」その者は言った。ソリンが何も言わないでいると、アノワンは続けた。「オンドゥ大陸です」まだソリンは何も言わなかった。「ゼンディカーですか?」アノワンは思い切って言った。
 「それと、私は貴様がウギンの目への道を知っているとは思えないのだが?」ソリンは尋ねた。
 「アクームにあります」アノワンは言った。「私が言ったとおりです」
 ソリンはくつくつと笑った。「そんなことを聞いたのではない。貴様が愉快な言葉のやりとりがしたいのであれば、私は貴様の心臓を胸から引きずり出して、そこなエルフに食わせてやろうぞ」
 ニッサは落ち着かなげに足踏みをしていた。
 「あたしは、アクームへの道のりを知ってるわ」開けた場所に横たわる落とし子をちらっと見ながらニッサは言った。「少なくとも、そこへ続く道へあんたを連れて行くことはできる」 なんとしてでも、あたしの森から出て行かせるわ。
 「上出来だ」ソリンは言った。「ようやくの、少しだけ良い知らせである。貴様はこの地に詳しい。貴様は私達のガイドとなる。そうか。貴様は私達に道を示すか」その男はニッサへと向き直った。「それは」ハイバを指差した。「死んでおる。置いていけ。貴様はアクームまでこの湿気った場所を抜けていく案内をしろ。貴様の見立てで私が覚えている道を見出すのだ。そこで忘れられし呪文を唱え、そこは永遠に失われるだろう。忘却の光でな」
 「どうしてあんたに協力しなきゃいけないのよ?」ニッサは言った。「あたしが変わり樹に戻ったら、あんたたち2人はあそこで吼えてるベイロスが細切れにしちゃうわよ」
 「なぜならば、だ。蛮族」ソリンは言った。「ここで貴様が見たものは真なる軍隊の先兵でしかないからだ。私達が話している間にも、本隊は他の場所にもここ以外の次元にも近づいている。貴様が自分の民を救いたいと願うなら、この病を含めて私を手伝うことだ。しかして落とし子どもを居るべき獄に戻す。容易いことではないが、幸運は転がりこんでくるものだ」
 ニッサはハイバを見下ろした。 死んでしまった。 塊が喉まで出かかった。彼女はそれを飲み下すと口を開いた。
 が、ソリンの話が先だった。「私だけがエルドラージをあやつらがもと居た墓場へ戻すことができる。私だけが永遠の眠りにつき直させてやることができるのだ」
 ニッサは話す前にその言葉について考えているようだった。「私の条件としてなんだけど。あんたたち二人がこの森に私の友達を葬るのを手伝ってくれたら」彼女は言った。「あと、縛られていない吸血鬼と一緒に旅はできないわ。あいつは縛り上げて猿轡をはめないと。でなければ、あんたはあたし抜きでぐらつき岩のなかをまっすぐ歩くことになるわ」
 アノワンの口は冷笑に歪んだ。「ジョラーガの月ナメクジが」彼は言った。「お前やお前の同族などのような泥と苔の味がするものに誰が喜んで口をつけるものか。キノコ食いめ」
 ニッサは微笑んだ。彼女にもよくわからなかった。彼女は長いことその侮辱の仕方を聞いてなかった。それは彼女に故郷を思い起こさせた。成人の儀式のなかに、キリサキタケを食べるということが含まれている。そのためにたいてい何人かの若き戦士は命を落としている。大部分は数分間死んだように倒れ、そのあと息を切らせながら瞬きをして起き上がるものだ。生き残れば、生きていける。死ぬのなら、ジョラーガの戦士としての資格が無いということだ。死体は大空洞樹のなかへ投げ込まれる。
 「縛らないなら」ニッサは言った。「この話は無しよ」
 それに答えるかのように、ベイロスの咆哮が木々の向こうから響き渡った。ニッサは歩き出した。

 *4月発売の本編へ続く*



霊界と現実世界のはざまの空間に、現れ出でるのを待ち焦がれる強大な邪悪が潜んでいる。

ゼンディカーは危険と冒険の地である。致命的な危険と莫大な財宝の世界である。多元宇宙の致命的脅威のひとつが閉じ込められた牢獄でもある。それはエルドラージと呼ばれている。
誇り高きエルフの戦士ニッサ・レヴェインと古代の吸血鬼ソリン・マルコフ、この2人のプレインズウォーカーとともに、霊界から生まれ出る災厄を止める手立てを見つけ出すのだ。

Zendikar: In the Teeth of Akoumは2010年4月6日発売。

尖った美しさ――どんな言い方よりも火山大陸であるアクームを表現している言葉です。太陽の下、水晶の平原はおよそ考えられるすべての色できらめいています。しかし、不注意な旅人が滑ったり転んだりすると、どこにでもある石の表面でさえも、皮や肉を薄切りにされるほど端が尖っているのです。

その表面温度は信じがたいほど両極端に届き、あちこちに見られる石綿の石が太陽のまぶしい光を反射し、準備のできていない旅行者を日中に煮え立たせ、夜中には凍らせてしまいます。

アクームは火山帯に似合った赤マナと結びついた地ですが、水晶の平原の表面や鈍く反射する尖塔は、この地が結びつくように白マナを生み出す助けになっています。表層の下には考えられないほど古い世界があり、表層の下の多くの地層には、数世紀も昔の空洞が広がっています。時折、火山の噴火により数世紀を経た空気や地質が表層へ持ち上げられます。

今のところ、アクームの表層は美しさと、時折見られる奇妙な植物の中に、爆発を含めた地なのです。この地方に出向いたことがあるエルフの巡礼者たちは、"命の花が咲く"と表現しています。具体的に誰かが火山活動に巻き込まれたりしたとか、災害跡に時々生えている肉食植物に食べられたりしたということは口にしません。
PART 1

かつて1つの大きな次元であり、5つに分かたれた次元、アラーラ。
マナの豊富な次元であったその地は、今や1つの次元につき3つのマナしか存在しておらず、それぞれの次元は独自の発展を遂げていました。





むかーし、むかしつーかわりと最近。
あるところに、つーかナヤの次元に、白毛のレオニンがおりました。名をアジャニといいます。

不吉な象徴として忌み嫌われた彼ですが、唯一彼の兄、ジャザルに救われ、彼の群れで生活します。
マリーシの祝祭のために彼はガルガンチュアンを仕留めようとしますが、アジャニを嫌う筆頭、金毛のテノチにその手柄を取られてしまいます。

一方バントでは、グヮファ・ハジードが黄金塔からのキャラバンを移動させていたところを捕縛されることになります。

ジャンドでは急に強大な力をつけたラッカ・マーに対して、クレシュはその裏を探ろうとします。
クレシュらが偶然行き会った男はドラゴンを探していると言い、共にドラゴン狩りに連れて行くことになります。

マリーシの祝祭の際、ジャザルの行動に不信感を抱いたアジャニは彼の寝床を調べ、彼が品物や情報を集めて何かを調べていることを知ります。
マリーシの祝祭の後、テノチに怪しげな影が襲い掛かります。

休んでいたアジャニにも黒い影の怪物どもが襲い掛かり、間一髪難を逃れるアジャニでしたが、彼の群れは襲撃を受け、シャーマンであるザリキからジャザルが何者かに殺されたことを聞くのでした。

バントではアーシルから黄金塔が壊滅したとの報をうけ、ラフィークとその従者であるロウクスのムビンは調査に向かいます。また、アーシャの予言にあるバントのオベリスクが狙いであることも判明し、ハジードがその手引きをしたことも突き止めます。

ジャンドでは、ドラゴン狩りの結果は凄惨なものとなっていました。獲物たるマラクトスのヘルカイトによりクレシュの戦士たちは壊滅、ラッカは行方不明、ヘルカイトを仕留めたサルカンは、この行動の真の目的は別にあると睨みます。

悲しみに沈むアジャニに、死んだジャザルの魂が話しかけます。しかし悲しみと怒りでアジャニは自らの魔力を解放します。次元渡りが起こったのです。

一方バントでは、逮捕されたハジードをラフィークが尋問します。自分は何もしてないとうそぶくハジードを、怒りもあらわにラフィークは殴りつけます。

アジャニが気がついたときには、そこは火山地帯でした。見知らぬ地でとまどうアジャニに襲い掛かったドラゴンを止める声「やめとけ、それは俺のだ、カーサス」――サルカンでした。

「俺はサルカン・ヴォル」
「アジャニ。黄金のたてがみのアジャニだ」
「ずいぶん故郷から遠くにきたもんだな」
「ここは......何処なんだ?」
「ジャンドの次元さ」
「ここは故郷、クァーサルの谷じゃない」
「そりゃそうだ、ここはナヤじゃない。違う次元だからな、プレインズウォーカーどの?

もとの世界に戻るためにも、力を使いこなすべきだとサルカンは言います。もっとも奥深い望みを解き放てばいいと。火口に身を投げ、復讐のための力を得るのだと。
彼の言うとおり身を投るアジャニ。気がつくと彼は雲に包まれたジャングルの遺跡に戻ってきていました。そこで老いたシャーマンと出会い、ナカティルのコイルについての教示を受けます。



PART 2

それから数日後、群れの居住地に戻ったアジャニは、居住地はひとけ無く静まり返っているのを目にします。いや、物音は火葬の薪からしていました。ジャザルが葬られていました。
"これじゃカッコがつかないな"とジャザルの魂。
「そんなことはないさ」とアジャニ。「群れ長として葬られているんだ、立派だよ」

そこに残っていたザリキが現れ、不在を問い詰めます。アジャニはうまく説明できません。

その頃、ラッカはサルカンとボーラスを引き合わせていました。サルカンはボーラスに忠誠を誓います。
『戦争が始まる。できうるかぎりのプレインズウォーカーを引き入れ、勝利を我が物としたい』
「御身の武器となりましょう。ところで、私はもう一人、プレインズウォーカーを知ってるんですがね......」

その頃アジャニは祝祭で奇妙な動きをしていたテノチを追い詰めていました。崖でもみあううち、アジャニとテノチは崖から落ちかけますが、テノチが崖っぷちにつかまり、アジャニがテノチの足につかまるという体たらく。
「テノチ・・・何かにつかまれ」
「俺の脚を離せ!」
「やめろ、なんとかするから、動くんじゃない!」
「滑り落ちそうだ、落ちてしまう」
「つかまるものを探すんだ」
「せいせいするぜ」
テノチはアジャニの腕を蹴りつけ、アジャニは崖から落ちてしまいます。

傷だらけのアジャニは、バントにプレインズウォークします。その報はエルズペスのもとに届き、彼女はアジャニを保護することに決めます。

エルズペスはアジャニがプレインズウォーカーであることを見抜いていました。アジャニは彼女に世界が変化していること、5つの次元のことを説明しますが、彼女は急に頑なな態度を取り始めます。
話を一方的に切り上げられてしまい、しょうがなく傷が癒えたアジャニはナヤに戻ります。狙うはテノチ。

行方を追うためにテノチの母親を訪れたアジャニ。
「生きておったのかい」
「あんたの息子のおかげでな、チママトル」
「不幸な事故だよ」
「すべて"事故"だって?あんたとテノチが関わってるとしか思えないが」「俺はあんたと息子の罪を知っているぞ。 ジャザルを殺した真犯人は誰なんだ」
「あたしのゴールなどわかりきったこと、テノチを一人前にすることさ」
「その結果としてジャザルが死んだ」
「小さき猫、知りたいと願うことは大きすぎ、お前の見地は小さすぎる」
「あんたが犯人じゃないと言うのなら、いったい誰だと言うんだ」
「どうして追う」
「罰を与える」
「もう一月も前さ、お前さんなどひと噛みで食われるほど腹をすかせてるよ」
「そいつは何者なんだ」
「古き友、古き英雄」

ナカティルの生ける英雄、マリーシは目的の場所にたどり着いていました。その眼下、谷に広がるはエルフの集落、そして、《大祖始の遺産/Relic of Progenitus(ALA)》が眠る場所。

その頃エスパーでは、サルカンがエスパーのオベリスクへの工作を完了していました。マナがいずこかへと向かって流れていきます。

《大祖始の遺産/Relic of Progenitus(ALA)》への儀式を終えたマリーシに声がかけられました。「マリーシ」「本当にあんたなのか」
「人違いだろう」
「マリーシ、古きコイルを破りし者。赤茶(マホガニー)の毛を持つもの。チママトルが教えてくれた」「もしあんたが本当のマリーシなら、聞かなければならないことがある。闇の魔法で殺された兄のことだ」
「名はなんという、白毛」
「アジャニ」
「アジャニ、兄君のことは残念に思うが、わしはやってはいない」
「あんたは嘘をついている。もし真実を話さないというのなら――」
「殺したければ殺すがいい」
「すぐには殺さない。聞きたいことは山ほどあるからな。本当にマリーシ、コイルを破りし者と呼ばれた者なのか」
「アンタリの獣、とも呼ばれたよ」「わしの罪は数多くあるがな、お前の兄を殺したのはわしではない。あやつ自身が招いた結果なのだ」
「嘘をつくな」
「そうさ、雲のナカティルに挑むべからず、危険な質問を発するべからず、主の計画を破るべからず」
「主?誰だ」
「はやく殺せ!すべてが起こる前に」
「何が起こるというんだ、言え!」
「お前が手を下さずとも、わしらはすべて死ぬ。お前にはあのドラゴンを止めることなどできはすまい、ニコル・ボーラス様をな」
そのとき恐ろしい地響きとともに足元の地面が隆起し、アジャニとマリーシは宙に投げ出されます。

アジャニはジャングルの木に落ち、そのままエルフの谷のほうへと転げていき、一匹のガルガンチュアンの前で止まります。
「あなたは誰? ここで何をしているのですか?」静かな女性の声。うら若き黒髪のエルフの巫女が、ガルガンチュアンの背に乗っていました。

「エルフよ、領地に入ったことを許して欲しい。俺は野生のナカティル群れのアジャニという。別のナカティルに会っていたところ、突然地面が揺れて・・・彼を見失ってしまった。何が起こったのか教えて欲しい」
「私たちにも、わかりません」

彼女は立ち去るように言いますが、アジャニには気がかりがありました。マリーシが持っていた黒い円盤、呪文の器のことが。
「私はメイエルと申します。野生のナカティル群れのアジャニ」「今代のアニマを務めています。私たちよりもあなたのほうが何が起こっているか詳しそうですね?
 呪文の器というアーティファクトは、魔力を封じ込め、あるいは解放するものです。見たことはないのですが、あなたが持ってきたのですか?」
「いや違う。しかし似たような物で俺たちの仲間は邪悪な魔法により散り散りになってしまった。同じことがここでも起こるかもしれない」
「あるいは、もう起きているかも」とメイエル。「あなたの仕業であるか、その魔法のしわざであるかは知りようがありませんね」
「信じてくれ、これは俺のしわざではなく、俺が追っている者のやったことだ、彼も、そのアーティファクトも危険だ、皆すぐにここを離れたほうがいい」
「できませんし、するつもりもありません」「私たちはここに残り真実を聞く務めがあります。あなたこそ、持ち物とその器を持って早く立ち去りなさい」

仕方なくアジャニは谷を後にします。そしてマリーシが残した言葉と黒いうろこで造られた器について考えをめぐらせます。そして瞑想し、その幻視はやがて真実 の姿を――ナヤが2つの次元と重なり合い、バントが2つの次元と重なり合い、5つの次元が奇妙な結びつきをしている世界を見出します。

その頃、《大祖始/Progenitus(CON)》の声を聞いていたメイエルに、声が響き渡ります。
「戦争を起こせ」

「汝が、エルフたちがすべてを殺しつくすのだ。外敵の血で河を作れ」

メイエルは息を呑みます。「大いなるものよ、それがあなたの答えなのですか?私にはわかりません!」

「戦争は近い。遠征の準備をせよ。今夜にも奴らは襲ってこようぞ」

そこで幻視は途切れます。
「のどが痛いわ」
「叫んでおいででした」
「そう、ごめんなさい」「戦士たちを集めてください。エルフは戦を始めます」
「戦? いったい、何をご覧になったのですか、アニマ様?」
「恐怖を」


PART 3

*大渦*
5つの次元が重なり合う地点。アラーラの中心部。光と魔力が渦となり巻き起こります。

『始まったな』ボーラスはグリクシス、ケデレクトのはるか地下の棲み家でそれを感じ取ったのでした。

バントではラフィークがアーシルと会議に出席していました。
「ご 足労感謝します」彼女は言います。「いくつか芳しくないニュースが入っています。数日前からあなたも地平線の嵐や地震を感じてきておいででしょう、ジェス からの報告によると沿岸に見たことも無い金属の塔が出現し、モルタル階級のものが数十人と殺されているそうです。奇怪な怪物の出現や果樹園の変異、人型の ものは私たちの魔道士にもわからない魔法を使うとのこと。まるでこの世の終わりでも来たかのようです」

「執行官、お願いします」とアーシル。
「天望騎士団のイアマ、発言を許可する」執行官は一人の預言者を指します。
「予言者と聞きましたが」
「ええ、預言をもたらしますとも。われら天望騎士団は天使の言葉をバントの人々に伝えるのが務め。アーシャの預言についてはご存知で?」
「もちろんです」
「どう締めくくられているかは?」
「悪魔が舞い戻り、戦争で我らの世界が終わると」
「いえいえ世界の終わりなどではありません。それは我らの世界の行く末を暗示してるに過ぎません。重要なのは準備を固め、我らの土地を守るために立ち上がることです」

「一言よろしいか?」
「数多のラフィーク、発言を許可する」
「予言者どの、あんたのことは知らんが、預言のことは良く知っている。天使がわれらを導いて下さるのを待つべきで、本当にバントの危機であるのなら天使たちが動くはずだ。その導きを待つのが筋というものではないのか?」
「あなたの高名は聞き及んでおりますが、そうは思いません。天使たちは私たちの選択を手伝ってくださるのです」
「イアマどの、過激に過ぎる解釈ではないかと思いますが」
「これはアーシャ様みずから我ら騎士団に下された義務なのですぞ」
「それはあなたの言葉だ」
「いかにも。預言はこうも言います。世界は広く、バントのほかにもあると。現に金属の塔がジェス国沿岸に出現し、我々がエスパーと呼ぶ世界のものどもを目にしているのです。エスパーが最初で最後ではありません。世界がバントと我々を破壊しようとしてきているのです」

「バントは他の世界から侵略を受けています」アーシルは言いました。「バントは今よりエスパーとの戦争に移ります」「私たちには将軍が必要です。幸いにも私たちをまとめあげ、私たちに勝利をもたらしてくれるであろう人物が一人居ります」
衆人がラフィークに注目します。
彼は大きなため息をつきました。

かくしてエスパーとの戦闘が始まります。総大将のラフィークは従者ムビンに愚痴を言い、いち騎士長として参加しているエルズペスは彼女が慕うマーディスを援護しながらエスパー軍を撃破していきます。

*グリクシス*
『報告を』
「断片同士が戦争状態に入り、オベリスクはマナに接続をしました。手はずどおり」「ただバントのオベリスクは、城を破壊したにもかかわらず健在であり、バントのマナへ接続ができていません。私がバントへ出向きましょうか?」
『それには及ばん。貴様にはジャングルへ行って貰おう』
「ナヤですか? しかし次元が繋がってしまった今、プレインズウォークですぐさま移動するというわけには」
『その必要は無い。死滅都市の迷路を行って貰う。驚くぞ』

ボーラスはサルカンの働きに免じ、ドラゴンのひと群れを与えます。
『美しかろう?貴様のために準備しておいた。貴様のものだ、サルカン。ドラゴンの支配と召喚を教えるなど』『おかしなものだ。セラが信徒に天使を縛る術を教えたと思うか?』
「は?」
『怪 しいものだ。まあよい。原則は同じだ。全ては精神が鍵となる。ドラゴンの心はすべて火で覆われておる。それを説得しようなどしたら、何者も従わせることは できん。単に燃やされるだけだ。その火を消してやりさえすれば残るは空の器だ。あとは望むものを満たしてやりさえすればよい。我への、そして貴様への献身がそこにある』

「カーサス」
『それがどうかしたか?』
「ジャンドで以前会ったことのあるドラゴンです。強力なヘルカイトです」
『今日からは貴様のヘルカイトだ』
「ありがとうございます。我が主」
『ナヤの破壊を楽しむがいい。大渦でまた会おう』


*バント*
エスパー戦において、突如同士討ちが起こります。ムビンがエルズペスに襲い掛かったところをラフィークが彼を打ち倒します。

「いったい何が」
「あんたはバントの騎士に攻撃されたんですよ。厄介なことに」
「裏切り・・・いえ、魔法?」
「そうでしょうな」「エスパーの魔道士から魔力が発せられ、私の友人のムビンがあなたに襲い掛かりました。本当にすまない」
「すぐに彼のもとへ」
「いけません。安静にしていてください」と癒し手。

「でもこうしている間に他の人が」
「ええ、あんたはまだ生きている。運が良かった」
「こんなベッドの中では役立たずです・・・わた、いえ、この世界が私を必要としているのに」
「よくなるまでの我慢さ」
「いいえ、理解できないかもしれませんが、バントは......理解できない力で攻撃されているのです。このままでは、私がいなくては勝てない」
「いまは休んでいなさい、若き騎士」「いまは前線を立て直している。外の敵と戦う前に内なる敵と戦ってきた我らですよ」
「内なる敵?」
「ああ、ハジードとかいうケチな商人ですよ。黄金塔から逃げ出してきた。ヴァレロンの法廷にいます」

救護所に運ばれたムビンが意識を取り戻します。
「はっきり言ってくれ、癒し手さんよ。わたしはまた歩けるようになるかい?」
「気がついたのですか」
「わたしの足だよ。どうなんだい」
「時間が必要です」
「ひどいように見えるよ」
「申し訳ありません......サー・ムビン......私たちの癒しの力ではこの手の傷は無理なのです。傷が深く、粉々になっていては」

「何人死んだ?」ムビンは尋ねました。
「戦闘でですか?」
「そうじゃない......何人......私の手で......?」
「あなたのせいじゃありません、敵の魔法で......」
「お願いだ、教えてくれ。何人殺した?」

癒し手は目を合わせようとしませんでした。
「多いんだな?」
「たぶん......」
「何だ」
「たぶん、貴方の脚は治りますよ、祈りを捧げるものには、天使様がきっと奇跡を」
「もういい、出て行け」
「サー......」
「出て行け、奇跡にしか頼れないほどなんだろう、わかった、もういい、重傷の殺人者のところで十分懺悔は果たしたろう、目が覚めたとラフィーク卿に伝えに......いや、行かなくていい、ラフィーク卿には言わないでくれ」
「サー......」
「もういい、行ってくれ」

「待った」
「何か?」
「祈りのための経典を......持ってきてくれないか」

*グリクシス*
「お呼びでしょうか、主よ」デーモン・ドラゴンのマルフェゴールが姿を現します。
『大渦だ』『成長が遅い』
「どの世界の国境でも戦争は起きております。間も無く大渦も時が満ちるでしょう」
『時間など無い』『貴様などに理解できまい、ひとつ息をする間も惜しい。レオニンや人間どもの失敗で何もかも遅くなっておる』
「仰せのままに」
『バントへ行け。行ってオベリスクを起動せよ』
「私自らがですか?手先の仕事では?」
『あやつは捕まったと天望騎士団から報告があった。もはや役に立たぬ』
「天使や聖騎士であふれかえるバントまで行けと」
『それがどうした』
「しかし単騎で、しかも道のりが長くては」
『今すぐ行かぬなら八つ裂きにしてケデレクトのリバイアサンの餌にしてやろう、不死王セドリスか呪術師カラデサにグリクシスを任せるほうが良いか』
「出立します」
『急げよ。道行きのエスパーは好きなように破壊してかまわぬ』


ラフィークは友人ムビンを見舞いますがすげなく追い返されます。彼はエスパーへ斥候を出し、情報収集を始めます。

*ジャンド*
その頃、霊体をジャンドに飛ばしたアジャニは、かろうじて生き残っていたクレシュと部族の生き残りと接触します。
「強大なドラゴンを探しているんだ。ボーラスという」
「ボウロズ? ボーロス? 聞いたことはある」
「どこにいる?」
「知らん、が知ってそうな奴に心当たりはあるな」
ラッカへの復讐ができる、とクレシュは笑います。

ラフィークはエイヴンの斥候をエスパーへ飛ばしてエスパーの情勢と、伝説のアーシャの剣のありかを探させます。

ラッカはサルカンを送った後、ジャンドに戻って戦士の部族をドラゴン狩りへと駆り立てる仕事に戻っていました。
ナヤにたどりついたサルカンは、ドラゴンを次々と召喚し、準備を整えます。

エルズペスはハジードと面会し、質問をはじめます。ロウクスの修道士ホリンが同席しますが、エルズペスが退席させます。

「お戻りなさい、ハジードさん。私は貴方に少し奇妙な質問をしたいのです。ここでは正直に答えて欲しいのです。貴方の答えは貴方自身の状況だけではなく、バント全体にとって重要かもしれないのです」
ハジードは相貌を崩してへらへら笑いながら「なぜ? いったいどういうことです?」
「最近、貴方は誰かと接触を持ちましたか?......その......おかしな人物と? 貴方が余所者だと考えるような誰かと?」
ハジードは鼻で笑い、「どの土地も私にとっては他所の地じゃありませんよ。私はバント全土を旅しているのですから」
エルズペスは瞬きをして「貴方は聞いたのではない。そうですね?」
「聞いた?何をです?彼らは何もおかしなことなど語っていませんよ」
「そう、仰るとおり貴方は旅をするもの。だから知ることが出来る位置に居る。誰が、貴方にそれを伝えたのです?破滅をもたらす呪文の計画を。誰が貴方のもとへもたらしたのですか?」
「わ、私は――」ハジードは演技を止めた。彼の目はせわしなく動き、部屋のあちこちを見ていました。ただ、エルズペスだけは見ようとしませんでした。
「誰なのです?」
「い、言うことはできません」「嘘だと思うに決まっています」
「言ってみてください。他の人たちは理解できなかった。それが私がホリンを退けた理由です。私はあなたを信じます。」
「言えません。彼......彼は、誰かに言ったら殺す、と」
「私が護ります」
ハジードはくつくつ笑います。「彼からは無理だ」
「ハジード」「あなたは昨今の地響きや嵐が何であるか知っているのですか?」
「私は何も知りません」彼の目は定まらなかった。「でも、予想はつきます」
「どう予想したのです?」
「彼の仕業です。彼はここに来て、私に力を約束してくれました――でも彼は、私を騙して私に城を破壊させたんです。私はもうおしまいだ。彼は結果から私だけは救い出しにやってくると言いました。でも今になってわかる。彼は私を救いはしない。彼は私を利用したんだ」
「誰なの?」
「ドラゴンですよ」

*ナヤ*
「アニマ」従者のひとりが声をかけます。「一言よろしいですか?」
「もちろんです、サーシャ」
「こんなことは間違っています」「ガルガンチュアンはナヤの神です。それを戦争に使うなんて冒涜です」
「われらはガルガンチュアンとともに戦うのです。冒涜ではありません。それにこれは大祖始のお言葉です。予言の時がきたのです」
「でももし私たちが間違っていたら――」
「私の幻視です。それが冒涜だと?」
「いいえ、申し訳ありませんでした、アニマ」

彼女たちは空に影を見つけます。
「あれは?鳥の群れでしょうか」とサーシャ。
「いいえ、もっと、もっと大きなものです」とメイエル。
「突撃ラッパを、アニマ」
サーシャは長いラッパを差し出しますが、メイエルは盲いた目を神のごとき巨大な、翼の生えたトカゲに向けたままです。
サーシャはメイエルの肩をつかんで揺らします。「アニマ、突撃ラッパを吹いてください!」
それでも動かず彼女は空に目を向けたまま呆然としています。サーシャはラッパをとり、出来うる限りの息をラッパに吹き込みます。

サルカン率いるドラゴン軍団とガルガンチュアンの戦闘がはじまります。カーサスはガルガンチュアンの巨体を持ち上げ、投げ落としてビーストの群れを蹴散らします。
「ついて来い、かわいこちゃん。エルフの奴らに挨拶に行こうぜ」


アジャニはクレシュとともにラッカを探し始めます。行く手をさえぎる闇の魔物との戦闘で友情が芽生えたりもします。そしてラッカを追い詰めることに成功します。

アジャニは、ジャンドのトゲ草の下生えと木々の影から歩み寄ってくる女性を注意しながら見ていました。彼女の目には悪意が渦を巻いていました。その歳のいった女性は屈強でありながら病的に細身であり、歯はところどころに黒塗りをしていました。
目 は深く落ちくぼみ、唇は薄くカラカラに乾き、むき出しの腕は精霊術士の短衣から出た棒切れのようでした。アジャニは彼女から放出されている魔力を感じ取る ことが出来ました。おびえた動物のように彼女の髪の毛は少し逆立っていましたが、おびえているような素振りは見えません。青白い光が川のように枝分かれ し、彼女の腕や指で弧を描いていました。
「調子悪そうだな、ラッカ」クレシュがうなるように言います。
「厄介そうな魔法をかじったもんだな。しかも、ありがてえほど裏切ってくれたもんだ」
クレシュは首をコキコキ鳴らしながら、彼女に向かってゆっくりと歩み寄りながら、倒れた仲間から剣を拾い上げます。
彼女を殺すつもりだ、アジャニは悟りました。
「彼女は生かしておく必要がある」アジャニは警告します。
「まったく、使えないポーンだねえ。クレシュ」ラッカは言います。
「自分がキングだとでも思ってんのかい?ホンット、使えないよ」
指をパチンと鳴らしながら、彼女は前へ踏み出します。
「もっ と頭が良ければねえ。自分の馬鹿さ加減が理解できるくらい賢ければ。あたしの主人の世界での立場も、あたしにとっての利用価値もあったろうに。そしたらあ たしらが役に立たせてあげたのに。でもそしたら」彼女は突進します。「あたしに使われるより死んだ方がましかもねえ」ラッカは腕を前に突き出し、稲妻の一 撃を直接クレシュに撃ち込みます。
電撃は突進する動物のように彼に激突し、その衝撃で彼の体を浮かせ、数メートルほど吹き飛ばします。地面に落ち、転がった後顔を伏せて止まります。
アジャニは彼へ駆け寄り、隣にひざまずきます。彼はまだ息がありました。しかしその体は震え、けいれんしていました。彼の背に黒い痕があり、ひどいにおいのする煙が一筋そこから立ち昇っていました。クレシュの戦士たちはラッカに対して槍を向けます。
「待ってくれ!」アジャニは彼らに叫び、彼らは止まります。
アジャニはシャーマンを見上げます。「そこまでだ」
「そこまでだ。あんたは俺の知りたいことを教えてくれ」彼はクレシュに手を置き、話しながらナヤの緑のマナを呼び起こしていました。「さもなければ、俺たちが築いてきた屍の山のひとつに加えられることになる」
「あんたみたいなのは見たことがないね、余所者」彼女は腕を組み、上から下まで見回しながら言います。
「でも、力はあるようだ。深い魂を持ってる。あたしの知ってるのに少し似てるねえ」
アジャニの指はクレシュの背に触れ、彼の内部を、火傷が引き裂いているのを感じ取ります。呪文を送り込み、組織を再構成し、内臓を修復します。
「そのためにここに来たんだ」アジャニはラッカに言います。「あんたの主人、ニコル・ボーラスに会わせてくれ」
「へええ、あのお方の評判をあんたまで知ってるのかい。いいだろう。あのお方はいつも力ある新参を探している。あたしの見たとこ、気に入られるだろうさ。ここからは距離があるが、案内してやるよお」彼女は言います。「でも、お代はいただかないとねえ」
彼女は手を広げ、電気の網を腕の間に広げます。
「何が欲しいんだ」
彼女はにやにや笑い、クレシュに顎をしゃくります。「そいつだよお」
そして頭をめぐらせクレシュの戦士たちの残りを指します。
「それとあいつら全員。殺しな。あんたの手で」
戦士たちは怒りどよめきます。
「落ち着け、冷静に」アジャニは言います。「ラッカ、それは無理な相談だ。俺がこの斧を手にしたら、それはあんたの痩せた喉に突き刺さるか脅すことになる」
「あたしを殺せば、あの方のもとにはたどり着けないよ」彼女の声は低くなります。「言っとくけど。痛みが怖いからといって止めないし、痛みを感じても止めないね。はじめに正気を無くしてやるさ」
アジャニの目は細くなります。
彼 女は骨ばった指に電撃の糸を絡ませながら言います。「おまけに、あたしはちょいと新しい魔法を試しててねえ。他の世界から新しいエレメンタルを呼び出すモ ンさ。まったくたいしたもんだよお。操れりきれるしねえ。知ってるかい?あたしはいつ何時でも自殺できる用意があるのさあ」
エネルギーの輝きが彼女を後ろから照らし、目に影を落とします。
アジャニは怒ります。彼はひと薙ぎでその女を斬って捨てる自信はありましたが、この世界においてボーラスを探し当てることができる人物が他に思い当たりませんでした。彼女なしでは見つからない。最後の希望でした。

"時間切れだ、弟よ"ジャザルの声が頭に響きます。
"お前の復讐、お前の友人。どちらを取るのだ?"

アジャニは倒れているクレシュを、次にクレシュの戦士たちを、そして背後のラッカを見やります。
あ の女は確実に俺の求めるよう案内してくれるだろう。ジャザルを殺した人物への鍵、人間たちの死を代償として、あの女の主人、アラーラの闇の世界を支配する 者へたどり着く。それでいいのか?この人たちは。俺を追い詰め、もう少しで殺される血に飢えた種族と同じ人だ。だが、彼らはあてにもならない白の猫の予言 のために、そうしなかった。俺は彼らに借りがある。アジャニは目の裏に熱を感じた。彼の心臓は溶岩のように熱くなりました。

ラッカはうすら笑いを浮かべていました。「あんたの内側に火が見えるような気がするんだがねえ。いいことじゃないか」彼女の顔は暗くなっていきます。「さあ、それを見せておくれよ」
アジャニはクレシュの戦士のひとりの顔を見ます。それは若い女性で、筋骨たくましく機敏そうな戦士でした。黄色と緑の儀式様の文様が彼女の腕とももに入れられています。彼女と目が合うと、彼女は槍を握り締めます。
「お前はそうなれば生きていないんだぞ」アジャニはそう言う自分の声を聞いていました。
「私は死ぬことなど、怖くはない」彼女は言います。アジャニの目に血紅色のもやがかかります。彼は彼女の額と手に血が流れているのを目にします。
人間など、死をもたらすだけの役立たずのクズだった。
彼は、両刃の斧の柄を持ち、繊細な喉を握ろうとしているかのようにぎり、と握り締めました。
否。それは間違っていた。
だが、俺が取引をしなければ、ジャザルの復讐をすることは不可能になる。彼の魂は永遠に苦しみもがき続けるだろう。
しかし、彼女のせいではない。そこに立つ女性に復讐をするのではない。
「こんなことは、する必要がない」アジャニは言います。「逃げたいなら逃げろ」
「絶対に嫌だ」戦士はばかにしたように言います。
「だが、俺は、そうしなければならないんだぞ、それが唯一の解決策なんだ。俺の兄のための」

彼女は地面にしっかと立ち、「お前のすべきことを成せ、白き猫。私は、ここにいる我らトルが全員生き残り、そして――あの女の息の根が止まるまで、ここを離れない」彼女はラッカを見上げます。
ラッカはくすくす笑います。
「だが、私はお前を抜き去ることはできない」その戦士は続けて言います。「それがお前の行いだからだ」
アジャニはゆっくりと女性に歩み寄ります。他の戦士たちはそれを注意深く見守りますが、彼に向かってくるものは居ませんでした。彼は彼女のあごの下に手を置きます。曲がった爪が両の頬に触れる位置で。アジャニはラッカをちらりと見ます。彼女は笑い、そしてうなずきます。

握りつぶすことは簡単だ。アジャニは思います。一握りで俺とジャザルの苦しみを終わらせることができる。
その一握りは、全ての怒りを集め、すべての問題が拳に込められます。
その爪で、アジャニは彼女の顔をラッカのほうに向け、彼自身もシャーマンに向き直ります。

この戦士は、それが見たいと言っていた。
ア ジャニは怒りと力の弾丸をラッカに撃ち込もうとします。それは即座にアジャニの体から出現し、ラッカを撃ちます。精霊術士はまっさかさまに吹き飛び、ツカ タンのトゲだらけの木の幹を2本へし折り、その体は見えないところに落ちていきます。その衝撃で、彼女が落ちた辺りから目もくらむほどの雷光が湧き出ま す。彼女が死んだことにより、溜まっていた魔力が解放されたのです。雷のはじける音が、木の間にこだまし、一瞬遅れて聞こえて来ました。アジャニはその女 性の顔から手を離し、後ろに下がって深呼吸をしました。
「すまない」
「私は、あの女がただひとつの手がかりだと考えていた」その戦士は眉をひそめて言います。
「何かが、わかった気がする」
「誘惑されたものとばかり」
「さあ、クレシュを立たせてやろう」「犯人は探し続けなければならない」


ラフィークはエイヴンの斥候からの情報で、グリクシスでとある家族を助けます。そこでアーシャが滅ぼしたはずの悪魔、マルフェゴールのことを知ります。

ナヤではマリーシがナカティルを集め、戦争の準備を始めます。その中にはザリキの姿もありました。

バントでは、祈りの書から偶然ヒントをみつけたムビンが、アーシルのもとを訪れます。ヴァレロンの12の木の根元を掘って欲しい、と。当然アーシルは聖地を掘ることに難色を示します。天望騎士団のアドバイザーによりムビンは追い出されてしまいます。

マリーシの言動に不信を抱いたザリキはマリーシを問い詰めます。ジャザルが死ぬ直前まで調べていたオベリスクの秘密、それを知るものを消そうとマリーシはザリキに襲い掛かります。
圧倒されるザリキでしたがガルガンチュアンを呼び、マリーシを倒します。しかしマリーシが嘘をついていたという説得に耳を貸さないナカティルたちに追い詰められた彼女は、突如クァーサルの塔が粉々になり、魔力が解放されているのを目にします。

*バント*
ムビンは重傷の体を鞭打ち、独断で宮廷に忍び込み、そしてアーシャの剣の破片を掘り当てます。
「ムビン!」
「みつけましたよ、ひとつ」「アーシャの剣の欠片です」
「何事です?」天望騎士団のアドバイザーが駆けつけます。アーシルは青筋をたてつつ怒鳴りつけます。「人手を集めて、ロープと、駿猫を1ダース、鍛冶師も呼ぶのです」
「彼が何をしたのです? 一体何をするおつもりで――」
「一刻も、早く、ムビン殿に、必要な、ものを、取ってきなさい!」「早く!」

クレシュとアジャニはグリクシス内を歩き続けます。
「猫男よ、お前は止まる事がないな」
「止まるわけにはいかない。暗黒の殺し屋たちはまだ近くに居る」
「しかし当ても無く歩き回れば迷子か死にながら歩く羽目になる」
「戻りたければ戻ってくれていい」
「そういう意味で言ったのではなくてだな――」
「シッ」
「話をさえぎるな」
「静かに、何か聞こえる」
「この音は――」
「ドラゴンの羽音」

*バント*
守衛の詰め所で望遠鏡を覗いていた兵士が声を上げます。
「サー、エイヴンの姿です。味方のようです」
「それが歩いている、と?」と守衛長。
「はい」「ひどい有様です」
「罠かもしれん、だが罠なら見つけろ、急げ」
「了解しました!」
エイヴンは門にたどり着くとくずおれます。
「罠はありません」「キーダです。騎士長ラフィークの命を受けていました」
クレリックが駆けつけ癒しを行いますが息を引き取ります。
「残念だ」「羽根を見ろ、彼に何があったのだ」
「よほどのことがあったのだろう」
「巻物を持っているぞ」
「内容は」
「悪魔は、黄金塔に、4日、これだけだ」
「すぐに守衛長に報告を」

*グリクシス*
彼らが見たのはドラゴンの群れでした。
「カーサス」
「我らの世界のドラゴンじゃねえか、どうしてこんなところに」
「誰か乗ってますぜ」
「サルカンだ」

「あれは俺が探しているドラゴンじゃない」とアジャニ。
「だが俺たちが探している奴だ」とクレシュ。

ドラゴンたちは頭上を飛んでいきます。そこに響いてきたのはエルフの突撃ラッパ。
はるかに見えるエルフの旗。それを見てアジャニは隠れ場所から走り出ます。
「猫男! どぉこへいくつもりだ!」
「知り合いだ!」「エルフ、人間、ガルガンチュアン、ナカティル」「ナヤの軍だ!」
「どこへ進撃しようってんだ?」
この次元の中心部。アジャニはそう考えました。

大渦の前。それを見つめるマルフェゴールに、ボーラスが告げます。この世界はじきに崩壊する。お前の支配するものなど何も無い、と。呪いの言葉を吐きつつ、彼は怒りの矛先をバントに向けます。

*バント*
黄金塔の廃墟に着いたラフィークの軍勢は、廃墟の跡に光り輝く白いオベリスクがあるのを目にします。
天使アーシャと悪魔マルフェゴールの戦いの再現かと思いをめぐらすラフィークに話しかける声。
「将軍! 騎士長エルズペスです」
「加減はどうかな、騎士長」
「大丈夫です、サー。後方に居られることを進言します。消耗されたら、私たちの元へおいでください。糧食と癒し手、休める場所を用意してあります」
「そんなヒマがあればいいがな」「エルズペス、"悪魔"というものを卿は知っているかね」
顔色が変わるのを見て、彼は肯定と受け取ります。

マルフェゴールの角が丘の向こうに見え始めます。
「術者は準備を」「目明き階級の準備は?」とラフィーク。
「クレリック、モンクの部隊は準備完了です」とエルズペス。「号令を待っております」
「よろしい。始めてくれ」
「了解しました」エルズペスは指令所のテントに駆け込みます。

「卿」別の騎士に言います。「射手に伝えてくれ。敵が射程に入ったらすぐに撃てと。騎兵はそれまで待機」騎士はうなずいて指令所に駆けます。
「それと君」と従者に言います。「俺の鎧、ちゃんと直ってるだろうな?」
「ご希望通りに黒鋼をあてがいました、将軍」
「ようし」「着せてくれ。あと、剣も用意してくれ」

前哨戦が始まります。アンデッドの軍勢に矢が降り注ぎ、カターリはエイヴン軍と戦闘し、地上ではレオトーに騎乗した騎士がゾンビとスケルトンの軍勢を切り崩します。
「肉ねじり共、騎士を迎え撃て」マルフェゴールは屍術師に命令します。「《屑肉を引き裂くもの/Dreg Reaver(ALA)》第一隊を向かわせよ」

屍術師が呪文を放ち、騎士が駆け、異様のオーガが斧を振るい、下級天使がカターリを打ち倒します。激戦のなか、アーシャへの祈りは高まります。予言のときは今であるのに、天使はいまだ姿を見せてはくれません。


*大渦*
「何だコレは」目を覆いながらクレシュは言います。
「マナだ」この渦こそが鍵であるとアジャニは理解しました。

「きれい」メイエルがやってきます。
「アニマ。 あなたまで戦争に加わっているとは」
「ご挨拶ですね、白き猫よ」「ナヤのため、世界のためなら、我らは馳せ参じましょう」
「助けはありがたい」「が、ここを離れて欲しい。この嵐は不安定だ。あなたの民も危険だ」
「アジャニ」
「ザリキ、こんなところで何を?」
「私も聞きたいことがあるの」「クァーサルのオベリスクからマナが放たれ、それに導かれてここまで来たわ」「そして軍もついてきてくれた。彼らは答えを欲しているの。彼らこそ雲のナカティルなのよ、アジャニ」
「俺にもわからない」アジャニはきっぱり言います。「君も、皆もここを離れるんだ」
「アジャニ」「あなたに言っておかなければならないことがあるの」
「今はここを離れるのが先だ。ドラゴンがじきにやって来――」
「私がジャザルを殺したの」
アジャニの口は半開きで止まります。

「ごめんなさい。殺されても、二度と顔も見たくないと思われても、あなたは知っておくべきだと。私はマリーシから任務を与えられたの」
「マリーシだと? 奴は生きているのか?」
「1年以上も前に知り合ったわ。チママトルが彼に連絡を取ったの。あのひとの計画が、脅威だと感じたから」
「ジャザル」
「あのひとは答えを探していた。 なぜナカティルの部族は分かたれたのか? なぜ自らの死が必要な予言が人間に伝わっているのか? コイルを破りしマリーシの 祝祭の意味とは? その行為はチママトルの目論見と、そしてより強大な力の計画に干渉してきたのよ」(訳注:その過程でクァーサルのオベリスクがマナの伝 導に使われていること、5つの次元のことまで突き止めれば、大渦にマナを集める計画までたどり着くことができるからでしょう)
「だから殺した」
「私がやったの。焚き火に魔法を仕掛けたのも、居住地に怪物を解き放ったのも私」
「ザリキ、なぜなんだ」
「ごめんなさい。 彼らはそうすれば皆が恐怖におびえ、共通の敵と戦うために団結するだろうと。マリーシへの反発を抑えるにも役立つとそれらしいことを吹き込まれたの。まさか......暗殺するなんて」

"アジャニよ"
「兄貴」
"ここが終点ではない。彼女がどんな人物だったか忘れたわけではないだろう"
「彼女はあなたを殺したんだぞ」
"指示に盲目に従っていただけだ。 彼女は俺を恐れていたということだ。何が起こるかなんてわからなかった。彼女はずっと友達だったろう。生きているたった一人の友だ"
アジャニは怒りが湧き上がってきました。ザリキは目を伏せ、涙を落としています。
"そうすることが正しいと言うのなら、そうしろ。彼女を殺して俺の仇を討てばいい。お前の旅は終わりだ。それでお前に何が待っているというのだ?"
アジャニは歯をかみ締めました。
"お前の選択だ。弟よ"それきりジャザルの声はしなくなりました。
「間違ってるってわかってたわ」「呪文がジャザルを狙うことも、彼を傷つけることもわかってたわ」
「ザリキ――俺は、知りたい。マリーシは今何処にいる?」
「彼は死んだわ。私が殺した」
そういうものか。アジャニが復讐を果たす機会は永遠に失われたのだと気づきました。
「アジャニ。ごめんなさい。私は死んだほうがいいのよ。私が死ねばジャザルも浮かばれるわ」
彼女は泣きつきます。哀れみ、嫌悪、悲しみがアジャニの中でひとつに混ざり、彼はザリキを一度抱きしめ、その後力いっぱい殴ります。

ザリキを殺したとしても、彼女が働いた罪はより深くなるだけであり、彼女が直接手を下したわけではなかったことは、アジャニもわかっていました。そして、アジャニ の追跡は別の方向へと向けられていました。すべての元凶。出来事の鎖をさかのぼった先に居る者を罰するまで、彼は立ち止まらないでしょう。

*バント*
騎士長エルズペスは黄金塔の廃墟の戦場を見ていました。彼女の心は重く沈み、守るべき白のオベリスクよりも、心を占めているのは彼女が愛した人々、名誉、平和でした。
彼女は天空で悪魔と戦う天使たちを見上げました。あの天使は、こんな恐怖を感じたことがあるのかしら?
戦場の後方にはデーモン・ドラゴンの姿があります。グリクシスの将軍、マルフェゴール。そのコウモリのような羽根が広がり、太陽を覆い隠すのを目にしました。それが腕を高く掲げたのを、彼女は見ました。
マルフェゴールの腕の間に黒いマナの塊が生まれ、眼下のバントの兵士たちとアンデッドどもはその魔法で苦しみもがきます。

「全軍進め!」エルズペスは指示を出します。「魔道士、あの悪魔を討て!全軍、悪魔へ突撃!全歩兵!悪魔を滅せよ!」
ヴァレロン兵たちは突撃を開始し、エルズペスもそれに続こうとします。そのとき、彼女は後方からの声を耳にします。

「エルズペス!」祝福階級のアーシルが、全速力でレオトーを走らせていました。その手には、光り輝く一振りの剣がありました。「エルズペス、これがアーシャの剣です。ラフィークに渡してください!」

マルフェゴールの呪文は思惑通りに働き、面前のオベリスクの強力な防御魔法を崩すための力を蓄えつつありました。戦場からエナジーを吸い上げ、彼の呪文をさらに強めていました。もはや勝利する必要もありませんでしたが、すべてを破壊し、その後は好きにするつもりでした。
騎士団が彼まで肉薄するのを見てマルフェゴールは手の中にある魔法の印を握りつぶし、蓄えた力を解放しました。大半が死の衝撃波により即死し、その生命エネルギーはさらにマルフェゴールの呪文の力となります。

ラ フィークは死の魔法の波を受け、地面に転がり落ちます。彼の肉体と魂は同時に締め上げられ、死そのものが彼にまとわりつきます。しかし突如その痛みが消 え、彼は周りを見渡します。周辺は彼以外生きているものはなく、見上げるとマルフェゴールは黒い魔法の触手をオベリスクに伸ばしていました。その触手はオ ベリスクを守る魔法をかき消し、オベリスクに激突します。
オベリスクはまばゆく光り、その後魔力がいずこかへ向かって流れ出します。悪魔はそれを見届け、流れの方向へ向きを変えます。

「待て」ラフィークは叫びます。こんなはずはない。栄光の勝利はどこだ?天使アーシャが現れてあのケダモノを両断するはずではなかったのか?

「ラフィーク!」エルズペスが全速力で走りこんできて、彼に一振りの剣を放り投げます。彼はそれを受け取ります。
鞘 の上からでもわかるくらいそれは熱を帯びていて、彼が剣を抜き放つと、刀身はまばゆく輝き、直前まで鍛冶師が熱していたかのようでした。彼は立ち上がり、 背を向けている巨大な悪魔へ走りこみます。エルズペスはありったけの防御魔法をかけ続けます。ラフィークは走るほどに空へと駆け上がっていることに気づきました。俺がアーシャの再来だ、彼は聖なる力を感じ取っていました。

マルフェゴールは振り向き、向かってくる騎士に向かって巨大な爪を振るいますが、ラフィークは傷ひとつ負いません。ラフィークは一度、二度、剣を振るい、悪魔の胸にXの字の深い傷を刻み、そして傷に沿ってその体が崩れ落ちていきます。忌まわしきもの最期でした。


アジャニの復讐についての思考は上空からの炎により中断させられます。
「ごきげんいかがだ、黄金のたてがみのアジャニ!」カーサスの背からサルカンが叫びます。
その後ろにはドラゴンたちが続き、吐き出す炎でエルフやナカティルたちを混乱に陥れます。

「撃ち滅ぼしなさい!」メイエルが叫びます。
エ ルフらはトゲの風を呼び起こし、ザリキは亜人間の仲間に力を与え、クレシュの戦士たちもドラゴンたちに槍を向け、戦呪術を唱えます。魔法の奔流をアジャニ は感じ取り、マナの流れを大渦が利用していることを感じ取りました。これでは大渦の成長を助けてしまう。彼はそう考えました。そのとき、大渦に流れ込む大 きな4本のマナの流れのほかに、新たにもう1本のマナの流れが加わります。何か決定的な一手をうつ必要がありました。

"お前がやるのだ、弟よ"ジャザルの声が響きます。
「止めなければ」とアジャニ。
「俺たちが大渦を引き起こしていたのだ。俺たちは生餌なんだ」
"そうだ。餌となることを止めるのだ"
「俺は皆が餌になることを止めなければ」
"そうだ。すべてを止めるのだ"

アジャニの目はマナの流れを見い出します。自然の魔法、火と怒りの魔法、癒しと守護の魔法、それ以外のもの――人間型の生き物、ドラゴンたちから伸びる固有のマナの流れすら認知します。世界全体に広がるマナの流れがまとまり、大渦に流れ込んでいるのです。
こ れを止めなければ。アジャニは自らのマナの源だけでなく、ナヤからだけでなくジャンドからも、サルカンのマナの源からも魔力を引き出します。咆哮とともに 魔力の奔流は世界中を震わせ、次の瞬間、魔道士もドラゴンたちも、動きを止め、当惑してきょろきょろするばかりでした。衝撃から立ち直った者たちは再び戦 おうとしますが、マナの接続は断ち切られ、ドラゴンの炎も尽きていました。

ドラゴンたちは怒りの声とともに空高く舞い上がり、サルカンはカーサスの横背を蹴りますが言うことを聞かず、ドラゴンたちはジャンド方面へと消えていきました。

歓声がエルフとナカティルたちからあがります。
「アジャニ、やったわ!」とザリキ。「どうやったのかはわからないけど、魔法を止めたのね」
アジャニは消耗しきった様子でうなずきます。
『だが礼など言わぬぞ』

古竜のプレインズウォーカー、ニコル・ボーラスが、空より姿を現していました。

『小さきウォーカーよ』


アジャニは眼前のナカティルやエルフ、人間たちがドラゴンに対して攻めかかろうとしているのを感じ取ります。
マナのつながりが無い今、彼らでは敵うわけがない。ボーラスはアジャニの前に降り、左右を見回します。一瞬でエルフ、人間、ナカティルたちは殺されてしまうだろう。
「みな、退がれ!」アジャニは叫びます。「早く!」
それ以上の指示は必要なく、全員が退却を始めます。
「アジャニ、やめて」とザリキ。「かないっこないわ」
「なんとかする」とアジャニ。「行くんだ。ザリキ。さあ!」
ボーラスはそれを見送るのみで、笑いながらアジャニを見下ろし、爪を組み合わせます。

『しばしのよい見世物だったよ、小さきウォーカー』とボーラス。『定命の者どもを過信するのも止める必要があろうな』
「見ていただけだろう」アジャニは言い放ちます。「隠れていただけだ」
『隠れていた?ありえんな。我はお前の人生から少し離れていただけだ、小さき猫。すぐ近くにいたのだ。我のドアは大きく開いていたというのに。
 我はお前の間違いを責めることはしない。お前はやっと一歩を踏み出すことを覚えたばかりだからな。それほど、お前より我は遠くにあり、筆舌に尽くしがた く、非現実的だということだ。お前は経験は我と比べるべくもないであろう。お前は我の遠大なる思考を理解するだけの言及の枠も、理論的な網も持ち合わせて おらぬ。理解などできぬのだ。理解する能力が欠如しておるのだ。
 我はお前が想像できぬ距離を見てきておる。お前はできるのか?お前の想像力はひ とつの世界の境界線の内に閉じこもっている程度だ。そんなものが意味を持つというのか?否!お前の兄の死は?偶然の一致は? 我と釣り合うわけがなかろ う。ちっぽけなナヤは、すべての真実の入れ物とするにはあまりに浅すぎるのだ』
「俺はここにいる。それが答えだ」
『それで、どうするのだ?復讐を果たすのか?我を殺すとでも?兄の形見の斧で我が死ぬまで内臓を引き裂きつづけるのか?そしてお前は愛する世界を守った英雄としてご帰還か?残念ながらそうはならん。誰もお前が死んでも悲しまぬ。千人も居る陳腐な人物の一人に過ぎん』
ボーラスは爪をはじき、隕石のような力でアジャニを吹き飛ばします。彼は背後の大渦のくぼみまで転がり落ちます。

『貴様の何百倍も生きておるのだ』『貴様の肝が冷える程度の大異変をいくつも生き抜いてきた。貴様が見たことも無い宇宙をいくつも見てきた。そんなマッチ棒程 度の貴様が我に立ちはだかるというのか?我を打ち倒すというのか?言っておこう、ニコル・ボーラスが倒れるときは、貴様によってではない』
アジャニは這いずって戻り、片手で体重を支えながら言います。口からは血を流しながら。「老いた者よ、癇癪はまるで子供だな」
ボーラスは鼻を鳴らし、腕を振ります。アジャニの体は宙を飛び、くぼみの反対側の壁に叩きつけられます。彼は血とともに咳き込み、歯が2本折れているのを確かめます。

『そんな横着をするのは数百年早い。悪が英雄を倒したことは数多くある。貴様よりも立派なものたちがな。遊びは終わりだ。貴様には万に一つもありえぬ。ゴミのように潰されろ』
「お前の計画に意味はない」
『命乞いの時間稼ぎの方法でも思いついたか? 時間を引き延ばして絶体絶命から抜け出す方法でも探るか?』
「も し俺がそんなに矮小なら、どうしてすぐに殺さない?どうして下僕に呪文を運んでこさせない?どうして白い猫の予言などがある?俺がなんでもない人物なら、 どうして問題に行き当たる?俺がどうでもいいなら、どうしてお前の脅威となりえる? なぜナヤにプレインズウォークして俺を子供の頃に殺さない?」

『もっともだ』ボーラスは答えます。『我はどうも話を盛り上げようとしすぎる。対等なものも居らず、自分で自分を楽しませることを好むものを、貴様は考えられるか?わがままに過ぎる、認めよう。我は自ら奏でる交響曲を眺めるのが好きなのだ』
「違 う」「それが理由ではない。それはお前が手下を使った理由でもなければ、自分で汚れ仕事をしなかった理由でもない。おそらく、自らの不死性を失ったことがわかったからだ。お前は強い。しかし弱点があると理解してしまった。俺にはそう見える。古き竜であるお前ですら、恐いものがある」

ボーラスの頬の突起が広がり、胸は怒りで満たされました。彼の後ろの大渦からの光は彼の顔に影を作ります。翼を広げ、爪をアジャニに伸ばしますが、思いとどまります。
『おっと』『もう少しで貴様は我がここで成すことを忘れさせるところであったな』ボーラスは向き直り、大渦の中心へ歩み入ります。

ア ジャニは目を隠します。大渦は光の球となり爆発します。ドラゴンのプレインズウォーカーを力の波で包み、衝撃波はアジャニを壁へと押し付けます。絶え間な い電気ショックを受けているようでした。音がなかったのか、それとも耳が聞こえなくなるほどの轟音かわかりませんでした。

考えがまとまらず、アジャニはひとつの言葉を繰り返していました。奴はやった。奴はやった。

魔力の爆発はハリケーン程度まで弱まり、アジャニは轟くような絶え間ない咆哮を感じ取ります。薄目を開けると、光の中でドラゴンの影が胎児のように丸まって いるのを見つけます。光の中でドラゴンは身じろぎし、羽根を広げ、手足を伸ばし、頭を宙にもたげて大きく口を開けていました。ボーラスに違いないはずです が、アジャニにはそれまでよりも大きく見えたのでした。彼は万能となり、唯一無二となります。

ボーラスは叫び、その声は空を引き裂きすべてに反響します。アジャニは痛みすら感じます。ついに、俺の最期のときがきた。いやもっと悪い。この世界のすべての命の最後が来たのだ。すべてを灰と化し、なにもかも破壊するだろう。

ボー ラスは力をみなぎらせ、ゆっくりと上昇します。ボーラスが核から離れるに応じて、エネルギーも衰えだし、暴風も収まりだします。光の輝きはボーラスにまと わりつき、その体に吸い込まれていきます。後に残ったのは窪地の上で渦巻く、アジャニの背ほどの太陽のように光り輝く小さな球体でした。ボーラスが大部分を持っ ていったのだろう。

ドラゴンはアジャニを見下ろします。殺したいのか、それとも慈悲を与えたいのか、表情はうかがい知ることはできませんでした。あるいは、そんな簡単な 思考が作用しないほどの膨大な知性や感情を持っているというのだろうか?

ボーラスは口を開きます。その声はどこにいても聞こえました。
『恐れるものなど、無い』

「やめるんだ、ボーラス」アジャニはドラゴンの神に叫びます。「行ってくれ、もう十分だろう」
『どうして止めねばならぬ? それは恥部、価値の無いゴミであろう』
「やめろ、俺の居る世界だ」
ア ジャニは大渦の残滓に力強く飛び込みます。それは彼を包み込み、空中にとどめ、マナの奔流で満たし、感覚に負荷をかけます。力のカケラにすら、アジャニは圧倒されます。何千人もの魔道士の努力を一瞬で、その魔法がすべて繋がったものを自らの力にするなど、信じられないことでした。
アジャニは目を閉じ、彼の内なる目が開きます。



そこはあるがままの世界。なにひとつ特徴のない、白の虚無。
"アジャニ"ジャザルの声に、アジャニは振り返ります。
銀毛のジャザルが微笑んでそこに立っていました。二人は固く握手します。
「ジャザル、ずっと探していたんだ」
"知っている"
「俺は......俺は、あなたの仇を討てなかった。すまない。本当の仇は......そいつは、手に負えなかった。俺よりはるかに強かった」
"わかっている"
「あと、ザリキは――彼女は、間違った道に導かれてしまった。それは彼女が悪いんじゃない。彼女は、あなたを愛していたんだから」
"ああ。お前の言うとおりだ。アジャニ"
「失望させてしまって面目が無い」
"それがお前のしてきたことか?"
「ああ。俺には大きすぎた。殺しの犯人も、5つの世界も、多元宇宙も――すべてが俺の想像より大きかった。俺には扱いきれなかったんだ」
"それは、お前が偉業を成すために立ち上がる前に学ばなければならない最初の物事だ"
「そ うはならないだろう。もう手遅れだ。奴の勝ちだ。奴を止めるのに間に合わなかった。計画は成就し、奴は求めていた力を手に入れてしまった。俺にはあなたを 心安らかにさせる方法など思いつかない。いや、それどころか、世界が、アラーラのすべてが利用し尽くされ、捨てられようとしているんだ」
"お前はまだここにいるではないか。お前はあきらめたわけではないのだろう?成すべき事があると自覚しているなら、チャンスが無いなんてことはない。よく聞くのだ"
「聞いているよ」
" そうではない。真に耳を傾けるのだ。お前はアラーラの核に立っている。脈打つ心臓部に。これこそ俺が捜し求めたもの。マリーシとその主の嘘に隠された中に ある、ひとつの可能性なのだ。それが、マナの核。アラーラの生きとし生けるものすべてから繋がる生命の糸の集約点。ボーラスがその力としたいと目論んだも の。お前が学ぶ機会そのもの。さあ、耳を澄ませ"
「こだまが......聞こえる」
"そうだ。なんと言っている、アジャニ? それは何を教えてくれる"
「もうすこしで聞き取れる......」
アジャニはジャザルの手がすり抜けていくのを感じました。
「ジャザル? 待ってくれ、行かないでくれ!」
"それが教えてくれるものは何だ? アジャニよ"アジャニは手を伸ばしますが、その面影も、その声も、か細くなり白の虚無に消えていきました。
「ジャザル!」



ボーラスは哄笑します。
『そううまくはいかぬ、小さきウォーカー。その残りカスを力にしたとて我に敵うわけがなかろう。この世界に我を止められる者など居らぬ』
「そうかもしれない」アジャニは言います。「だが、ひとつだけできることがある」
ア ラーラの全ての魔道士の声がアジャニの口から一度に発せられます。無限に近い知識は、ひとつの不協和音を彼に見出させます。アジャニはボーラスの奥深くに 灯を、他の命あるものたちと同じように、永遠の本質を見出します。おそらく、彼は他のものと同じルールには縛られていないのでしょう。そこにアジャニが見 出した力は目もくらむばかりの、精神が引き裂かれそうなものでした。しかし、そのドラゴンには魂と呼べる部類の、欠かすことの出来ない意識の核がありまし た。その魂はアジャニが打ち倒すことはできませんが、それを反転させ、それを育て、花開かせ、実体化する素材とします。
"アジャニ、お前はいつも皆に最善を示してくれる"ジャザルの言葉が思い出されました。"お前の贈り物だな"
アジャニはボーラスの本質を呼び出します。

エー テルに包まれた星の奔流のように、エネルギーがボーラスの胸から噴き出しました。大渦の残したくぼ地にぶつかり、そのカーブした縁に跳ね返ります。広が り、ゆがめられたその奔流はひとつの形を取りはじめます。はじめのうちは、紫外線で乱された空気のゆがみが作り出したドラゴンのように見えました。その密 度が高くなるにつれ、遠方の風景に焦点が合うように、詳細がだんだんくっきりと見え始めます。それはボーラス自身の光り輝くアストラル体となります。2体 のドラゴンは、奇妙にもそっくりに動くお互いを見つめます。その物まねぶりから怒り、お互いに吼え、空気を震わせます。それらはぶつかり合い、爪で取っ組 み合いを始めます。彼らはお互いがアラーラの中でも最大の脅威であることを知っていました。お互いの力と裏切る性格を知っていました。一歩引けば自身の破 滅であることも知っていました。お互いの精神と魂を屈服させようと魔法のエネルギーを放出し、お互いを手駒としようとします。そしてお互いに精神攻撃への 防御を目的とした魔法で対策を講じます。そのマナの嵐の力でうねりが生じます。かたや鱗の肉体にそって、かたや星のように輝くエーテルの姿にそって。

ア ジャニは坂を這いずり、大渦の谷の外へと向かいます。彼は2体のドラゴンの魔力がお互いを雷鳴のごとく打ち付けているのを感じ、その爪がお互いの鱗をひっ かけようとしている音を聞きました。彼は無垢の可能性そのものが噴き出るのを感じ、嵐の中心で戦う2匹が暴力に酔っていくのを感じていました。もし一方が 他方を破壊することを決めたら、とアジャニは考えます。その両方が確実にそうするだろう。その怒りでアラーラのすべてが焼き尽くされてしまうかもしれな い。選択権は、最終的にはボーラスの魂の本質次第でした。
アジャニは坂を急いで登り、クレーターの縁で背後のドラゴンを振り返りました。ボーラス たちは完全に互角で、一撃は反撃を受け、優勢を得ようとする試みは完璧な精度で回避されていました。それは自分自身を超えようとするひとつの巨大な知的 レースで、一方が勝ろうとすると片方がそれを失敗させていました。突然、ドラゴンらは後ろに下がり、お互いの目に純粋な憎悪を確認します。そして前進し、 お互いの首にガブリと食いつきました。
大渦のエネルギーの流れは、ドラゴンで出来たウロボロスを包み込み、そして雷光の閃光がアジャニの感覚を圧倒します。数秒間、光と静寂のみがありました。

俺はしくじってしまった。アジャニは思いました。アラーラは破壊された。

そ して、ゆっくりと、風の音がアジャニの耳に戻ってきました。毛皮をなでる感覚は妙な感じで、そんな単純な何かを感じることが好ましいという感覚すら忘れて いたかのようでした。次第に激しい光は薄れ、世界が再び彼の目の前に現れました。クレーターは空っぽになっていました。ドラゴンは居らず、マナの嵐もありません。谷には風だけが満ちていました。アジャニは座り込みます。風が逆立てる美しい白の毛皮には、新たに一房の金色が混ざっていました。動くものは他に はありませんでした。

アジャニは谷の縁に座り、アラーラの残ったものを滅ぼしにボーラスが戻ってくることを長いこと待っていました。しかし彼は二度と戻って来ませんでした。



「エルズペス卿?お呼びでしょうか?」
バントはエルズペスにとって楽園でした。異邦人としてこの地に来て、プレインズウォーカーであることは語らぬ過去でしたが、彼女の故郷であるかのように受け入れてくれました。バントは彼女が初めて本当の故郷と感じたところであり、離れるまいと誓った場所でした。
しかし今は、彼女は思いました。ここは廃墟と化してしまった。
部 屋の窓からは薪の火と、死者を空へと送り出す煙が立ち上っているのが見えました。彼女の記憶に焼きついた者たちを思い浮かべます。友を死地に送り出し、何 千ものアーシャの軍をアンデッドの軍と戦わせてしまいました。世界は取り返しの付かない変化をし、彼女の家、彼女の家族、彼女のバントは無くなってしまい ました。
「お入りください。騎士マーディス」マーディスは彼女に割り当てられた部屋の入り口へと来ました。彼は本当にシャイに見えました。二人はマルフェゴールとの戦いについては話しませんでした。彼がやっとのことで生き残った戦いでした。
「来ていただけて感謝します」
「もちろんです、騎士長。大丈夫ですか?」それはおかしな質問でした。
「私は......大丈夫です。ありがとう」彼女はいつものように不器用に嘘をつきました。
「貴方のほうこそ、ご家族は?」
「まあまあです。お気遣いありがとうございます」
彼の嘘は上手だな、彼女は思いました。彼女はマーディスの家族は戦により大勢亡くなっていることを知っていました。皆がそうであるように。
誰もが、本当の家族を持っている――私とは違って。私は空から落ちてきた孤児、また異邦人へと逆戻り。そう、バントへ初めて来たときと同じ。
「貴方に来て頂くようにお願いしたのは、話したい......渡したいものが、あるからです」彼女はどもりながら言います。
「それは光栄です」貴方は誠実で礼儀正しい。そんな人物はそうそう居ません。私を怒鳴りつけ、殴られたほうがどれほど話しやすかったでしょうか。

「渡したいものとは?」彼は尋ねます。「あ、私は、あの――」何をあげようとしたのだろう?思いつくものは無く、バントの形見になるものなど一つも持っていなかった。飾りものも、指輪も、私がここにいたことを称えるしるしも。
私は本当にひとりぼっちだ。彼女は思いました。孤児だ。我が家、故郷だと呼んだ場所も、自分の持ち物と同じように守りきれやしない。
「ごめんなさい」「実は......あなたに差し上げられるようなものは残っていませんでした」マーディスは唇をくっと引き結び、早口で言いました。「あなたはヴァレロンを離れるのですね」
エルズペスは言葉に詰まります。「私は......はい。離れようと、思っています......ヴァレロンを......」
「ですがなぜ?」
「出発は重要なことなのです」ここに留まることは出来ない。とどまってバントの廃墟を見続けることに耐えられそうもなかった。
「いったいどこへ?」
「この世界全てからです。たしか他の断片へ行ったことはありませんでしたね?」
「たしかにまだです」いや、彼女はアラーラから出たことはなかったはずだ。彼女の友人というのは理解しがたいが、彼女の様子は真剣だった。
「ですが、離れることなどできないでしょう」とうとう、本音の声色が出てしまった。
「あなたは、印章階級でいらっしゃる。その地位を捨てると。 騎士としての誓いを破ることになるのですよ」
「よくわかっています」
「もう二度と戻らないと聞こえました」
「そうです」
マー ディスは刺されたかのような表情を見せます。 そう、その顔です。貴方がそんな顔をするだろうと思っていました。でも、わかってもらえるだろうと願ってい ました。これが、貴方に送る本当の贈り物――貴方に、嫌われること。乱暴な状況で、二人の友情を分かつこと。二度と会えなくなること。貴方を裏切るような ことを言うために呼びつけ、ここを離れる都合のいい口実にし、貴方は貴方の人生を送り、私のことなど忘れ去ってしまうこと。
「私は忘れません」
「ありがとう」
でも、いいえ、貴方は忘れてしまうでしょう。マーディス。私が去れば、貴方の記憶から私は消えていくでしょう。貴方は自分の人生を再び愛した人で満たしてください。貴方に残していけるものは一つも無いのです。
私がバントにいた証拠は何も無くなります。それが私なのです。それが私の生き方なのです。常に故郷を捜し続け、決して足跡を残さない。でも私は貴方を忘れません。マーディス。バントをずっと忘れません。ごめんなさい。許してください。

よく事情が飲み込めないまま、きまり悪そうに握手を交わし、彼はまだ何か言いたそうにしていますが、何かを言う代わりに振り向いて歩き去っていきます。ドアは丁寧に閉じられます。
エルズペスはきびすを返し、窓に向かいます。外では一人のアコライトが葬送の薪のそばの荷車から小さな子供をその上に積み上げていました。
窓の鎧戸を閉じ、彼女は暗くなるのを待ってプレインズウォークしていきました。



ラフィークはムビンの見舞いに来ます。
「馬鹿者め」「あんたより山ほどの治療師のほうがよかったよ」
「騎士将軍ではだめかい?」
「今回の任務は我らのものだぞ。あんたとともに行き、そして怪我を、怪我を――」
「もう気に病むな、ムビン」「すべて終わったことだ。それに、エーテリウムを持ってきたんだ。戦争がもたらしたたったひとつのいいことさ。魔道士も連れてきた。お前さんはまた歩けるようになるんだ」
ムビンは考えます。金属の足になるなんておぞましいことだが、それを断ればラフィーク卿に二度と歩くところを見せることは叶わない。一生寝たきり。最悪だ。
「それで」「いつ始めるんだい?」
ラフィークの笑い声は部屋中に響きました。



*ジャンド*
サ ルカンは背中に手をやり、刺さったままの矢を引き抜きました。歩きながら、彼は背中からやじりをナイフで掘り出そうとしていました。エルフどもめ、いい矢 を作りやがる。深く刺さり、がっちりと食い込んでいやがる。打ち込まれたやじりはナヤの獣の骨から削りだしたものだろうかな。骨のカケラがボーラスによっ て堕落した血に浸されてジュウジュウと音を立てているさまを思い浮かべます。
戦争はサルカンにとって悪いほうに転びました。古竜の行方を捜そうと は思いませんでした。どこへ消えていったのやら。新米のプレインズウォーカーにマナの接続が切られたこともどうでもよくなりました。彼からマナが離れてい き、ドラゴンの制御もきかなくなり、ジャンドに戻る手段も無くなりました。
背中をえぐり、最後のやじりを取り出しました。立ち止まり、自分の手を見ました。骨のカケラではなく、削り取られた石が血に染まった手の中にありました。ボーラスへ忠誠を誓ったからか。これが俺の運命か。
瞬間、自分の目にやじりを突き刺したくなる衝動に駆られ、その考えは彼をくすくすと笑わせます。その笑いは次第に大笑いへと変わり、声がかすれるまで笑い続けました。

心 を保て。彼は自分に言い聞かせます。ボーラスの黒い影を空に見たような気がしましたが、理由はわかりませんでした。うだるような熱さのカルデラの縁まで歩 き寄ります。その火山のカルデラは、猫男に火と怒りを教えた場所でした。彼の眼下で溶岩が泡立ち、耐え難い熱さでブーツを通して足がチリチリと痛みまし た。低くなるってのはどういう気分なんだろうな。じわじわと赤熱するヘドロの中へ沈んでいくのは。

彼は大声で叫び、アラーラからプレインズウォークしていきました。



バントでは、ムビンの手術が行われます。ベッドの傍らには銀色の金属の液体が熱も無く泡立っています。
「わしは眠ってしまうのかい?」
「起きた頃にはきっと良くなっていますよ、そのときにご質問にお答えしましょう」癒し手は言います。金属を足の傷に流し込んでいるの見て、ムビンは絶句します。
「ロウクスのように難しいことは言えないが、なにかおかしな感じはしないかい?」見守るラフィークが話しかけます。
「もういいでしょう」「ほぼ終わりました。患者さんの邪魔をしてはいけませんよ、騎士長どの」
「お前さんも見てみろ」「金属がひとりでに形をとりだしている。こりゃあ驚きだ。枝分かれして、伸びて、作り出している......何かを。なんと言っていいかわからんが、きれいだ」
ムビンは体をきりきりと刺すような痛みを覚悟します。動脈を流れる痛みにうめきますが、それも収まります。
そのとき、ラフィークは紫色の斑点がムビンの体に広がっていくのを見ます。足から始まり、急速に全身に広がります。
「何か変だ」「エーテリウムが毒になっているようだ」「見えるだろう?早く切り離せ!」
軟膏使いは慌てて施療しますが、ムビンの体はビクンと跳ね、背中は弓なりに1回、2回と反り返りました。汗が滝のようにムビンの顔を流れ落ち、胸は激しく上下し、ゼイゼイと息が漏れます。
「なんとかしろ」ラフィークは言います。「あんたは彼を助けるんだ。ああアーシャ、俺はまた過ちを犯してしまいました。どうすればいいのですか」
「やれることはすべてやっています」癒し手は言います。「痛みを和らげる軟膏、少しばかりかじった魔法、感染症の薬、でも効果がないのです。この汚染に抗する術が無いのかも」ムビンのけいれんは収まりました。息も穏やかになります。「持ち直しました」
いや、まだだ。ラフィークは考えていました。「いつだって」「いつだって、俺は自分が正しいと思うことを考えてきた。古き友よ。俺はすべてを間違えてしまった」
ムビンの目が薄く開きます。「どうしたってんだ、古き友よ」ムビンはガラガラ声で言います。ラフィークはすばやくまばたきをします。瘤がムビンの喉にできていました。
「お前さんは良くなる。良くなるんだ」
「もちろんだとも」ムビンは言います。「すぐにダンスだってできるさ」
「無理はするな、今は休んでくれ」
「大丈夫さ」老ロウクスは笑います。紫色の斑点は顎にまで達していました。
「ムビン、すまない」「俺は何もかもを間違えてしまった」
「わしについてはそうじゃないさ、古き友よ」「あんたの徳は、ときにあんたの目をくらませてしまう。あんたが太陽の下にいる間は、それは見えてこない。あんたは一度たりとも――」ムビンは歯を食いしばり、黒い血の塊を吐きます。
ラフィークはすばやく彼の口をぬぐいました。彼の額の汗をぬぐいました。ムビンの目は閉じ、頭は下がり、そのまま意識を失いました。ムビンは二度と目覚めませんでした。

ラフィークは、大月桂樹の印章を授けられる英雄としてセレモニーの準備をしていました。ムビンの葬儀に何をしたのかすら、ぼんやりとしか思い出せませんでした。
自分の人生は正しいこと、名誉のためにあった。かいがいしく出立の準備をする従者のかたわら、ぼんやりとラフィークは考え込んでいました。運命の犠牲者となるのは運が尽きたときだ。思いもよらない出来事をたどり、目に見えない運命がもたらした悲劇がムビンの死なのだと。
壁を登ったり降りたりする蜘蛛をしばらく眺めていた後、彼はきびすを返し、会場へと歩いていきました。



アジャニは木の桶に柔布を押し込みました。洗剤と水が混ざり、粗い石の床は一面水浸しでした。ジャザルの寝床をごしごしと洗い、血の汚れをぬぐっていきます。くぼみは黒くなっていましたが、汚れが取れるまでアジャニは掃除をしていました。

「アジャニ? 入ってもいいかしら?」
ザリキの声に、アジャニは顔を上げることなく答えます。
「さあね。ここに入る価値があるかどうか、自分で考えたらどうだ」
ザリキは洞窟の入り口で、掃除をに励むアジャニを見ていました。
「あなたの言うとおりね。私、行くわ」
「ザリキ、待った。少し話したいこともある」
彼女は立ち止まります。が、アジャニの方へは向きませんでした。
「何」
「俺は出発する。今夜だ」
「どこへ?」ザリキは振り返ります。水に溶けた血が床の亀裂に流れ込んでいました。
「戻ってくるの?」
「言えない」
「この世界が......俺に意味があるのかどうかわからない。わからないんだ」
「そんな」
「俺は君を群れ長に指名する」
「えっ?」
「長老には会ってきた。最近の出来事が明るみになれば、今までのようには暮らせない。ジイさんたちは俺に群れを率いるよう言ってきたが、俺はその地位を君に譲りたい。頼まれてくれ」
「アジャニ、私――」
「誰かがこの群れを率いなければならない。ジャザルが目指したものを継ぐ誰かが。雲のナカティルとエルフを話合わせ、纏め上げる人物が。再び我々の間に入り込んでくる者が居ないように、結束を固める人物が必要なんだ。」
「それが、私?」
「そうだ。おかしな話に聞こえるだろうが、そうだな、正直に言おう。俺は君を殺そうとも思っていた」
ザリキは息を呑みます。
「すまない。だが俺は君に自分のしたことを理解させることに決めた。群れからはじき出されることのないように頼ってきた人だし、導いてきたもの、君を傷つけたものを君は見てきている。そんな過ちを犯す最後の一人であってほしい」
「それが罪滅ぼしだと?」
「それに近い」
ザリキは洞窟の天井を見つめます。
「ありがとう」
「お膳立てはすべてしておいた。行ってくれ」
彼女は口を開きますが、すぐに閉じます。最後に彼を見つめた後、ザリキは歩き去っていきました。

アジャニは一晩かけて床を掃除します。寝床の外へ桶を運び、岩棚の上から土に汚れた水を眼下のジャングルへと捨てました。

『Alara Unbroken』完

Bant, Alara
バント、アラーラ

アラーラの5つに分かたれた次元のひとつ、白と緑と青のマナだけがある世界がバントです。牧草地の広がる内陸平原大陸と周辺の島々からなる次元で、沿岸のヴァレロンとジェス、内陸のイーオス、トーパ、アクラサの5つの国があります。どの国もカーストと呼ばれる厳しい階級制度によって縛られており、人々はより高い身分を目指そうと日々努力し、信仰を深めています。

もちろん、落伍者や体制に反発するものもいないわけではありません。内陸三国に比べても沿岸2国は階級制度が比較的ゆるいのが特徴でもあります。

バントは人間が主で、その他サイのようなロウクス、鳥のようなエイヴン、そしてそれらの信仰を集める天使たちがすまう次元です。

Grixis, Alara
グリクシス、アラーラ
赤と黒と青のマナが存在する次元、グリクシス。古代アラーラから分かたれた5つの次元のうちのひとつで、かつてはヴィティアという王国がありました。ヴィティア国の聖騎士たちは屍術士たちとの戦いに明け暮れていましたが、大断裂の後、ヴィティアの最後の王セドリスの裏切りにより壊滅し、死者の国となりました。そうしてこの次元はヴィティア語で裏切りを意味する「グリクシス」と名づけられたのです。

地勢は汁気を帯びた腐った大地で、草木も生えず腐臭に満ちています。ここに住むものはゾンビか、悪魔か、怪物かです。わずかに生き残っている人間たちも、屍術を使いほかの者から生命エネルギー(ヴィス)を吸い取ることで活動しています。

Naya, Alara
ナヤ、アラーラ
アラーラの5つに分かたれた次元のひとつ、緑と赤と白のマナだけがある世界がナヤです。一面のジャングルに覆われたこの次元は、ナカティルと呼ばれる猫戦士、巨獣ガルガンチュアンを神と崇めるシーリア・エルフたち、そして人間の蛮族たちが棲んでいます。
次元の衝合がはじまると、《アニマのメイエル/Mayael the Anima(ALA)》はシーリア・エルフたちをまとめ、ガルガンチュアンをも用いて隣り合ったジャンドからの略奪者たちと交戦し、バントの平原へと進軍していきます。
ナヤは《黄金のたてがみのアジャニ/Ajani Goldmane(LRW)》の故郷でもあります。

The Maelstrom, Alara
大渦、アラーラ
大渦。アラーラが繋がりあったとき、その中心に生まれたマナの渦。人間など簡単に消滅させてしまう純エネルギーの塊であり、強大な魔法の連鎖を生み出すことも可能とする。アラーラに住むものの生命やマナがここに吸い込まれ、どんどんその規模を大きくしていっています。


Lethe Lake, Arkhos
忘却湖、アーコス

アーコスは、未来予知にある《涙の川/River of Tears(FUT)》に描かれている次元です。その内の奇妙な論理により、昼と夜が混ざり合う夢のような世界です。イラストを良く見て繊細な光の表現を楽しんでください。アーコスの忘却湖の近くでは、記憶が古い石の水路の流れのように乾いて消えていきます。
たいていの魔道士は精神破壊を避けるために湖には近寄りませんが、驚くべきことに好き好んで捜し求める者もいます。新たな魔法の創造するには、古い記憶をすべて洗い流すことが必要だと信じているのです。

「独創性の前提条件は、必要なときに知っていることを忘れる技術である。」
―アーサー・ケストラ

Pools of Becoming, Bolas's Meditation Realm
生達の池、ボーラスの瞑想領土

スコット・マクゴウ著のAssassin's Blade、Emperor's Fist、Champion's Trialには、「瞑想次元」とだけ書かれた不思議な次元が登場します。そこに居る者の思考や能力を反映して常に地理が変化する、超現実的な次元となっていて、とある恐ろしく、神に等しい力を持つドラゴン(ニでボのつくあの人です)が、マダラの皇帝と名乗り、助言を求める者たちと会見をする場所として使っていました。《ニコル・ボーラス/Nicol Bolas(TSB)》が《Tetsuo Umezawa(LEG)》と戦い、皇帝の座を追われて長い年月が経っていますが、かのドラゴンはまだこの次元に来ることがあるのかもしれません。

魔力的な能力に応じて、生達の池はあふれんばかりです。それを御して役立たせるには相当熟達しないといけませんが。
プレインズウォーカーなら、流動的な可能性に形を与え、他の次元でのみ可能な効果さえも行うことができるかもしれません。

Academy at Tolaria West, Dominaria
ドミナリアにあるエローナ大陸から西、胡椒海に浮かぶ島々のひとつです。かつての《トレイリアのアカデミー/Tolarian Academy(USG)》にちなんで、ファイレクシア侵攻の300年後にここに魔法を研究するアカデミーが建設されました。時のらせんにおける大修復の 後、《西風の魔道士リネッサ/Linessa, Zephyr Mage(FUT)》もこのメンバーとなりました。

Isle of Vesuva, Dominaria

Krosa, Dominaria
ドミナリアの大侵攻後のオタリア大陸にある森林地帯。ケンタウルス、昆虫人間のナントゥーコ、人間のドルイドたち、そして巨大な獣たちが棲んでいます。ドミナリアの森にしては珍しく、エルフがいない森でもあります。エルフらは大陸の南部の森に居ます。

クローサの森は陰謀団の狩場でもあり、密猟者たちは獣たちを捕らえて闘技場での見世物に使っていました。物語のなかでクローサは《陰謀団の総帥/Cabal Patriarch(ODY)》によって壊滅させられます。

蛮族からドルイドとなったカマールはクローサの森に住むようになり、ミラーリを森に安置しました。しかしその力は大地に及び、森の動物たちを凶暴化させ、住民を変容させてしまいました。カローナの大災害により、森からマナが失われ、木々は枯れてしまいましたがドルイドたちはそこに残って森を復活させようと努力しています。それらのドルイドのなかには《クローサの拳バルー/Baru, Fist of Krosa(FUT)》やZydらが含まれています。

Llanowar, Dominaria
ラノワールはドミナリアでも大きな大陸であるエローナの南部、ベナリアの南東に位置する、最大幅1000マイル(1609キロ)の広大な森林地帯です。この森は排他的で荒々しいエルフたちの住居であり、また《レッドウッド・ツリーフォーク/Redwood Treefolk(POR)》や《アボロス/Aboroth(WTH)》などの精霊が居ることでも知られています。《猫族の戦士ミリー/Mirri, Cat Warrior(10E)》が一時期故郷としていた場所でもあり、《ラノワールの使者ロフェロス/Rofellos, Llanowar Emissary(UDS)》は言うまでもありません。

広大な森林はいくつかの地区にわかれ、7つのエルフヘイムが統治しています。各エルフヘイム間は協調もしますが、ときには争いが起こることもあります。シャノーディンの森とはかなりの隔たりがありますが、気楽な《シャノーディンのドライアド/Shanodin Dryads(7ED)》は時折ラノワールを訪れたりもしており、エルフたちに敬意をもって迎えられます。

氷河期以降、薪を求めて森に来る侵入者たちをエルフたちは撃退し続け、自らの神秘主義と保守的な社会を守り抜いてきました。ハーフ・エルフのプレインズウォーカー、フレイアリーズやその信奉者である鉄葉の騎士団の助けもあり、厳しい時代も生き残ってきました。現在ラノワールの守り主は《マローの魔術師モリモ/Molimo, Maro-Sorcerer(INV)》となっています。

インベイジョンが始まると、《葉の王エラダムリー/Eladamri, Lord of Leaves(TMP)》の旗の下にエルフたちは団結し、絶望的な大戦争に向かうことになります。

Otaria, Dominaria
ファイレクシア軍の大侵攻後の物語、オデッセイ・ブロックとオンスロート・ブロックの舞台がオタリア大陸です。描かれているのは北からボールシャン湾を俯瞰した図で、光り輝いている建築物はカバル・シティであると断定できます。

ドミナリア南半球にあるオタリア大陸は、比較的大侵攻の爪跡も浅く、一世紀が過ぎる頃には復興の兆しを見せ始めました。しかしそこには平和はなく、陰謀団による闘技場のショーや文字通り水面下で行われているセファリッドの陰謀、そして願いを叶えるアーティファクト、ミラーリをめぐる争いの物語が展開されることになります。


The Eon Fog, Equilor
永劫の霧、エクィロー

ウルザはかつてエクィローについてこう語っています。

「古き名、もっとも旧き名だ。もっとも遠き次元、時の果てにある次元だ。」
―リン・アベイ「プレインズウォーカー」

エクィローはおよそ考えうるよりも古い次元で、ウルザですら、人生において4回目の千年紀にそれを発見したとき、自らが生まれたばかりの子犬のように思えたほどです。
その広漠さは時間すら磨り減るように感じ、最後には侵食された岩山が灰色の霧に包まれているのを目にします。この次元のすべてのものが進化や変化を記録されているはるか昔に終えているようにも感じられます。エクィローは凍り付いてもいませんし、死に絶えてもいません。ただ、完了しているのです。時間を超えて旅をした世界がそこにあります。
久遠の闇を旅するプレインズウォーカーにとっては、この世界の神秘は興味をそそられることでしょう。

The Ather Flues, Iquatana
霊気筒、イクァターナ

イクァターナは空気のほとんどが純粋な霊気でできています。霊気は奇妙な影響を生態系に与え、生物はゆがみ、振動して他の有機体に変容します。世界の地面は煙突と穴だらけで、そこからはプラズマ様の霊気が噴出し、夢のような変容しやすい生物たちが舞っています。

ここを訪れるプレインズウォーカーは強力な召喚を試みたり、霊気筒の上に浮かぶ《ナルコメーバ/Narcomoeba(FUT)》を作り出した知性あるイクァティを調べたりしています。《ナルコメーバ/Narcomoeba(FUT)》は過去のなんらかの事件で切り離されたイクァティの記憶を収集するために作られたと言われています。

Turri Island, Ir
ターリ島、アー

アーの見晴らしの利かない次元に、謎の島ターリ島があります。荒々しい波に削られた岩だらけの島で、山が多く、粗く削られた岩の砦のある島です。《フォモーリの遊牧の民/Fomori Nomad(FUT)》で知られるフォモーリたちの故郷であり、彼ら野蛮な巨人たちは、自分たちの領域に何びとも近づけさせることはありません。この島は巨人や雲に手が届くような巨大な獣を召喚することがたやすいと言われているため、プレインズウォーカーたちは危険を承知でこの島へ行きたがります。

Skybreen, Kaldheim
スカイブリーン、カルドハイム

スカイブリーンは、カルドハイムの次元の吹雪に閉ざされた山々で、ひ弱なものが行ける場所ではありません。ひどい風は肌を切り裂き、極限の寒さは血も凍り、魔法すら抑制します。研いだカミソリのような氷床は旅人を切り刻み、絶え間ない吹雪で断崖を見えなくさせます。そこに暮らす蛮族たちはそのもてなし方と対話の仕方のために知られていません。彼らは外科手術と外交交渉の両方を斧で行います。

Goldmeadow, Lorwyn
ゴールドメドウ、ローウィン

小村とその周辺の平原は、金の太陽と緑の草原という完璧な調和を成しています。そしてここはスプリングジャックの天国であることは誰もが知っています。キスキンのスプリングジャック飼いはこの美しくうねる牧草地がボガートたちの興味を引き、スプリングジャックを幾度となく盗まれているのを黙認しています。しかしキンズベイルやクローバーデルの騎士たちは忠実で力強いゴールドメドウのスプリングジャックを評価しています。

Warren Mahy氏は映画「ロード・オブ・ザ・リング」でも有名なWETAのデザイナー兼彫刻家で、ローウィン~シャドウムーアを通して数々の御伽話風味のカードイラストを描いています。

The Great Forest, Lorwyn
偉大なる森、ローウィン

ローウィンの大森林は果てしなく続くかと思えるほどのがっしりした樫の木やそのほかの幹の太い木々が大きく育っている森で、ツリーフォークが生まれるところでもあります。
もっとも有名な戦士かつシャーマンである《包囲の搭、ドラン/Doran, the Siege Tower(LRW)》はここの生まれであり、他にも大きな樫やナナカマドがここを歩いています。

もしあなたが完璧にじっとしていられるなら、ツリーフォークたちが噂話をすることを聞くことが出来るかもしれません。居続けることができたなら、苗木を託され別の場所へ植えて来ることを頼まれるかもしれません。

Fields of Summer, Moag
夏の平原、モアグ

リン・アベイの小説「Planeswalker」によると、モアグは「本当に快適な世界であり、豊饒な大地、温和な気候の広々とした刈草地、豊富で力強い文化が宿る世界」とあります。
ウルザと旅の仲間であるザンチャはここで平和に数十年を過ごしました。自然の回復力は右に並ぶものが無いでしょう。

Feeding Grounds, Muraganda
餌場、ムラガンダ

ムラガンダの次元を知ることが出来るカードは2枚あります。《ムラガンダの印刻/Muraganda Petroglyphs(FUT)》と《放漫トカゲ/Imperiosaur(FUT)》です。

「古き強力な力が谷を乗っ取ったのです。かつての住人には同情しますが、大地そのもののためには喜ばしいことです。」
―ムラガンダのドルイド、オランティ

ムラガンダの湿気の多い原始のジャングルは、大型は虫類の生息には適しているように思われます。あなたは本能のままに、腹の底から来る衝動で赤と緑の魔法が使いやすいことは当然のように感じることでしょう。ですが、巨大さと力がこの次元の住民に対する自然界の選択肢であることも承知しておかなければなりません。

Sea of Sand, Rabiah
砂の海、(ラバイア)

砂の海はラバイア(レイビア)のどこかにある、太陽の照りつける果て無き砂漠です。あなたが青々と豊かなオアシスにたどり着くか、ゆらゆらと揺れる蜃気楼を見ながら1日中とぼとぼ歩き続けることになるかは神のみぞ知るというやつです。
ラバイア(レイビア)はArabian Nightsエキスパンションの設定世界であり、たくさんの次元そのものが物語となっています。信頼の置ける羅針盤を用意すること、さもなくば白く干からびた白骨と成り果てるか、無限の砂に飲まれる可能性が高いでしょう。

Agyrem, Ravnica
アギレム、ラヴニカ

別名《幽霊街/Ghost Quarter(DIS)》とも呼ばれています。

The Hippodrome, Segovia
ヒッポドローム、セゴビア

なぜ《セゴビアの大怪魚/Segovian Leviathan(6ED)》がたった3/3で海魔の名をつけられたのかという謎がついに解かれました。
答えはセゴビアがミニチュアの次元であるということです。多元宇宙の基本的なサイズの100分の1ほどで、そこでのリバイアサンはドミナリアの像程度なのです。

二輪戦車のレースをしている闘技場、ヒッポドロームは小さなセゴビア人たちが小さな周回路ぞいに集まっているところを拡大している様子が描かれています。この小人たちがこのような野蛮なスポーツを楽しんでいることをうっかり忘れそうになってしまいます。
ここへプレインズウォークするなら、住民と同じように縮むことは予想しておくべきです。

比較するものなしに「小ささ」を表現するのはたいへん難しいことです。セゴビアのものはすべて小さくて、比べられる巨大なものが無いのです。スティーヴ・アーガイル氏は中央にピントをあわせ、外周をぼやけさせることで、ミニチュアを見ているかのような効果を生み出しています。

Eloren Wilds, Shandalar
エローレン荒原、シャンダラー

シャンダラーの次元は、場所がひとつところに決まっているのではなく、久遠の闇を不規則にあてもなくさまよう次元です。シャンダラーはマナが豊富であり、エローレンの未開地のように野生の花や植物が育ちすぎている土地を支配することを、プレインズウォーカーたちは願ってやみません。それらは無害に見えますが、エローレンの未開地は呪文を唱える者たちにとっての脅威を隠し持っています。魔力を持ったとげのツタが人間大の生き物など楽々と締め上げ、永遠に「失われて」しまうのです。

The Dark Barony, Ulgrotha
暗き男爵領、ウルグローサ

ウルグローサの次元で、センギア男爵として知られる吸血鬼は、自らの所領として常闇の村を支配しています。それが暗き男爵領です。その象徴でもある《Castle Sengir》は霞の中にその様相をうかがうことが出来ます。

イラストはホームランドでセンギア一家を手がけたピート・ヴェンタースが担当。城のバルコニーから男爵領を見下ろす絵を仕上げています。もしあなたが狂気の世界の住人で、力による精神破壊や布告を兼ね備えた自分自身こそが男爵領の主であると思い込んでいるのなら、この世界を訪れてもいいでしょう。

Immersturm, Valla
イマースターム、ヴァラ

イマースタームは、ヴァラという次元にある、混沌と稲妻が猛威を振るい、戦乱が絶えない地です。戦闘団は雷鳴の怒りとともに押し寄せ、退き、雷雲に沿ってうねる征服者の剣戟の響きと断末魔が、永遠に続いている世界です。
あなたは召喚したクリーチャーの変化に驚くことでしょう。血に飢えた叫びは霊気のうねりと同調し、あなたの信頼置ける軍団はヴァラの地の戦士の魂を受け継ぎます。

レイモンド・スワンランド氏は、《ザンティッドの大群/Xantid Swarm(SCG)》の虫を数えたように、「がんばって描いたで賞」を狙っているのかもしれません。この大乱戦の様子、何人いるか数えてみませんか?

Naar Isle, Wildfire
ナー島、ワイルドファイア

《ナー島の領主/Shah of Naar Isle(FUT)》で、溶岩の海に浮かぶ真鍮の都市の前にたたずむイフリートを目にしているはずです。
そして今、あなたは炎の海に沈んだワイルドファイアそのものに行くことができます。嬉しいでしょう? そこでイフリートとジンの教団であるエンバーワイルドに会い、この次元の周期的な炎の波から身を守る術を学ぶべきでしょう。

まじめな話、まったり休日を楽しみたいならこんな次元に来てはいけません。また次元に学ぶべきものはあまり無いでしょう。ワイルドファイアでできる面白いことといったら、あなたのライフ総量を増やしておいて、自分の敵のプレインズウォーカーをここに追い込み、かの領主の炎の気まぐれに苦しむのを見て楽しむことくらいでしょう。

Murasa, Zendikar
ムラーサ、ゼンディカー

ついに我々は探検する活気に満ちた次元、ゼンディカーに来ました。

これから始まるプレビューで語られていくでしょうから、今はまだ多くを語れません。ゼンディカーのスタイルガイドはすごく分厚いのです。今のところは、ムラーサはゼンディカーにおける大陸の名前、とだけ伝えておいて、あとはイラストが雄弁に語ってくれることでしょう。

ムラーサ大陸は石柱が立ち並ぶ地で、険しい岩山とジャングルの峡谷で成り立っています。そこはタジュール・エルフたちのテリトリーであり、彼らは巨大なジャディ樹を渡っていくすべを持っています。

Tazeem, Zendikar
タジーム、ゼンディカー

ゼンディカーのコンセプト・アーティストの一人、ヴィンセント・プロース氏によるこの41枚目の次元カードは日本以外で行われるPLANECHASEリリースイベント用に用意されたプロモーションカードのイラストです。PLANECHASEの製品には含まれていません。

タジーム大陸は、面昌体の遺跡が数多くあり、平原から巨森、オラン=リーフ、ウマーラ河など変化に富んだ地です。上空には宙に浮く面昌体の遺跡、エメリアがあります。

    * Sanctum of Serra/セラの聖域
かつてセラが作り出した天使たちの次元。厳格かつ規律ある世界だったが、ウルザがファイレクシア探索で傷ついた体と精神を癒すために訪れ、そのためにファイレクシア軍の襲撃を受けることとなり、次元崩壊の危機に陥る。次元ごとウルザはパワー・ストーン内に封じ込め、そのエネルギーをウェザーライトの動力源とした。
ウルザズ・サーガの平地4種は、この聖域の風景を描いたものである。

    * Panopticon/パノプティコン
《ダークスティールの城塞/Darksteel Citadel(DST)》。《メムナーク/Memnarch(DST)》が鎮座するミラディン内部の地価空洞にある城砦である。絶対に破壊できないダークスティール鉱でできている。

    * Stronghold Furnace/要塞の灼熱洞
《ラースの灼熱洞/Furnace of Rath(TMP)》。ラースの要塞、かつてはヴォルラスの居城でありクロウヴァクスの本拠地にもなった。アポカリプスでは次元被覆によりドミナリアに姿を現す。ラースにあったころの要塞は、火山に作られていることもあり、そのエネルギーを地下の灼熱同から得ている。そこはすさまじいまでの赤マナ・・・つまり溶岩に満ちた大空洞である。地下から要塞に侵入できる唯一の道でもあり、ウェザーライト号はオアリムの守りを得てこの灼熱地獄を突破した。

    * Raven's Run/レイヴンの地
シャドウムーアにおける闇の森。木の精霊たちが集う森であり、凶暴な狼の群れが徘徊することもあって、おいそれと近づける場所ではない。

    * The Fourth Sphere/第4球層
人工の機械次元であるファイレクシアは、9層からなる球体の次元である。その4番目にあたる第4球層には、ファイレクシア人を作り出す処理施設があり、人工の大部分がここに集中している。また、Phyrexian portalが設置されており、ドミナリアへの侵攻拠点としても機能していた。

<strong> 水面院/Minamo</strong>
神滝湖と神滝の周辺に浮く魔術師たちの学院、それが水面院です。神の乱の一番手の場所でもあります。
水面院の上空には空民の首都オオタワラ(朧)があり、ムーンフォークたちは院の支配と情報交換のためにしばしば院に訪れています。
院は魔術のほかにも弓術を修めています。学院長は壱岐密、《水面院の師範、密/Hisoka, Minamo Sensei(CHK)》であり、代行は《巻物の君、あざみ/Azami, Lady of Scrolls(CHK)》です。

氷山の誓いの一員であったコボウを殺害した復讐として、碑出告率いる山伏や鬼たちは院を襲撃しました。守り竜である《潮の星、京河/Keiga, the Tide Star(CHK)》も殺され、院は破壊されます。抵抗するものは皆殺しにされ、幾人かは逃れることができましたが、密師範は碑出告に首を切られ食われてしまいます。

その後、大口縄および混沌なる全てを食らう鬼との戦いで院は完全に破壊されてしまいます。その後の運命は誰も知りません。

<strong> 霜剣山/Sokenzan</strong>
霜剣山は神河でもっとも広大な山脈地帯です。悪鬼、山伏のシャーマン、山賊や浪人が棲み、《山賊の頭、伍堂/Godo, Bandit Warlord(CHK)》が治めています。中央には《氷の橋、天戸/Tendo Ice Bridge(BOK)》があり、雪女たちが集っています。

《血に染まりし城砦、真火/Shinka, the Bloodsoaked Keep(CHK)》も山脈の一角にあり、そこでは《無情の碑出告/Heartless Hidetsugu(BOK)》とその大化け物たちが鬼を召喚しようとしています。

霜剣山の守り竜は《降る星、流星/Ryusei, the Falling Star(CHK)》です。

<strong> Agyrem</strong>
ラヴニカの特定の区域の名称。ディミーア家管理。

某wikiから抜粋。~ディセンションの出来事の後、新しいギルドパクトが交わされます。が、そこにディミーア家の名前はありません。しかしながら、Agyrem地区はラヴニカの中にあり、《秘密の王、ザデック/Szadek, Lord of Secrets(RAV)》の支配下にあります。それは、ギルドがまだ存続しており、これまで以上に強力になることを意味しています。~

http://www.wizards.com/magic/magazine/article.aspx?x=mtg/daily/stf/42

(略)アラーラの断片ブロックのフレイバー・テキストや、「A Planeswalker's Guide to Alara」「Savor the Flavor」「Magic Arcana」などのコラムを読んでいる人にはすぐにわかる問題を用意したので、是非解いていってほしい!(訳注:今回は答えだけ書きます)

1、コアトル
コアトルは、中央アメリカはアステカで現在でも話されているナワトル語からとられている。では「coatl」という英語はどういう意味だろうか?これは、「海蛇/Serpent」という意味なんだ。もっともD&Dなんかは翼の生えた大蛇がおなじみだから、間違えてしまう人も多いと思う。メソアメリカンの神様、ケツァルカトルから連想しているんじゃないかな?アラーラでのコアトルは、緑と青のマナの色に結びついた、ナヤの大蛇なんだ。

2、カターリ
カターリは、死の蔓延するグリクシスにおいて、死肉をあさるハゲタカのなりをした鳥人間の種族だ。ギリシャ語の「katharos」からとられて命名されているんだが、これはなんという意味だろうか?答えは「純粋」という意味なんだ。動詞の「浄化」などにも結びついている言葉が、ハゲタカ人間の種族名だなんておかしいと思うだろう?でも、「A Planeswalker's Guide to Alara」の読者なら、グリクシスでは掃除屋としての役割を担っていることはよくご存知のはずだ。

"死肉をあさるエイヴンに似たハゲタカ人間...ハゲタカの頭を持ち、黒い翼を持つ、しかし手足は人間のもの。この種族はグリクシスの空を円を描いて飛び、屍術士に取られてしまう前の死体がたくさん残っている場所を探し回っている。ふつうのカターリは貪欲で、キーキー鳴く臆病な奴である。死体から不運を取り除くと信じられているゆえに、死者の王や屍術士からは見逃されている。より良い死後の世界を熱心に望むがために信仰されている宗教が、カターリの行動から「Skive」と呼ばれている。この死肉漁りの性癖とこの宗教は密接に関係していて、彼らは死者の骨から肉を落とすことを、故人を偲ぶための唯一の適切な儀礼であり、死後の世界で魂が解放される唯一の手段なのだと信じているのだ。"

カターリについてのもうひとつウンチクを。Cathartesというのは南北アメリカで見受けられるハゲタカの種類にも使われている。もともと同じ単語からきたものだけれども、文化や信仰まで作り上げて世界を構築してしまうんだから面白いことじゃないか!

3、アラーラの生物
《不治のオーガ/Incurable Ogre(ALA)》で見受けられるIncurableとは、グリクシスのオーガが悩まされている変異病のことだ。
レオトーとはバントにいるライオン様の乗り物だ。
ラネットはナヤのガルガンチュアンの一種。
トリナクスはジャンドのトカゲ様の獰猛な肉食動物。
大梟はエスパーの獰猛な肉食鳥のことだ。

4、バントの階級
印章階級は、後援者から印章を授けられた騎士や勇士たちで構成されている。
祝福階級は、階級制度を管理する貴族だ。
目明き階級は、聖職者、神秘術士、予言者からなる高位の階級。
石膏階級は、バントの大多数の市民であり、下位であるがすべての階級から名誉を受ける人々だ。
不義者、という呼び名は、バントでも数少ない法律を破るもので、自ら生まれた階級を拒絶する者たちを呼ぶ総称だ。(マナバーン2009にあるモルタル階級は、石膏階級でした。調査不足をお詫びします。)

5、エーテリウム
エーテリウムとは、エスパーにおいて傷を受ける生身から完璧になるために使われているエーテルを注入された金属だ。エーテリウムを発明したのは誰か?それは燦爛たるスフィンクスのクルーシウス、今日では「狂気のクルーシウス」と揶揄される者だ。「A Planeswalker's Guide to Alara」を見てみよう。

"スフィンクスのクルーシウスは、エスパーの歴史に多大な影響をもたらしたが、また一方で物議をかもしている人物である。エスパー人は、この次元にエーテリウムをもたらしたかの天才を、何年も前に死んだか姿をくらましたのだと悪口を言っているのだ。我々の研究者の所見では、彼はプレインズウォーカーとなったのではないかと見ている。そしてさらには、エスパーの窮状を理解したのではないか――正そうと試みたのではないか――とも考えている。数十年前、クルーシウスは魔法合金であるエーテリウムを考案し、エスパーに住まう生けるものにそれらを注入する計画を実行に移した。これを彼は「気高き行い」と呼んでいた。文献によれば、気高き行いは定命である肉体の限界を克服する手段として考案されたとある。だがクルーシウスは実際はエスパーに耐えている二つの要素、赤と緑のマナを知っていたのかもしれない。たしかに、エーテリウム内部のエーテルは、かつては次元に満ちており、エスパーをほかの次元断片と再結合を可能とするように用意されたものだったのかもしれない。"

エーテリウムは、テゼレットがプレインズウォーカーになるずっと前に発明されたものなんだ。《覇者シャルム/Sharuum the Hegemon(ALA)》は、エスパーの支配者であり賢明なスフィンクスだ。彼女はクルーシウス失踪の裏側の真相を知っている数少ない人物のうちの一人なんだ。また、パランディウスというのはエスパーの都市のことで、人の名前じゃない。ヴェンセールも素晴らしいアーティファクト使いだけども、エスパーとは関係ないってことも断言しておくよ。

6、オベリスク
オベリスクというのは、古代エジプトでよく見受けられる建築物で、高く、細い石の柱のことだ。小説「Alara Unbroken」では、何の目的でニコル・ボーラスはオベリスクを置いたのだろう?これは、マナを大渦に集めるためなんだ。ニコル・ボーラスがアラーラで企てた計画で、大規模なマナの嵐へ断片のマナを吸い上げるために、アラーラにもともと置かれていたオベリスクのいくつかを利用し、マナを大渦と向けていたんだ。アラーラにある多くのオベリスクは断片にわかれる以前から建っていて、おそらくは古代アラーラの時代に次元のマナを集約するために使われていたのだろう。もともとはすべての色のマナを集約できたであろう記念碑は、断片に分かたれた今日では、隣接3色の色のマナを集められるだけだ。最も古く、そして最も強力なオベリスクの多くは、降り積もった堆積物に埋もれるか新しい建物がその上に建てられるかして、時と共に忘れ去られるか隠匿されていったんだ。

7、ドラゴンの伝承
《火山流埋め/Volcanic Submersion(ALA)》のフレイバー・テキストは、そのものズバリを最後の行で言ってないけれど、ジャンドのドラゴンの生命の最期に起きる現象に関係しているんだ。

"竜の死は、その生とほとんど同じぐらいに恐れられている。 老いて死にゆく竜は自身を火口へと投げ、ものすごい大激動と広大な範囲の災害をもたらすからだ。"

このドラゴンの命の最期における自暴自棄な、暴力的な行為を「炎の叫び」と言うんだ。「A Planeswalker's Guide to Alara」に書かれていることをレイ・ナカザワも言及している。

"ドラゴンは穏やかには死にません。年老いたドラゴンがその縄張りを守ることができないほど弱ったとき、それは急に外に出てくるのです。不安定な火山をみつけて、高空から火口めがけて真っ逆さまに、叫びながらマグマへ死のダイブを行います。この自殺的な儀式は「炎の叫び」と呼ばれています。その結果による紅蓮地獄は数マイルにおよびますし、火山は時々噴火さえします。低地の部族は火山の噴火がすべてドラゴンが死んだために起こるのだと信じています。"

8、アラーラの地名
血の広間は、広い、サングライトが豊富な洞窟で、ジャンドの人間の戦士の部族が聖地とする場所である。そしてしばしば植えたスライムはウーズが巣くっている。
ジェスはバントの沿岸、自由な気質の船乗りの島国だ。
ケデレクトはアンデッドが棲まう死滅都市で、グリクシスの油ぎった海に近い半分水没した大邸宅だ。
ヴェクティスはエスパーにいる強化された人間が住んでいる、浮揚するエーテリウムの尖塔を中心に広がっている都市だ。
サシーリウム(ラテン語で「神に捧げられた屋根の無い場所」)は、ジャングルにおける生ける大聖堂、ナヤのエルフの文化の中心であり、《アニマのメイエル/Mayael the Anima(ALA)》の在所なんだ。

9、ロウクス
ロウクスは屈強なサイ人間で、誇り高く信心深い種族だ。アラーラの前に出てきたのはいつだっけ?《ロウクス/Rhox(NEM)》はもともとネメシスに入っていた。これはラースの次元の話だね。ネメシス版は恐竜みたいな鱗で覆われて角の生えた獣が描かれているけど、10版のほうの絵は完璧に人間型だ。大規模クリーチャー・タイプ更新のときに《ロウクス/Rhox(NEM)》はサイ・ビーストに改められていたんだけど、アラーラにおいては知性ある種族として登場している。


10、ボーラスの手下
アラーラの5つの次元にいるものたちは、ニコル・ボーラスの目となり耳となり働き、そして気づかぬうちに彼の目的を進めることに協力していたんだ。

《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary(CON)》とは、バント全域の過去の遺跡を調査する旅をしている騎士団で、そのなかでも有名なのは《数多のラフィーク/Rafiq of the Many(ALA)》だ。この集団はボーラスの手下じゃない。
バントにおけるボーラスのおもな手下は、別の騎士団、天望騎士団なんだ。ジャンドの精霊術士《ラッカ・マー/Rakka Mar(CON)》やバントの野望ある商人《成金、グヮファ・ハジード/Gwafa Hazid, Profiteer(CON)》にも働きかけているし、もちろん《マルフェゴール/Malfegor(CON)》は彼の右腕としてグリクシスの軍隊を率いている。
「裂け眼の集い」というのは、《骨の粉砕/Bone Splinters(ALA)》のフレイバーに出てきているグリクシスの預言者の魔女たちのことだ。彼女たちはアラーラのスタイルガイドに載っていたんだけど、「A Planeswalker's Guide to Alara」には漏れてしまった。この魔女たちはグリクシスの未来は美味なる命のエネルギーに満ち溢れるという噂を流して、屍術士や死者の王が《衝合/Conflux(CON)》後に他の断片へ攻め入る士気をあげる役目を担って、ボーラスに使えているんだ。
1、マリガンは同時に行う。

プレイヤーAが先手を選択。お互いに手札を見る
プレイヤーA「マリガンします」
プレイヤーB「じゃあマリガンします」

お互いマリガンをする。

プレイヤーA「・・・マリガンします」
プレイヤーB「キープで」

プレイヤーAマリガン。

プレイヤーA「キープで」
プレイヤーB「やっぱりマリガンしたかったけど・・・やり直せないんだよねー」

2、用語の変更

2-1、「場」→「戦場」

「場に出す/put into play」は「戦場に出す/enter the battlefield」となる。

2-2、「唱える、プレイ、起動」
呪文は「唱える/cast」
土地やカードは「プレイする/play」
能力は「起動する/activate」

単に言い回しが変わっただけとは言え、言葉が完全に異なったことでの明確化は便利になることでしょう。

2-3「追放する/exile」と「追放領域」
ゲームから取り除く→追放する と変化し、ゲーム外領域→追放領域 となりました。これによってゲーム外領域とサイドボードが一緒に扱われていたのが個別に扱われることとなり、「願い」で持ってこれるカードがサイドボードや自分のコレクションに限定されることになります(オラクルによってはどう転ぶかはわかりませんが)。

2-4「終了ステップの開始時」
これまで混乱のもとだった「ターン終了時に」と「ターン終了時まで」の問題を解決するために、「ターン終了時に」→「終了ステップの開始時に」という言い回しに変更します。


《ラクドスのギルド魔道士》の2番目の能力は、こう変更されます。
3R:速攻を持つ赤の2/1のゴブリン・クリーチャー・トークンを1体戦場に出す。次の終了ステップの開始時に、それを追放する。

機能とタイミングの明確化として歓迎します。

3、マナ・バーンを廃止。マナ・プールは各ステップ終了時に空になる。

この変更によってマナを多く生み出すカードは強化されることになるでしょう。マナが余ることによるデメリットが事実上無くなるので。
逆に、自発的にマナ・バーンを起こしてライフを調整するというプレイングは不可能になります。このことによっても強くなったり使い勝手が悪くなったりするカードが多々あります。

4、トークンのオーナーは、それが戦場に出る段階でコントロールしていたプレイヤーである。

《狩り立てられたラマスー/Hunted Lammasu(RAV)》などで出てきたトークンは、相手がオーナーとなります。《刻印/Brand(USG)》でそれを取り戻したりすることはできなくなり、《歪んだ世界/Warp World(10E)》でそれをどうこうするのは対戦相手となります。

5、戦闘ダメージはスタックを使わない。

今回の変更でも大きなもののひとつが戦闘ダメージについての変更でしょう。
もとの記事でも大きく取り上げられていますから、抜粋します。
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/feature/42a
"ブロック・クリーチャー指定ステップにおいてあるクリーチャーが複数のクリーチャーにブロックされた場合、攻撃プレイヤーはただちに、その攻撃クリー チャーがどのブロック・クリーチャーからダメージを割り振るかの順番を宣言します。実際にダメージを割り振る段階で、2番目のクリーチャーにダメージを割 り振るためには、1番目のクリーチャーに致死ダメージを割り振る必要があります。これは、3番目以降も同様です。これで、複雑な戦闘の状況でも、その戦闘 でもっともダメージを与えられる危険を負っているクリーチャーをあらかじめ知ることができるでしょう。"

要するに、これまで「戦闘ダメージをスタックに乗せてからインスタントを使う」ということができなくなりました。そのトリックが使える最後のチャンスは、戦闘ダメージが与えられる直前、ブロック・クリーチャー指定ステップ中になります。

先制攻撃、二段攻撃とのタイミングルールは紹介されていませんが、基本的には「クリーチャー全員がトランプルを持っていて、しかも本当のトランプルを持っていない限り余ったダメージをプレイヤーに割り振ることは出来ない」というのがわかりやすいかと思います。

ブロック・クリーチャー指定ステップでは、以下のことがおこわなれます。
1、防御側プレイヤーは、攻撃クリーチャーに対してどれを自分のクリーチャーでブロックするかを決めます。
2、攻撃側プレイヤーは、1体の攻撃クリーチャーに複数のブロッカーがいる場合、そのクリーチャーらがダメージを受ける順番を決めます。

これらが行われたら、攻撃側プレイヤーが優先権を得ます。

戦闘ダメージ・ステップでは、1番目のブロッカーから順にダメージを割り振ります。1番目のブロッカーに致死ダメージを割り振ったら、2番目のブロッカーにダメージを割り振るか、1番目のブロッカーにさらに戦闘ダメージを割り振るかを選択できます。

6、接死は常在型となり、累積しない。どの順番のブロッカーにもダメージを割り振ることができる。

誘発型であった接死は常在型となります。これによって接死の数だけ破壊されることはなくなり、また戦闘ダメージでの破壊と接死の破壊で2回再生する必要もなくなりました。ダメージを与えられれば必ず破壊されます。それが致死ダメージであるかは問いません。1回再生すれば、そのクリーチャーを破壊から救うことが出来ます。

このルールだと、先の擬似トランプル・戦闘ルールで1番目のブロッカーしか殺せない事態が起こりうるため、接死にはさらに「どの順番のブロッカーにもダメージを割り振れる」という能力が追加されました。

7、絆魂は常在型となり、累積しない。ダメージと同時にライフを得る。

自分のライフが2しかないときに絆魂もちのブロッカーでブロックしても、ライフを回復するタイミングがなく負けになってしまうことはよくあり、初心者の混乱のもとでした。これからは絆魂は常在型となり、累積することはありません。そして、ダメージと同時にライフが回復することになりました。
さらに、誘発型のライフ獲得能力を持っていたクリーチャーが絆魂になっているもおんは、元に戻されます。


基本的には以上ですが、オラクル、および総合ルールにはこれまでにない大きな変更がはいることになります。古いカードを扱ううえで、訂正がはいったのかどうかは常に気にするようにしてください。
機能変更

《バルデュヴィアの大将軍/Balduvian Warlord(CSP)》& 《False Orders》
 これらのカードは《瞬間群葉/Flash Foliage(DIS)》や《霊気の原形質/AEtherplasm(GPT)》が場にブロックしているクリーチャーを出す状態に対応できなかった。
 これに対応するためにテキストを調整した。
 a)これらが場に出てくるブロックしている状態のクリーチャーを対象にとる場合。
 b)これらがクリーチャーをブロックしているクリーチャーを対象にとり、場に出てきたブロックしているクリーチャーが同じクリーチャーをブロックする場合。
 (おかしなことを言っているなと感じるなら、君の脳は正常だ。どうか無かったことにしてそのまま生活してほしい)

《バルデュヴィアの大将軍》の新テキスト:
{T}:ブロック・クリーチャー1体を対象とし、それを戦闘から取り除く。それがブロックしていたクリーチャーのうち、この戦闘で別のクリーチャーによってまだブロックされた状態になっていないものは、ブロックされていない状態になる。その後、それはあなたが選んだいずれかの攻撃クリーチャーをブロックする。この能力は、ブロック・クリーチャー指定ステップの間しかプレイできない。

《False Orders》の新テキスト:
False Ordersは、ブロック・クリーチャー指定ステップの間しかプレイできない。
防御プレイヤーがコントロールするクリーチャー1体を対象とし、それを戦闘から取り除く。それがブロックしていたクリーチャーのうち、この戦闘で別のクリーチャーによってまだブロックされた状態になっていないものは、ブロックされていない状態になる。あなたは「それは、あなたが選んだいずれかの攻撃クリーチャーをブロックする」ことを選んでもよい。

《混沌界/Chaosphere(MIR)》&《密集した梢/Dense Canopy(SOK)》
 《混沌界/Chaosphere(MIR)》のかわいそうなこと。やろうとしていることはゲームを逆さまにすることだ。通常、飛行クリーチャーはどのクリーチャーもブロックでき、地上クリーチャーは地上のものだけをブロックできる。《混沌界/Chaosphere(MIR)》があると、地上クリーチャーはどのクリーチャーもブロックでき、飛行クリーチャーは飛行クリーチャーだけをブロックできる。飛行と非飛行を逆さまにしたかった。言うは易しだ。

 何年もかけて、《大蜘蛛/Giant Spider(10E)》のテキストは変わったし、それによって《混沌界/Chaosphere(MIR)》のテキストも変わった。この2つの常在型能力はお互いの足を引っ張っている。数年前、《混沌界/Chaosphere(MIR)》の小さな問題点、つまりゲーム・ルールが根本的に変わったことでテキストが機能しなくなったことに対し、クリーチャーに能力を与えることで対応した。到達が導入されて、2番目の能力は単純になった。しかし1番目の能力はどうだろう?文章が対になっている必要はもうない。1番目の能力はゲーム・ルールを設定するように戻した。そうあるべきものとは少し違うかもしれないが、《雲のスプライト/Cloud Sprite(10E)》やなんかと同じ感じのテキストにした。《混沌界/Chaosphere(MIR)》の2つの能力は同じには見えないが、でも結果を導き出すには簡単なはずだ。

《混沌界/Chaosphere(MIR)》の新テキスト:
飛行を持つクリーチャーは飛行を持つクリーチャーのみをブロックできる。
飛行を持たないクリーチャーは到達を持つ。(それらは飛行を持つクリーチャーをブロックできる。)

《密集した梢/Dense Canopy(SOK)》の新テキスト:
飛行を持つクリーチャーは飛行を持つクリーチャーのみをブロックできる。

《Fastbond》
 1番目の能力は《栄華の儀式/Rites of Flourishing(FUT)》《迷える探求者、梓/Azusa, Lost but Seeking(CHK)》のような「あなたは、あなたの各ターンに、追加で土地をn枚プレイしてもよい。」という同種の能力と同じにする。この場合で言えば「n枚」を「望む数」にする。これは機能変更ではない。機能を変えたのは2番目の能力だ。現在は「そのターンに2つ目以降の土地をプレイするたび、Fastbondは、あなたに1点のダメージを与える。」となっている。双頭巨人戦のことを考えて欲しい。チームメイトが先に土地をプレイしていたらどうなるだろう?自分にもわからない。つまり、このテキストが役に立たないということだ。

《Fastbond》の新テキスト:
あなたは、あなたの各ターンに、追加で土地を望む数だけプレイしてもよい。
あなたが土地をプレイするたび、それがあなたがこのターンにプレイした最初の土地でない場合、Fastbondは、あなたに1点のダメージを与える。

《Flooded Woodlands》 & 《Reclamation》
 印刷されたテキストでは、これはゲーム・ルールを設定する。今はクリーチャーに能力を与えるようになっている。《お粗末/Humble(USG)》などとの相互作用を考えると、《亡霊の牢獄/Ghostly Prison(CHK)》を基にしたゲーム・ルールであるテキストに戻したほうがよいと考えた。

《Flooded Woodlands》の新テキスト:
緑のクリーチャーは、それらのコントローラーが、自分がコントロールする攻撃している緑のクリーチャー1体につき土地を1つ生贄に捧げない限り攻撃できない。

《Reclamation》の新テキスト:
黒のクリーチャーは、それらのコントローラーが、自分がコントロールする攻撃している黒のクリーチャー1体につき土地を1つ生贄に捧げない限り攻撃できない。

 技術的には、これらのテキストの最初には色の単語は必要ない。だがあえてそう書くことでカードをいっそう明確にすると思っている。

《Fork》
 もともとは、《Fork》は、自分が赤だということを除いて自分自身が何か別の呪文のコピーに変わる。この手のごまかしは機能しない。(《Fork》が自分自身を、すでに解決した別の呪文に変化するというやりかたは。)だからこれは現在、《Fork》の色をコピーすることを除いて、《双つ術/Twincast(10E)》のようにコピーを生成するようになっている。さて、このテキストにはおそらく期待する結果をもたらさない微妙な1文がある。コピー効果というのは、コピーした何かの現在の状態をコピーしない。それは他のコピー効果によって修整されない限りは、元の値を使うことになっている。

 となると、《Fork》が《純粋の色/Purelace(4ED)》で白くなっていても、それが生み出すコピーは赤色になってしまう。現在のテキストだとこうなってしまうから、《Fork》のテキストを「コピーは赤」と単純化することにする。《臨機応変/Sleight of Mind(ICE)》にも関わる機能変更である。

《Fork》の新テキスト:
インスタント呪文1つかソーサリー呪文1つを対象とし、それを、コピーの色が赤であることを除いてコピーする。あなたは、そのコピーの新しい対象を選んでもよい。

《熱狂のイフリート/Frenetic Efreet(MIR)》
 オデッセイで《偶然の出合い/Chance Encounter(ODY)》が出たときに、このカードは強すぎるとしてエラッタを受けた。コストが0マナゆえに、自分の能力に対応しまくって好きなだけ起動型能力を起動できたんだ。能力が最初に解決する時に、あなたはコインを投げ、《熱狂のイフリート/Frenetic Efreet(MIR)》はフェイズ・アウトか墓地のいずれかの領域におさらばする。元のテキストに従えば、そのあとも能力は解決し、毎回あなたはコインを投げることができた。《熱狂のイフリート/Frenetic Efreet(MIR)》には何も起こらないけれども、関係なくコイン投げに勝つ機会をたやすく得ることができる。そうして《偶然の出合い/Chance Encounter(ODY)》に山ほどのluckカウンターを乗せて、次のアップキープにゲームに勝つことができたんだ。

 このコンボに対抗するために、あるいは無意味なコイン投げを無くすために、《熱狂のイフリート/Frenetic Efreet(MIR)》はこれ自身が場にないとコイン投げを行えないように訂正された。現在の我々の方針に従って、この手のパワーレベル・エラッタを廃止する。《熱狂のイフリート/Frenetic Efreet(MIR)》は印刷された機能に戻す。もし《閃光/Flash(MIR)》と同じように壊れているのだと判明したら、禁止なり制限なりに加わることだろう。

《熱狂のイフリート/Frenetic Efreet(MIR)》の新テキスト:
{0}:コイン投げをする。あなたがコイン投げに勝った場合、Frenetic Efreetはフェイズ・アウトする。あなたがコイン投げに負けた場合、Frenetic Efreetを生贄に捧げる。

《外殻貫通/Hull Breach(PLS)》
 前回の更新で、これは「以下の2つから1つか2つを選ぶ」文章に変えられた。流れをよくするためだけの印象でしかなかったから、これを「機能変更でない変更」に入れていた。大間違いだ。印刷されたテキストならば、アーティファクトとエンチャントの両方を破壊したいなら、それらは同時に破壊される。新しいテキストだと、両方破壊したい場合には順番に破壊されてしまう。《原初の命令/Primal Command(LRW)》を思い出して欲しい。選択された1つめのモードが済んでから、次に選んだモードが行われる点を。

 たとえば、アーティファクトが「エンチャントが破壊されたとき」に誘発する能力を持っている場合に問題となる。このようなことは想定外で意図したものではないので、印刷されたテキストに戻す。

《外殻貫通/Hull Breach(PLS)》の新テキスト:
以下の3つから1つを選ぶ。「アーティファクト1つを対象とし、それを破壊する」「エンチャント1つを対象とし、それを破壊する」「アーティファクト1つとエンチャント1つを対象とし、それらを破壊する」

《液状の火/Liquid Fire(ODY)》
 こいつはいつも問題を起こす。これが意図していることは、クリーチャーとそのコントローラーに最大5点までを配分するということ。システムと揉める部分は対象にとったものととってないものに配分する唯一のカードだというところだ。これのせいで409.1eは「対象にとってないもの」まで含むという変更を余儀なくされた。だが問題はそこではない。

 他のものは対象にとったものすべてに効果を割り振る。そして解決時に対象にとってないものにはそう望んだものを割り振る。最悪なのは、このルールのどちらもが、効果を受けるものが、分配される何かの少なくとも1つを割り当てられなくてはならない、と言っていることだ。

 つまり0対5とか5対0とかの分配がルール違反だということだ。

 理想としては、《液状の火/Liquid Fire(ODY)》はこれらの基準に合格していればいい。
 1)0対5か5対0の分割が可能。
 2)呪文がプレイされたときに分配を行う。(解決時に分配を行うとなると悲惨だ。クリーチャーや自分にどれくらいのダメージが来るかわからないから、再生するとかタフネスをあげていいものかどうか判断がつかない)
 3)解決時に分配することを望む他の効果のためのルールを台無しにしないこと。(《忘れられた古霊/Forgotten Ancient(SCG)》とかが、分配という単語は使っていないけど最適な例。)

 これらのことが、奇怪なテキストにまとめられた。しかしまあ少なくとも、考えているとおりの機能はするだろう。

《液状の火/Liquid Fire(ODY)》の新テキスト:
Liquid Fireをプレイするための追加コストとして、0から5までの間の数を選ぶ。
クリーチャー1体を対象とする。Liquid Fireは、それにX点のダメージを与え、それのコントローラーに、5からXを引いた値のダメージを与える。Xは、選ばれた数字である。

《オーガの処罰者/Ogre Enforcer(VIS)》
 このカードのオラクルテキストは、ダメージを軽減することになっている。印刷されたテキストとはかなりの違いがある。それはというと、《オーガの処罰者/Ogre Enforcer(VIS)》が僕の1/1の絆魂もちをブロックしたら、僕は1ライフを得るべきだ。僕の1/1の接死もちをブロックしたなら、接死の能力の結果でこいつは破壊されるべきだ。萎縮もちなら、-1/-1カウンターが乗るべきだ。

 たぶん、オラクルチームがこのカードを変えたのは、「破壊されない」という機能がユニークすぎたからだと思っている。しかし、今現在、「破壊されない」という技術が存在している。だから我々はこれを本来の姿に戻すことができる。

 もうひとつ、別の部分で印刷されたテキストとオラクルとの間に違いがある。僕は印刷されたカードは単一の発生源からのダメージの蓄積を追跡すると信じている。《シヴのヘルカイト/Shivan Hellkite(10E)》が《オーガの処罰者/Ogre Enforcer(VIS)》に1点、また1点、1点、1点と与えられたなら、《オーガの処罰者/Ogre Enforcer(VIS)》は破壊されるべきだ。今現在は4点一度に与えられないと破壊できないから、この点も修整した。

《オーガの処罰者/Ogre Enforcer(VIS)》の新テキスト:
単一の発生源によって致死ダメージが与えられない限り、Ogre Enforcerは致死ダメージによっては破壊されない。

《Spoils of Evil》
 印刷されたテキストでは、これは対戦相手を対象にとっている。これを復活させた。

《Spoils of Evil》の新テキスト:
対戦相手1人を対象とする。そのプレイヤーの墓地にある、クリーチャー・カードかアーティファクト・カード1枚につき、あなたのマナ・プールに{1}を加えてあなたは1点のライフを得る。


テンプレート翻訳変更点

烈日/Sunburst
 烈日の注釈文とルールは同じフレーズを使っていた。烈日を持つカードのコストに使われたマナの色を参照している。注釈文ならまだしも、「使う」というのはルールの言葉遣いとしてはあいまいだ。さらには、烈日を持つカードをプレイするために支払われたマナを参照したほうがより正確である。コストに支払われたマナではなく。《太陽の拳/Fist of Suns(5DN)》などのなんらかの代替コストで烈日もちのカードをプレイする場合、それは2重に数えられてしまう!

 こういったものは《横揺れの増長/Rolling Spoil(RAV)》とか他の「強化呪文」カードが、それをプレイするためにあなたがどの色のマナを支払ったかということを問題にしているテキストを持っている。

烈日の新注釈文:
(これはその上に、それをプレイするために支払われたマナの色1色につき+1/+1カウンターが1個置かれた状態で場に出る。)

この変更で影響を受けるカード:
《電結の放浪者/Arcbound Wanderer(5DN)》《勇気のバトン/Baton of Courage(5DN)》《清水のゴブレット/Clearwater Goblet(5DN)》《仕組まれた爆薬/Engineered Explosives(5DN)》《刻まれた巫女/Etched Oracle(5DN)》《陽光の薬瓶/Heliophial(5DN)》《注入の矢/Infused Arrows(5DN)》《月の報復者/Lunar Avenger(5DN)》《オパールの腕甲/Opaline Bracers(5DN)》《五元のプリズム/Pentad Prism(5DN)》《鋸歯の尾長獣/Sawtooth Thresher(5DN)》《空に届くマンタ/Skyreach Manta(5DN)》《脊髄寄生虫/Spinal Parasite(5DN)》《太陽に触れたマイア/Suntouched Myr(5DN)》


サボタージュとその仲間たち
 310.2eには「クリーチャーが通常とは違う方法で戦闘ダメージを与える効果は、戦闘ダメージの割り振りに影響する。」とある。本質的には、このルールは「我々は"割り振る"という言葉をカードに書きたくない。だからときどき我々は"与える"という言葉を使うが、あなたはそれを"割り振る"に変換しないといけない」と書いてあるわけだ。

 このルールは2種類のカードたちをカバーしている。ひとつは《ロウクス/Rhox(10E)》のようなスーパートランプルをもつもの。「あなたは"ロウクスは、それがブロックされなかったかのようにその戦闘ダメージを与える"ことを選んでもよい。(印刷テキスト)」と書いてある。それともう一つはある特定の状況下で「このターン戦闘ダメージを割り振らない(印刷テキスト)」と書いてあるいろいろなカードだ。昔はサボタージュ能力と呼ばれ《知恵の蛇/Ophidian(WTH)》や《溶岩獣の兵卒/Laccolith Grunt(NEM)》シリーズ、《屍肉ワーム/Carrion Wurm(TOR)》なんかもその一派だ。《包囲の搭、ドラン/Doran, the Siege Tower(LRW)》が登場し、"割り振る"という単語をカードで使ってもよくなった。そしてスーパートランプルを持つものたちもそれ相応に変更されている。そして今回サボタージュのグループも変更されることになった。

 "ダメージを与えない"という条件が合致するときは、それは実際にはダメージを1点も割り振らないということである。いったんダメージを割り振ってそのあと消えたとしても合致しない。ルールブックが遠まわしに言っていることよりも、これらのカードが何を言いたいかということが大切だろう。オデッセイより後に印刷されたカードにはこれは影響しないことにも注意して欲しい。現在のサボタージュは、ダメージを与えた上で何かをするようになっているから。

《知恵の蛇/Ophidian(WTH)》の新オラクルテキスト:
Ophidianが攻撃してブロックされないたび、あなたはカードを1枚引いてもよい。そうした場合、このターン、Ophdianは戦闘ダメージを割り振らない。

《溶岩獣の兵卒/Laccolith Grunt(NEM)》の新オラクルテキスト:
Laccolith Gruntがブロックされた状態になるたび、クリーチャー1体を対象とする。あなたは「これは、それに、自身のパワーに等しい値のダメージを与える」ことを選んでもよい。そうした場合、このターン、Laccolith Gruntは戦闘ダメージを割り振らない。

《屍肉ワーム/Carrion Wurm(TOR)》の新オラクルテキスト:
Carrion Wurmが攻撃かブロックをするたび、どのプレイヤーも自分の墓地にあるカードを3枚、ゲームから取り除いてもよい。いずれかのプレイヤーがそうした場合、このターン、Carrion Wurmは戦闘ダメージを割り振らない。

この変更で影響を受けるカード:
Bone Dancer, Carrion Rats, Cloak of Confusion, Delif's Cone, Delif's Cube, Dwarven Vigilantes, Farrel's Mantle, Farrel's Zealot, Floral Spuzzem, Gaze of Pain, Goblin Vandal, Keeper of Tresserhorn, Kukemssa Pirates, Laccolith Rig, Laccolith Titan, Laccolith Warrior, Laccolith Whelp, Lim-Dul's Paladin, Orcish Squatters, Pygmy Hippo, Rysorian Badger, Stromgald Spy

《防御体制/Defensive Maneuvers(ONS)》とその仲間たち
 "タイプ"という単語はいろいろな意味を持っている。カード・タイプ、クリーチャー・タイプなどだ。最近は"タイプ"という単語を使うときは、それが何について言及しているかが明確であるように、かなり厳しくしていた。オンスロートの《防御体制/Defensive Maneuvers(ONS)》とその一派は、「あなたが選んだタイプのクリーチャー(原文)」というフレーズを使っている。この場合、"タイプ"とは"クリーチャー・タイプ"のことを指している。おそらく文脈から想像はつくものだが、標準的なテキストの手続きとしては我々の基準に反している。《アフェット式底ざらい/Aphetto Dredging(ONS)》や《絶滅/Extinction(TMP)》のような先例にも反している。そこで、"タイプ"を"クリーチャー・タイプ"とし、明確さを保証するようにした。(日本語版は明確にしているので影響はほとんどありません。英語版が雑すぎるんだよw)

《防御体制/Defensive Maneuvers(ONS)》の新テキスト:
あなたはクリーチャー・タイプを1種類選ぶ。選ばれたタイプのクリーチャーは、ターン終了時まで +0/+4 の修整を受ける。

この変更で影響を受けるカード:
《邪神カローナ/Karona, False God(SCG)》《激浪の年代学者/Riptide Chronologist(ONS)》《部族の腕力魔道士/Tribal Forcemage(LGN)》《部族の団結/Tribal Unity(ONS)》《歩き回る冒涜者/Walking Desecration(ONS)》

《希望の化身/Avatar of Hope(PCY)》とその仲間たち
 《希望の化身/Avatar of Hope(PCY)》は印刷されたテキストだと「あなたが3点以下のライフを持つ場合・・・」とある。これだけではなく、片手ほどの数のカードがこういった形のテキストを持っている。最新のテキストなら、「以下」「以上」「より多い」「より少ない」(訳注:あんかばテンプレルールです)が、数字の後に続いている。《名誉の御身/Divinity of Pride(EVE)》のテキストに従う。(日本語版に差異はありません。厳密には変えるべきでしょうが意味はなさそうなので。)

《希望の化身/Avatar of Hope(PCY)》の新テキスト:
あなたのライフが3点以下である場合、Avatar of Hopeをプレイするためのコストは{6}少なくなる。
飛行.
Avatar of Hopeは、望む数のクリーチャーをブロックできる。

この変更で影響を受けるカード:
Callous Giant, Convalescence, Convalescent Care, Divine Presence, Lurking Jackals, Opal Avenger, Razor Pendulum, Second Chance

《あまたの舞い/Dance of Many(CHR)》とその仲間たち
「コピーとしてトークンを場に出す」は、現在「それのコピーであるトークンを場に出す」という《下僕の反射鏡/Minion Reflector(ALA)》《熱の陽炎/Heat Shimmer(LRW)》に合わせる。

《あまたの舞い/Dance of Many(CHR)》の新テキスト:
Dance of Manyが場に出たとき、トークンでないクリーチャー1体を対象とする。それのコピーであるトークンを1体場に出す。
Dance of Manyが場を離れたとき、このクリーチャー・トークンをゲームから取り除く。
このクリーチャー・トークンが場を離れたとき、Dance of Manyを生贄に捧げる。
あなたのアップキープ開始時に、あなたが{青青}を支払わない限り、Dance of Manyを生贄に捧げる。

この変更で影響を受けるカード:
《二重の造物/Dual Nature(PCY)》《エコー室/Echo Chamber(TMP)》

《激情の共感者/Fierce Empath(SCG)》とその仲間たち
 少数のグループのカードが「あなたはライブラリーを探してもよい」という完全に独立している能力があるのだが、別の文章で「その後あなたのライブラリーを切り直す」と書いてある。切り直しは義務であり、別の行動でもある。そのためにライブラリーを探さないことを選んでも切り直しをしなければならないように見える。ばかばかしいことだ。もちろん、我々は金輪際こういった類にテキストにはしない。「あなたは~してもよい」の文章に切り直しを含んだり、別の文章に分かれたり、ということはしない。我々は「そうした場合、あなたのライブラリーを切り直す」とする。

 この仲間のなかには新しいテキストで印刷されたものもある。それらはそのまま残した。4枚はこのエラッタを適用する。3枚はオラクルに変更はない。印刷されたテキストに近くなっているので、2つのグループのすべてのカードは1行にまとめるだけのエラッタにする。(後日オラクルが発表されたときに修整します。)

《激情の共感者/Fierce Empath(SCG)》の新テキスト:
Fierce Empathが場に出たとき、あなたは「あなたのライブラリーから点数で見たマナ・コストが6以上のクリーチャー・カード1枚を探し、それを公開してあなたの手札に加え、その後あなたのライブラリーを切り直す」ことを選んでもよい。

この変更で影響を受けるカード:
《クローサの大牙獣/Krosan Tusker(ONS)》《狩りをする豹/Hunting Cheetah(PTK)》《自然との一体化/One with Nature(SCG)》《天空の鷹/Welkin Hawk(EXO)》《ワイアウッドの伝令/Wirewood Herald(ONS)》《ヤヴィマヤの農夫/Yavimaya Granger(ULG)》



その他、機能変更ではないオラクル変更点
《頭の混乱/Addle(INV)》
 このカードは「その後」を「そして」に戻す。それが印刷されたテキストであり、他の同種カードとも合致するからである。印刷されたテキストのこの部分が問題ないなら、多様であることの意味が無い。「見る」を「公開する」に変更したエラッタはそのままだ。

《頭の混乱/Addle(INV)》の新オラクルテキスト:
プレイヤー1人を対象とする。色を1色選ぶ。そのプレイヤーは自分の手札を公開し、あなたはその中からその色のカード1枚を選ぶ。そのプレイヤーはそのカードを捨てる。

《疾風のマングース/Blurred Mongoose(INV)》
 2つの能力の順番は間違っている。

《疾風のマングース/Blurred Mongoose(INV)》の新オラクルテキスト:
Blurred Mongooseは打ち消されない。
被覆.(このパーマネントは呪文や能力の対象にならない。)

《混沌のグー/Chaotic Goo(TMP)》

 標準的でない「Chaotic Gooに+1/+1カウンターを加える」というテキストを一般的な「Chaotic Gooの上に+1/+1カウンターを1個置く」に改める。(あんかばリストはすでにそうなっています。)

《混沌のグー/Chaotic Goo(TMP)》の新オラクルテキスト:
Chaotic Gooは、その上に +1/+1 カウンターが3個置かれた状態で場に出る。
あなたのアップキープ開始時に、あなたはコイン投げをしてもよい。あなたがコイン投げに勝った場合、Chaotic Gooの上に +1/+1 カウンターを1個置く。あなたがコイン投げに負けた場合、Chaotic Gooから +1/+1 カウンターを1個取り除く。

《Darkpact》
 「あなたのライブラリーの一番上」は「あなたのライブラリーの一番上のカード」であるべきである。

《Darkpact》の新オラクルテキスト:
あなたがアンティを賭けてプレイしない場合、プレイを開始する前にDarkpactをあなたのデッキから取り除く。
アンティにあるカード1枚を対象とする。あなたはそれのオーナーである。そのカードとあなたのライブラリーの一番上のカードを交換する。

《滅殺の命令/Decree of Annihilation(SCG)》
 前回の更新で、領域全部からカードをゲームから取り除くカードのテキストは、領域にあるすべてのカードをゲームから取り除くというように変更されている。(混乱しやすいからだ)《滅殺の命令/Decree of Annihilation(SCG)》を忘れていた。検索に引っかからなかったのだ。

《滅殺の命令/Decree of Annihilation(SCG)》の新オラクルテキスト:
全てのアーティファクトと、全てのクリーチャーと、全ての土地と、墓地にある全てのカードと、手札にある全てのカードをゲームから取り除く。
サイクリング {5赤赤}.
あなたがDecree of Annihilationをサイクリングしたとき、全ての土地を破壊する。

《死者の王、ドラルヌ/Dralnu, Lich Lord(TSP)》&《埋め合わせ/Recoup(ODY)》
 《埋め合わせ/Recoup(ODY)》のテキストは単純で、すぐに問題が起こった。これは墓地のカードに影響する。《埋め合わせ/Recoup(ODY)》によって与えられたフラッシュバック能力を使ってプレイしてカードがスタックに移動すると、それは新しいカードとして扱われ、フラッシュバックを持たなくなってしまう。もっと重要なのは、《埋め合わせ/Recoup(ODY)》が与えたフラッシュバック・コストも存在しなくなっているので、スタックに乗っている状態で呪文のコストを支払うために、これは問題となる。

 よって《埋め合わせ/Recoup(ODY)》には奇妙な訂正が入り、そののち《死者の王、ドラルヌ/Dralnu, Lich Lord(TSP)》が出たときにこれも基本的に同じ問題が起こった。この問題をなんとかするのに別の方法がある。217.1cは、領域を移動したカードはそれが以前あった記憶を忘れるというルールである。その後に続く5つの例外を除いて。

 我々はこれを6つめの例外にする。なにかが土地でないカードにプレイを許可する能力を与えた場合、その方法でプレイされた結果としてスタックに移動したあとも、能力はそのカードを参照し続ける。そのため《埋め合わせ/Recoup(ODY)》は印刷されたテキストに近いものにし、《死者の王、ドラルヌ/Dralnu, Lich Lord(TSP)》もそれに合わせる。

《死者の王、ドラルヌ/Dralnu, Lich Lord(TSP)》の新オラクルテキスト:
Dralnu, Lich Lordにダメージが与えられる場合、その代わりに、その点数に等しい数のパーマネントを生贄に捧げる。
{T}:あなたの墓地にあるインスタント・カード1枚かソーサリー・カード1枚を対象とする。ターン終了時まで、それはフラッシュバックを得る。それのフラッシュバック・コストはそれのマナ・コストに等しい。(あなたはあなたの墓地にあるそのカードを、そのフラッシュバック・コストでプレイしてもよい。その後それをゲームから取り除く。)

《埋め合わせ/Recoup(ODY)》の新オラクルテキスト:
あなたの墓地にあるソーサリー・カード1枚を対象とする。それはターン終了時までフラッシュバックを得る。それのフラッシュバック・コストはそれのマナ・コストに等しい。(マナ・コストには色も含まれる。)
フラッシュバック {3赤}.(あなたはあなたの墓地にあるこのカードを、このフラッシュバック・コストでプレイしてもよい。その後これをゲームから取り除く。)

《無数のゴキブリ/Endless Cockroaches(POR)》
 余分な「to」を消した。(日本語版に影響はありません。)

《無数のゴキブリ/Endless Cockroaches(POR)》の新オラクルテキスト:
Endless Cockroachesが場からいずれかの墓地に置かれたとき、Endless Cockroachesをそのオーナーの手札に戻す。

《踏査/Exploration(USG)》
 この種の能力の一般的なテキストとして、《栄華の儀式/Rites of Flourishing(FUT)》や《迷える探求者、梓/Azusa, Lost but Seeking(CHK)》と同じようにする。

《踏査/Exploration(USG)》の新オラクルテキスト:
あなたは、あなたの各ターンに追加で土地を1枚プレイしてもよい。

《波動機/Fluctuator(USG)》
 《触媒石/Catalyst Stone(ODY)》や《オーリオックの鋼打ち/Auriok Steelshaper(MRD)》に見られるテキストに合わせる。

《波動機/Fluctuator(USG)》の新オラクルテキスト:
あなたが支払うサイクリング・コストは最大{2}まで少なくなる。

《ハートストーン/Heartstone(STH)》&《Power Artifact》
 前回の更新で《ハートストーン/Heartstone(STH)》は新しいテキストになった。しかしすぐに「1マナ」より「1マナ」のほうが良いことに気づいた。それに加えて、《Power Artifact》は《ハートストーン/Heartstone(STH)》と2行目が同じ文章である。一方が変わるならそれに沿って変えなければならない。(日本語版が反映"できない"部類の変更です。漢数字でも使えと?)

《ハートストーン/Heartstone(STH)》の新テキスト:
クリーチャーの起動型能力をプレイするためのコストは{1}少なくなる。この効果は、能力をプレイするためのコストのマナの量を1マナより減らすことはできない。

《Power Artifact》の新テキスト:
エンチャントされているアーティファクトの起動型能力をプレイするためのコストは{2}少なくなる。この効果は、能力をプレイするためのコストのマナの量を1マナより減らすことはできない。

《不滅のオーラ/Indestructible Aura(CHR)》
 より明確なテキストにした。(変更はありません。というか旧オラクルに対応してなかったぽいですが、結果オーライで)

《不滅のオーラ/Indestructible Aura(CHR)》の新オラクルテキスト:
クリーチャー1体を対象とする。このターン、それに与えられる全てのダメージを軽減する。

《Infernal Denizen》
 誘発型能力に妙な部分があった。これは継続的効果を生み出し、別の文章にその効果の持続時間が書いてある。ほかの能力と同じように、ひとつの文章で一緒に働くようにする。

《Infernal Denizen》の新オラクルテキスト:
あなたのアップキープ開始時に、沼(Swamp)を2つ生贄に捧げる。あなたがそうできない場合、Infernal Denizenをタップし、対戦相手1人は、「Infernal Denizenが場に出ている限り、そのプレイヤーが選んだ、あなたがコントロールするクリーチャー1体のコントロールを得る」ことを選んでもよい。
{T}:クリーチャー1体を対象とする。Infernal Denizenが場に出ている限り、それのコントロールを得る。

《西涼の戦士 馬超/Ma Chao, Western Warrior(PTK)》
 「それ」を「それ」にする。(日本語版に影響はありません。)

《西涼の戦士 馬超/Ma Chao, Western Warrior(PTK)》の新オラクルテキスト:
馬術.
Ma Chao, Western Warriorが単独で攻撃するたび、これはこの戦闘でブロックされない。

《マナの網/Mana Web(WTH)》
 「引き出すことのできる」とか「生み出せる」とか書かれている。総合ルールで定義されているので、双方の場所で同じ言葉遣いに直した。

《マナの網/Mana Web(WTH)》の新オラクルテキスト:
いずれかの対戦相手がコントロールする土地がマナを引き出す目的でタップされるたび、そのプレイヤーがコントロールする土地のうち、タップされた土地が生み出すことのできるタイプのマナのいずれかのマナを生み出すことのできる全ての土地をタップする。

《研究+開発/Research+Development(DIS)》
 《恐るべき下層流/Dire Undercurrents(SHM)》が「ことを選んでもよい」とあるが、《開発/Development》は「引かせない限り」と書いている。「引かせる」よりは「ことを選んでもよい」のほうが良い。

《研究+開発/Research+Development(DIS)》の新オラクルテキスト:

研究/Research
ゲームの外部にある、あなたがオーナーであるカードを最大4枚まで選び、それらをあなたのライブラリーに加えて切り直す。
//
開発/Development
いずれかの対戦相手が「あなたがカードを1枚引く」ことを選ばない限り、赤の (3/1) のエレメンタル(Elemental)・クリーチャー・トークンを1体場に出す。この手順をもう2回繰り返す。

《Scarwood Bandits》
 「場にある」よりは、他の同種のテキストと同じく「場に出ている」にすべきである。

《Scarwood Bandits》の新オラクルテキスト:
森渡り.
{2緑},{T}:アーティファクト1つを対象とする。それのコントローラーが{2}を支払わない限り、Scarwood Banditsが場に出ている限りそのアーティファクトのコントロールを得る。

《魂の捕縛/Seize the Soul(GPT)》
 前回の更新で「白でない」と「黒でない」にコンマを入れていたのだが、このカードが2回その単語を使っていたことを失念していた。修整する。(日本語版には影響しません。)

《魂の捕縛/Seize the Soul(GPT)》の新オラクルテキスト:
白でも黒でもないクリーチャー1体を対象とし、それを破壊する。飛行を持つ白の (1/1) のスピリット(Spirit)・クリーチャー・トークンを1体場に出す。
憑依.
Seize the Soulが憑依しているクリーチャーが墓地に置かれたとき、白でも黒でもないクリーチャー1体を対象とし、それを破壊する。飛行を持つ白の (1/1) のスピリット(Spirit)・クリーチャー・トークンを1体場に出す。

《センの三つ子/Sen Triplets(ARB)》
 アラーラ再誕のこのカードは、「あなたは~プレイできる」ではなく「あなたは~プレイしてよい」とすべきである。

《センの三つ子/Sen Triplets(ARB)》の新オラクルテキスト:
+ あなたのアップキープの開始時に、対戦相手1人を対象として選ぶ。このターン、そのプレイヤーは呪文や起動型能力をプレイできず、そのプレイヤーは自分の手札を公開したままプレイする。このターン、あなたはそのプレイヤーの手札のカードをプレイしてもよい。

《シロッコ/Sirocco(MIR)》
 テキストを最近のカードに合わせた。例としてMidnight Bargainを見て欲しい。(《月光の取り引き/Moonlight Bargain(RAV)》のことですか?)

《シロッコ/Sirocco(MIR)》の新オラクルテキスト:
プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーは自分の手札を公開する。これにより公開された青のインスタント・カード1枚につき、そのプレイヤーは4点のライフを支払わない限りそのカードを捨てる。

《サルタリーのゲリラ/Soltari Guerrillas(TMP)》
 オラクルテキストは「防御プレイヤー」を参照している。これはこの能力が戦闘フェイズ以外で起動された場合、防御プレイヤーがいないために混乱してしまう。印刷されたテキストでは対戦相手を参照しているので、そちらに従う。

《サルタリーのゲリラ/Soltari Guerrillas(TMP)》の新オラクルテキスト:
シャドー.(このクリーチャーは、シャドーを持つクリーチャーのみブロックでき、シャドーを持つクリーチャーによってのみブロックされる。)
{0}:クリーチャー1体を対象とする。このターンにSoltari Guerrillasがいずれかの対戦相手に次に戦闘ダメージを与える場合、その代わりに、これはそのダメージをそれに与える。

《Transmute Artifact》

 色つきアーティファクトが登場したおかげで、コストの差分を支払うよう要求されたときに色まで考慮するべきかどうかを決めるために、印刷されたテキストを見直した。これが印刷された当時は、アーティファクトはすべて無色だったのだからいまいちピンとこない。結局、「ノー」という結論を下した。これは点数で見たマナ・コストだけを問題とする。コストが2マナのアーティファクトを生け贄に捧げた場合で、3WUBのアーティファクトを探してきたとしたら、あなたが支払うのは{4}である。あなたが何を支払うのかということに関してこのテキストはあいまいだったので、より明確にした。

《Transmute Artifact》の新オラクルテキスト:
Transmute Artifactをプレイするための追加コストとして、アーティファクトを1つ生贄に捧げる。
あなたのライブラリーからアーティファクト・カード1枚を探す。そのカードの点数で見たマナ・コストが生贄に捧げられたアーティファクトの点数で見たマナ・コスト以下である場合、それを場に出す。それよりも大きい場合、あなたは{X}を支払ってもよい。Xは、その差分である。そうした場合、それを場に出す。そうしなかった場合、それをあなたの墓地に置く。その後あなたのライブラリーを切り直す。

《双頭のドラゴン/Two-Headed Dragon(MMQ)》
 「できる」を使うべきで「してもよい」ではない。(あんかばリストには変更はありません)《Floral Spuzzem》、誰がこれを考えたんだろうな?

《双頭のドラゴン/Two-Headed Dragon(MMQ)》の新オラクルテキスト:
飛行.
{1赤}:Two-Headed Dragonは、ターン終了時まで +2/+0 の修整を受ける。
Two-Headed Dragonは、2体以上のクリーチャーによってしかブロックされない。
Two-Headed Dragonは、追加で1体のクリーチャーをブロックできる。

《新緑の魔力/Verdant Force(10E)》
 現在まで、《新緑の魔力/Verdant Force(10E)》は苗木を「あなたのコントロール下で」場に出すと明記されていた。このテキストは必要ないが、誘発条件が他のプレイヤーを参照するときには誰がコントロールしているかを明確にしていた。誘発条件が何も変更がなく、《ドラゴンの大母/Dragon Broodmother(ARB)》がこの種のテキストを使っていないため、それに合わせる。

《新緑の魔力/Verdant Force(10E)》の新オラクルテキスト:
各アップキープ開始時に、緑の (1/1) の苗木(Saproling)・クリーチャー・トークンを1体場に出す。

オラクル変更点:機能変更

《Balance/天秤(4ED)》
現在のオラクルはあなたが必要とされている数になるまで1つづつ土地を生け贄に捧げるように読める。印刷されたテキストはそうは指示していない。《均衡の復元/Restore Balance(TSP)》では、すべての土地の生け贄が同時に起こるように明確なテンプレートを使っている(クリーチャーの生け贄と手札を捨てることも同様)。

新オラクルテキスト:
各プレイヤーは自分がコントロールしている土地から、最も少ない土地をコントロールしているプレイヤーの土地の総数に等しい数の土地を選び、その後残りを生贄に捧げる。プレイヤーは同様に手札を捨て、同様にクリーチャーを生贄に捧げる。

《目には目を/Eye for an Eye(5ED)》
このカードのタイミングはあいまいだった。これをプレイするために、ダメージを与えられるまで待たなければならないのか?アラビアンナイト、リバイズド、第4版はそう書いてある。しかし元のダメージによる影響はダメージ軽減効果が無視している。これは収まりが悪い。第5版のテキストも微妙だ。ダメージが割り振られたときにだけプレイできると書いてある。現在のオラクルは微妙に微妙を重ねている。
ダメージが与えられた後にだけ有効なら簡単な話だが、これはこのターンに単一の発生源から与えられたダメージの合計を数えている。複数回ダメージを与えられる場合、印刷されたテキストではうまく働かない。
それと、このカードの雰囲気の問題もある。これはあなたにダメージを与えたものに復讐をするデザインだ。しかしそのダメージがあなたを負かすに十分なら、《目には目を/Eye for an Eye(5ED)》をプレイしてもしょうがないのだ。でもそれがこのカードをプレイするのに一番重要なタイミングではないのだろうか?第5版はオラクル・テキストの方向性が変わり、同時にダメージを与えるコンセプトになっている。これを発展させられないものだろうか?これはちょっとした実験である。一石を投じることになればいいが。

新オラクルテキスト:
あなたが選んだ発生源1つが、このターンに次にあなたにダメージを与える場合、その代わりに、その発生源はあなたにその値と同じ点数のダメージを与え、Eye for an Eyeは、その発生源のコントローラーにその値と同じ点数のダメージを与える。

《Freyalise's Winds》

最後のオラクル更新で、このカードが《時間のひずみ/Temporal Distortion(INV)》と合わない悪いテキストだとして変更した。しかしまだ《時間のひずみ/Temporal Distortion(INV)》とうまく働くわけではないことが指摘された。《時間のひずみ/Temporal Distortion(INV)》の常在型と誘発型能力よりも印刷されたテキストの置換効果のほうがより正しく機能していた。

新オラクルテキスト:
パーマネントがタップ状態になるたび、その上に"風(wind)カウンターを1個置く。
その上にwindカウンターが置かれているパーマネントがそのコントローラーのアンタップ・ステップの間にアンタップする場合、その代わりに、それの上から全てのwindカウンターを取り除く。

《金粉のドレイク/Gilded Drake(USG)》
このク(略)カードで起こること:
1、《金粉のドレイク/Gilded Drake(USG)》が場に出たとき、能力が誘発する。あなたは対戦相手がコントロールするクリーチャーを対象にとらなければならない。適正な対象が選べない場合、そのほかの能力も単にスタックに乗らない。この場合、あなたは《金粉のドレイク/Gilded Drake(USG)》を生け贄に捧げなければならない。
2、誘発型能力が解決する際、ゲームは対象がまだ適正かどうかをチェックする。適正でないなら、その他の能力は打ち消され何も起こらない。この場合、あなたはあなたは《金粉のドレイク/Gilded Drake(USG)》を生け贄に捧げなければならない。
3、対象が適正なままである、あなたはそのクリーチャーと《金粉のドレイク/Gilded Drake(USG)》を交換する。あるいは、《金粉のドレイク/Gilded Drake(USG)》を生け贄に捧げることを選ぶことができる。

その1(その3の半分も含む)はモードとして表現されている。適正な対象がないなら、対象をとるモードを選べない。だからあたなは《金粉のドレイク/Gilded Drake(USG)》を生け贄に捧げなければならない。同じ対象制限は「最大1つまで対象を選ぶ」でもより単純に表現できると思う。次に、《金粉のドレイク/Gilded Drake(USG)》は生け贄に捧げることが2度繰り返されている。新オラクルでは1度だけにした。

その2は前代未聞かつ珍妙な「この能力は打ち消されない」によって表現されている。この文章の意図は適正な対象がなかったときにゲームルールによって能力が打ち消されることがあることを示している。不幸なことに、それが《もみ消し/Stifle(SCG)》のような呪文や能力にも及んでいる。《もみ消し/Stifle(SCG)》は《金粉のドレイク/Gilded Drake(USG)》の能力を打ち消すことができるべきである。

新オラクルテキスト:
飛行.
Gilded Drakeが場に出たとき、いずれかの対戦相手がコントロールするクリーチャーを最大1体まで対象とする。Gilded Drakeのコントロールとそれのコントロールを交換する。交換しなかった場合、Gilded Drakeを生贄に捧げる。この能力は、呪文や能力以外によっては打ち消されない(この効果は、ターン終了時に終わらない。)

《Guardian Beast》
印刷されたテキストでは、《Guardian Beast》はあなたのクリーチャーでないアーティファクトもさらにエンチャントされることを阻止できる。しかしすでにそれらにつけられているオーラには影響しない。現在は、「あなたがコントロールするクリーチャーでないアーティファクトはエンチャントされない」となっている。これではアーティファクトにつけられているエンチャントははがれてしまう。《白の護法印/White Ward(4ED)》のようなカードを参考に、テンプレートに修正を加えた。

新オラクルテキスト:
Guardian Beastがアンタップ状態である限り、あなたがコントロールする、クリーチャーでないアーティファクトはエンチャントされない。それらは破壊されない。他のプレイヤーはそれらのコントロールを得ることができない。この効果はそれらのアーティファクトに既につけられているオーラ(Aura)を取り除かない。

《Pyramids》
印刷されたテキストでは、《Pyramids》は土地を破壊されることから守っていた。現在は土地を再生する。これはそうすべきではない。印刷されたテキストは土地をタップ状態にはしないからである。別案もあったが、土地がクリーチャーでもある場合、致死ダメージで破壊される場合にダメージが取り除かれないと状況起因効果は再びそれを破壊してしまう。これをうまく働くようにする。
《Pyramids》はもうひとつ能力を持っている。それは使いやすいようにオラクルでは2つに分割されている。これはあなたがプレイするときにどちらを使うのかを決める。ならばモードにすれば大した違いはない。できるだけ印刷されたテキストに沿うようにしたほうがよい。

新オラクルテキスト:
{2}:以下の2つから1つを選ぶ。「土地につけられているオーラ(Aura)1つを対象とし、それを破壊する。」「土地1つを対象とする。このターンにそれが次に破壊される場合、その代わりに、それからダメージを全て取り除く」

《リバウンド/Rebound(STH)》《銀のワイヴァーン/Silver Wyvern(STH)》
これらの印刷されたテキストが複数の対象をすべて同じものにしたときの《力の種/Seeds of Strength(RAV)》のような呪文に影響するが、オラクルのテキストはそうできない。《炎異種/Torchling(PLC)》の対象変更能力は《力の種/Seeds of Strength(RAV)》に影響できるし、実際にこの印刷されたテキストにも似ているので、これを導入する。

《銀のワイヴァーン/Silver Wyvern(STH)》の新オラクルテキスト:
飛行.
{青}:Silver Wyvernのみを対象とする呪文1つか能力1つを対象とし、それの対象を変更する。新しい対象はクリーチャーでなければならない。

《リバウンド/Rebound(STH)》の新オラクルテキスト:
プレイヤーのみを対象とする呪文1つを対象とし、それの対象を変更する。新しい対象はプレイヤーでなければならない。

《コーのシャーマン/Shaman en-Kor(STH)》
ダメージ軽減、移し変え効果は通常「あなたが選んだ発生源」と書いてある。これは適用可能なダメージの発生源が効果が作られるときに固定されるので、「発生源」というのは適用可能なダメージが与えられるときの発生源を特定する。これは基本である。しかしこのオラクルテキストは「あなたが選んだ」と書いてない。印刷されたテキストを現在のテンプレートに置き換える。

新オラクルテキスト:
{0}:あなたがコントロールするクリーチャー1体を対象とする。このターンにShaman en-Korに与えられる次のダメージ1点は、その代わりに、それに与えられる。
+ {1白}:クリーチャー1体を対象とする。このターン、あなたが選んだ発生源1つが、それに与える次のダメージは、その代わりに、Shaman en-Korに与えられる。

《Sorrow's Path》
印刷されたテキストは改行によって能力が2つなのか1つなのかわからなかった。《Sorrow's Path》は能力の間に半角スペースを空けている。だからカードを見るとすべてが1つの能力なのか、最初の3行が起動型で次の3行が誘発型であるのかがはっきりしない。
当時のプレイヤーは一般的に2つの能力であると解釈していた。そうすれば役立たずなものではなくなるし、そう解釈できるからだ。一方オラクルはすべて1つの能力になっている。これはオリジナルの植字ファイルからそうなった。が、だからといってそれが2つの能力であってはいけない理由にはならない。《真鍮の都/City of Brass(5ED)》の2つの能力はアラビアン・ナイトでは一つに統合されて印刷されており、これは別々の能力と解釈されてクロニクルズで正しく2行に分けられた。断言できる理由がなく、しかもオラクルテキストがプレイヤーが実際にカードをプレイした方法をカードに反映したケースである。

新オラクルテキスト:
{T}:対戦相手1人がコントロールするブロック・クリーチャー2体を対象として選ぶ。それらのクリーチャーがお互いに、もう一方のブロックしている全てのクリーチャーをブロック可能な場合、それらを両方とも戦闘から取り除く。その後、お互いに、片方がブロックしていた全てのクリーチャーをブロックする。
Sorrow's Pathがタップ状態になるたび、これは、あなたと、あなたがコントロールする各クリーチャーにそれぞれ2点のダメージを与える。

《烙印の死霊/Tainted Specter(MIR)》
現在のオラクルは「捨てる」という言葉を使わないでプレイヤーがカードを自分の手札から墓地に置くようにしている。これは改める。

新オラクルテキスト:
飛行.
{1黒黒},{T}:プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーが、自分の手札からカードを1枚自分のライブラリーの一番上に置かない限り、そのプレイヤーはカードを1枚捨てる。これによりプレイヤーがカードを捨てた場合、Tainted Specterは、各クリーチャーと各プレイヤーにそれぞれ1点のダメージを与える。この能力は、あなたがソーサリーをプレイできるときにのみいつでもプレイできる。

《束の間の開口/Temporal Aperture(USG)》
能力が解決したときに一瞬だけライブラリーの一番上のカードを公開する。すぐに公開は終わるのだがそれがライブラリーの一番上で裏向きの状態で追跡し続けることを必要とし、裏向きの間でプレイすらできる。これは気味が悪いが特に問題視されなかった。しかし1月の総合ルール更新でライブラリーのカードの追跡において機能が維持できなくなってしまった。《束の間の開口/Temporal Aperture(USG)》は公開されたままであることを明記する。

新オラクルテキスト:
{5},{T}:あなたのライブラリーを切り直し、その一番上のカードを公開する。ターン終了時まで、そのカードがあなたのライブラリーの一番上にあり続ける限り、ライブラリーの一番上のカードを公開したままでプレイし、あなたはそのカードをマナ・コストを支払うことなくプレイしてもよい。(そのマナ・コストに含まれるXは0である。)

《不定の多相の戦士/Unstable Shapeshifter(TMP)》
《不定の多相の戦士/Unstable Shapeshifter(TMP)》は自分自身が場に出たときにも誘発し、自分自身のコピーになってこの能力を2つ持つことになる。次にクリーチャーが場に出て、両方の能力が誘発する。ひとつめが解決すると新しいクリーチャーのコピーになりこの能力も持ち続ける。ふたつめも解決すると同じことが起こる。この能力のコピーはひとつで十分だ。それによって期待通りの機能を持つ。これ自身が誘発させてしまうことが不必要であり紛らわしい。そうしないために訂正を行った。

新オラクルテキスト:
他のクリーチャーが1体場に出るたび、Unstable Shapeshifterは、そのクリーチャーのコピーになり、このコピー能力を得る。


◆テンプレートのみの変更

版図
過去2年にわたって、我々はキーワードになっていないセット独自のメカニズムを示すために能力語を使ってきた。この言葉はルール的意味を持たない。基本的に注釈文のような感じで類似した能力を簡単に分類し、理解を助けるためにある。族系や暴勇がその一例である。
能力語というのはひとつのセットの複数枚のカードを互いに結びつけるタグのようなもので、オラクルではまだまだ未整備な部分であるから置いていけばそれに見合うものになるだろう。たとえば、《狂気の瀬戸際/Brink of Madness(ULG)》は暴勇に相当し、そうすることもできたがオラクルレコードには「暴勇」タグがついていない。《うろ穴生まれのバーゲスト/Hollowborn Barghest(SHM)》や《怠惰な思考/Idle Thoughts(EVE)》も暴勇に相当するが能力語なしで印刷された。

今回の版図はインベイジョンブロックで導入され、能力語としてタグをつける完璧な例である。それぞれの版図能力は異なっており、つまりキーワード能力としてまとめられない。しかし各個の重要な部分は同じであるからだ。インベイジョンブロックは我々が能力語を使い始める前のものなので、カードがそう印刷されるチャンスがなかった。いっぽうコンフラックスは「版図」をカードに印刷できたのだ。インベイジョンからの再録である《俗世の相談/Worldly Counsel(INV)》が含まれている。オラクルでこのテキストに「版図」が加わるだろうし、ブロックのメカニズムとして明確なので、すべての適切なオラクルレコードに「版図」を書き加える。《版図の踏みつけ/Tromp the Domains(TSP)》もそうだし、《ケルドの巨石/Keldon Megaliths(FUT)》のように時のらせん当時に利用できたならこれも能力語を使っていただろう。

この変更が行われたカード:
《連合戦略/Allied Strategies(PLS)》
《崩れる境界線/Collapsing Borders(INV)》
《集団監禁/Collective Restraint(INV)》
《ドラコ/Draco(PLS)》
《回避行動/Evasive Action(APC)》
《風変わりな呪い/Exotic Curse(INV)》
《風変わりな病/Exotic Disease(PLS)》
《ガイアの力/Gaea's Might(PLS)》
《カヴーの斥候/Kavu Scout(INV)》
《マグニゴス・ツリーフォーク/Magnigoth Treefolk(PLS)》
《秩序ある渡り/Ordered Migration(INV)》
《次元の絶望/Planar Despair(APC)》
《力の鎧/Power Armor(INV)》
《サマイトの巡礼者/Samite Pilgrim(PLS)》
《ストラタドン/Stratadon(PLS)》
《団結の力/Strength of Unity(INV)》
《部族の炎/Tribal Flames(TSB)》
《版図の踏みつけ/Tromp the Domains(TSP)》
《蛇行する川/Wandering Stream(INV)》
《旅する巨人/Wayfaring Giant(INV)》

《肥沃な大地/Fertile Ground(LRW)》ほか
現在のテキストは技術的には正しいのだが、何年もの間プレイヤーを悩ませてきた。マナが追加されるのか代わりとして出るのかが不明瞭だったからだ。追加ノマナであることを示す注釈文を書き加える。

《肥沃な大地/Fertile Ground(LRW)》の新オラクルテキスト:
エンチャント(土地).
エンチャントされている土地がマナを引き出す目的でタップされるたび、それのコントローラーは自分のマナ・プールに、好きな色1色のマナ1点を加える。(土地が生み出すマナに追加で加わる。)

この変更が行われた他のカード:
《沸き立つ汚泥/Bubbling Muck(UDS)》
Chaos Moon
《夜明けの反射/Dawn's Reflection(5DN)》
《エルフの案内/Elvish Guidance(ONS)》
Gauntlet of Might
《魔力の篭手/Gauntlet of Power(TSP)》
High Tide
《はびこり/Overgrowth(10E)》
Snowfall
《楽園の拡散/Utopia Sprawl(DIS)》
《花盛りの春/Vernal Bloom(USG)》
《繁茂/Wild Growth(ICE)》


《強要/Coercion(TMP)》など
プレイヤーが手札から選んで捨てる(あるいは取り除く)系統の、明確に同じ呪文や能力の小さな言葉遣いの差異を修整してきている。《困窮/Distress(10E)》と《強要/Coercion(TMP)》とでは微妙な差異が見られ、カードが働く方法そのものには影響はないが《困窮/Distress(10E)》のテキストを標準としてそれぞれを修整する。

《強要/Coercion(TMP)》の新オラクルテキスト:
対戦相手1人を対象とする。そのプレイヤーは自分の手札を公開する。あなたはその中からカードを1枚選ぶ。そのプレイヤーはそのカードを捨てる。

この変更が行われた他のカード:
《酷評/Castigate(GPT)》
《強迫/Duress(USG)》
《侵食/Encroach(UDS)》
《遁走の恐君主/Ghastlord of Fugue(SHM)》
《飢えたるもの、卑堕硫/He Who Hungers(CHK)》
《失われた時間/Lost Hours(FUT)》
《精神創傷/Mind Slash(NEM)》
《悪夢の虚空/Nightmare Void(RAV)》
《村八分/Ostracize(ULG)
《精神の槍/Psychic Spear(BOK)》
《心盗み/Psychic Theft(PCY)》???
《砕かれた夢/Shattered Dreams(5DN)》
《シミアの死霊/Shimian Specter(FUT)》
《タララの苦悩/Talara's Bane(EVE)》
《暴露/Unmask(MMQ)》
《ヴェナーリアの微光/Venarian Glimmer(PLC)》


《トーモッドの墓所/Tormod's Crypt(TSB)》など
特定の領域にあるカードすべてをゲームから取り除くのに標準化していることとは矛盾がある。《朝明け/Morningtide(TOR)》と《トーモッドの墓所/Tormod's Crypt(TSB)》は言葉は違うが同じことをしている。《トーモッドの墓所/Tormod's Crypt(TSB)》の言葉遣いは劇的だが、ゲームをはじめたばかりのプレイヤーにとってはカードがあるのかないのかが紛らわしい。《朝明け/Morningtide(TOR)》に沿うことにする。

《トーモッドの墓所/Tormod's Crypt(TSB)》の新オラクルテキスト:
{T},Tormod's Cryptを生贄に捧げる:プレイヤー1人を対象とし、そのプレイヤーの墓地にある全てのカードをゲームから取り除く。

この変更が行われた他のカード:
《瓶詰めの回廊/Bottled Cloister(RAV)》???
《二枚舌/Duplicity(TMP)》???
《ジャンドの魔除け/Jund Charm(ALA)》
《壺の大魔術師/Magus of the Jar(TSP)》???
《記憶の壺/Memory Jar(ULG)》???
《月輪の鏡/Moonring Mirror(CHK)》
《大祖始の遺産/Relic of Progenitus(ALA)》
Thought Lash

《剣歯ニショーバ/Sabertooth Nishoba(INV)》ほか
いくつかのカードは2つのプロテクションを持ち、与えるものもある。たいていの場合は2重プロテクション能力を使う。《静月の騎兵/Stillmoon Cavalier(EVE)》のような。だが、2つの別々のプロテクション能力を持つものもある。より人気のある様式を使うことで、相違を除くことにする。

《剣歯ニショーバ/Sabertooth Nishoba(INV)》の新オラクルテキスト:
トランプル,プロテクション(青と赤).

この変更が行われた他のカード:
《憤怒の天使アクローマ/Akroma, Angel of Fury(PLC)》
《怒りの天使アクローマ/Akroma, Angel of Wrath(TSB)》
《アクローマの記念碑/Akroma's Memorial(FUT)》
《法と優雅の仮面/Mask of Law and Grace(UDS)》
《ヴェクの聖騎士/Paladin en-Vec(10E)》


バンドと飛行
6枚のカードがバンドと飛行を持っている。そのうち4枚がバンドのほうが飛行より前に来ている。それに合うように《メサ・ペガサス/Mesa Pegasus(5ED)》と《ナラスニ・ドラゴン/Nalathni Dragon》を変更する。

防衛と飛行
21枚のカードが防衛と飛行を持っている。そのうち19枚が防衛のほうが飛行より前に来ている。それに合うように《ウーナの門の管理人/Oona's Gatewarden(SHM)》と《羽毛覆い/Plumeveil(SHM)》を変更する。


部分的な注釈文を持つキーワード能力のリスト
いくつかのカードには複数のキーワード能力が同じ行にあるが注釈文は分かれてはいない。そこで、コンマではなくセミコロンでそれらを分けることにする。最近のキーワード能力がオラクルで定まったときにはキーワード能力と注釈文が書かれている。しかしいくつかはセミコロンを使うべきところでコンマが使われている。これを修正する。
あなたはオラクルには注釈文が必要ないと思うだろうか?被覆を持つ新しいカードは注釈文がないが、古いカードにとっては注釈文があることで印刷されたテキストに近くなるため、これを保持することにしている。

《霊気の皮膜/AEther Membrane(PLC)》
《年経た蜘蛛/Ancient Spider(PLS)》
《賛美されし天使/Exalted Angel(ONS)》
《巨大ヒヨケムシ/Giant Solifuge(GPT)》
《鷹喰い蛾/Hawkeater Moth(USG)》
《キイェルドーのガーゴイル/Kjeldoran Gargoyle(CSP)》
《北の樹の木霊/Kodama of the North Tree(CHK)》
《長弓兵/Longbow Archer(7ED)》
《哀悼のスラル/Mourning Thrull(GPT)》
《幻影のニショーバ/Phantom Nishoba(JUD)》
《シミックの空呑み/Simic Sky Swallower(DIS)》
《テル=ジラードの射手/Tel-Jilad Archers(MRD)》
《罠根の神/Traproot Kami(BOK)》
《戦天使/Warrior Angel(STH)》
Whip Vine
《ゼフィド/Zephid(USG)》


その他、機能変更ではない変更点

《中断/Abeyance(WTH)》《白兵戦/Hand to Hand(TMP)》
インスタント「呪文」、ソーサリー「呪文」をプレイすることについて言及するべきである。

《中断/Abeyance(WTH)》の新オラクルテキスト:
プレイヤー1人を対象とする。ターン終了時まで、そのプレイヤーはインスタント呪文とソーサリー呪文とマナ能力でない起動型能力をプレイできない。
カードを1枚引く。

《白兵戦/Hand to Hand(TMP)》の新オラクルテキスト:
インスタント呪文とマナ能力でない起動型能力は、戦闘フェイズの間にプレイできない。

《Adarkar Unicorn》《Snowfall》
同じマナの使用制限があるのだが良くない形でテキストが異なっている。どちらも最適とは言えない。

《Adarkar Unicorn》の新オラクルテキスト:
{T}:あなたのマナ・プールに、{青}か{1青}のどちらかを加える。このマナは、累加アップキープのコストを支払うためにしか使用できない。

《Snowfall》の新オラクルテキスト:
累加アップキープ {青}.
+ いずれかの島(Island)がマナを引き出す目的でタップされるたび、そのコントローラーは自分のマナ・プールに、{青}を加えてもよい。(土地が生み出すマナに追加で加わる。)その島(Island)が氷雪である場合、その代わりに、そのコントローラーは自分のマナ・プールに、{青青}を加えてもよい。このマナは、累加アップキープのコストを支払うためにしか使用できない。

《Apocalypse Chime》
コンマがコロンになっていた。

新オラクルテキスト:
{2},{T},Apocalypse Chimeを生贄に捧げる:全ての Homelands エキスパンションのトークンでないパーマネントを破壊する。それらは再生できない。

《覚醒/Awakening(STH)》
印刷されたテキストでは、誘発型能力のコントローラーがすべてのクリーチャーと土地をアンタップするよう指示されていた。いつしか自分がコントロールするものを自分がアンタップするような指示に変えられていた。特に理由がないので、これは元に戻す。

新オラクルテキスト:
各アップキープ開始時に、全てのクリーチャーと全ての土地をアンタップする。

《チャネル/Channel(4ED)》
これはコンマがなかった。

《カリスマ/Charisma(MMQ)》
「の」が無かった。

《Dreams of the Dead》
最後の文章で起こりうるのは、クリーチャーがゲームから取り除かれることで場を離れれば、やはりゲームから取り除くことになるのだろうか?この場合、能力は何もしない。より正確に言うなら、同一のイベントでイベントを置き換える。この必要なさそうなケースは、フラッシュバックや蘇生が両方とも「いずれかの領域に置く代わりにこれをゲームから取り除く」とあるからである。これも同じくそうする。

新オラクルテキスト:
{1青}:あなたの墓地にある白か黒のクリーチャー・カード1枚を対象とし、それを場に戻す。そのクリーチャーは「累加アップキープ {2}.」を得る。そのクリーチャーが場を離れる場合、それをいずれかの場所に置く代わりにゲームから取り除く。

《Dystopia》《腐れ/Putrefaction(MMQ)》《恐怖の支配/Reign of Terror(MIR)》《Snow Hound》
カードテキストに2つの色の単語が出てくるが、この順番はマナ・コストのマナシンボルの順番に合わせてある。厳密に白青黒赤緑という順番ではない。緑の順番は少し特殊で、白か青が来るときには緑が先に来るようになっている。

《Dystopia》の新オラクルテキスト:
累加アップキープ - ライフを1点支払う.
各プレイヤーのアップキープ開始時に、そのプレイヤーは、緑か白のパーマネントを1つ生贄に捧げる。

《腐れ/Putrefaction(MMQ)》の新オラクルテキスト:
いずれかのプレイヤーが緑か白の呪文を1つプレイするたび、そのプレイヤーはカードを1枚捨てる。

《恐怖の支配/Reign of Terror(MIR)》の新オラクルテキスト:
全ての緑のクリーチャーか全ての白のクリーチャーを破壊する。それらは再生できない。この方法で墓地に置かれたクリーチャー1体につき、あなたは2点のライフを失う。

《Snow Hound》の新オラクルテキスト:
{1},{T}:あなたがコントロールする緑か青のクリーチャー1体を対象とする。それとSnow Houndをそれぞれのオーナーの手札に戻す。

《精油スリヴァー/Essence Sliver(TSB)》
注釈文にタイプミス。gainであるはずがgainsになっていた。

《ハナの保護管理/Hanna's Custody(TMP)》
この能力にとってテキストは「すべて」から始まるのが適切である。

新オラクルテキスト:
全てのアーティファクトは被覆を持つ。(それらは呪文や能力の対象にならない。)

《ハートストーン/Heartstone(STH)》
文章がわかりにくかった。

新オラクルテキスト:
クリーチャーの起動型能力をプレイするためのコストは{1}少なくなる。この効果によっては、能力をプレイするためのコストは1マナより少なくならない。

《外殻貫通/Hull Breach(PLS)》
《枝分かれの稲妻/Branching Bolt(ALA)》と同様の様式にする。

新オラクルテキスト:
以下の2つから1つまたは2つを選ぶ。「アーティファクト1つを対象とし、それを破壊する」「エンチャント1つを対象とし、それを破壊する」

《侵略計画/Invasion Plans(STH)》
《手練れの戦術/Master Warcraft(RAV)》がよい先例となっている。

新オラクルテキスト:
全てのクリーチャーは、可能なら毎ターンブロックする。
各ターン、各クリーチャーがどうブロックするかは攻撃側プレイヤーが選ぶ。

《Lost Order of Jarkeld》
このカードは場に出たときに対戦相手を選び、以降その対戦相手を参照する。だが、選択がなされたあと、選ばれたプレイヤーが《Lost Order of Jarkeld》のコントローラーの対戦相手であるかどうかは関係がない。もし選ばれたプレイヤーが《Lost Order of Jarkeld》のコントロールを得たとしても、この能力はまだそのプレイヤーを参照し、有効に働く。すでに「対戦相手」ではないとしても。このため、2番目の能力は「選ばれたプレイヤー」と書くのがより明確である。《Jihad》や《Call to Arms》へも同様の苦情がきていたのだが、このカードは見落とされていた。

新オラクルテキスト:
Lost Order of Jarkeldが場に出るに際し、対戦相手1人を選ぶ。
Lost Order of Jarkeldのパワーおよびタフネスは、それぞれ、選ばれたプレイヤーがコントロールするクリーチャーの総数に1を足した値に等しい。

《磁力の網/Magnetic Web(TMP)》
最初の能力は「このターン」を持つべきではなかった。

新オラクルテキスト:
その上にMagnetカウンターが置かれているクリーチャーが攻撃した場合、その上にMagnetカウンターが置かれている全てのクリーチャーは、可能ならば攻撃する。
その上にMagnetカウンターが置かれているクリーチャーが攻撃するたび、このターン、その上にMagnetカウンターが置かれている全てのクリーチャーは、可能ならばそのクリーチャーをブロックする。
{1},{T}:クリーチャー1体を対象とする。それの上に磁力(Magnet)カウンターを1個置く。

《淡色のマイコダーム/Pallid Mycoderm(PLC)》
最後の能力は少しあいまいなので、《冷眼のロヴィサ/Lovisa Coldeyes(CSP)》と同じようなテキストに変更する。

新オラクルテキスト:
あなたのアップキープ開始時に、Pallid Mycodermの上に胞子(spore)カウンターを1個置く。
Pallid Mycodermからsporeカウンターを3個取り除く:緑の (1/1) の苗木(Saproling)・クリーチャー・トークンを1体場に出す。
苗木(Saproling)を1つ生贄に捧げる:あなたがコントロールするファンガス(Fungus)・クリーチャーと苗木(Saproling)・クリーチャーは、ターン終了時まで +1/+1 の修整を受ける。

《パルンズの柱/Pillar of the Paruns(DIS)》
マナの使用制限のテンプレートは《原初の彼方/Primal Beyond(MOR)》やコンフラックスのカードで確立したので、《マナの反射/Mana Reflection(SHM)》などとの関係もあわせて変更する。

新オラクルテキスト:
{T}:あなたのマナ・プールに、好きな色1色のマナ1点を加える。このマナは、多色の呪文をプレイするためにしか使用できない。

《分霊の確約/Promise of Bunrei(SOK)》
基本的に1度しか誘発しないカードには「~たび」は使わず「~とき」を使う。もちろん《分霊の確約/Promise of Bunrei(SOK)》が複数回誘発する状況はある。自分のコントロールするクリーチャーが複数体同時に墓地に置かれたり、誘発型能力がスタックに置かれているときにさらに誘発したり、などだ。「そのとき」の誘発型能力の解決時に《分霊の確約/Promise of Bunrei(SOK)》を生け贄に捧げなければならないのは事実である。

新オラクルテキスト:
あなたがコントロールするクリーチャーが1体場からいずれかの墓地に置かれたとき、Promise of Bunreiを生贄に捧げる。そうした場合、無色の (1/1) のスピリット(Spirit)・クリーチャー・トークンを4体場に出す。

《魂の捕縛/Seize the Soul(GPT)》
《恐怖/Terror(10E)》と同じように、「白でない」と「黒でない」の間にコンマを入れた。(日本語には影響はありません。1つめの能力にはコンマが追加されていますが、3つめの能力にはありません。次回更新を待ちたいと思います)

《サラカスの詐欺師/Thalakos Deceiver(STH)》
《分霊の確約/Promise of Bunrei(SOK)》とは異なり、この能力は解決時に《サラカスの詐欺師/Thalakos Deceiver(STH)》を生け贄に捧げなくてもよいため、容易に複数回誘発する。そのため、「~とき」ではなく「~たび」を使うべきである。

新オラクルテキスト:
シャドー.
Thalakos Deceiverが攻撃してブロックされないたび、クリーチャー1体を対象とする。あなたはこれを生贄に捧げてもよい。そうした場合、そのクリーチャーのコントロールを得る。(この効果は、ターン終了時に終わらない。)

《ヴォルラスの研究室/Volrath's Laboratory(STH)》
「1種類」を最初の能力に追加し、「このターン(注:実際はinto play)」は2つめの能力へ移動させている。(日本語版は完璧なのでまったく影響はありません。)

《ヴォルラスの多相の戦士/Volrath's Shapeshifter(STH)》
ルールは全体的に改善させるために機能が変わるときがある。大部分のカードにとっては改善だが、捨て置かれるものもある。
継続的効果の種類別システムが導入されたとき、異なる種別の継続的効果は適用が分かれている。コピー効果(1種)はコントロール変更効果(2種)より前に適用される。なぜなら、存在するカードの全て(1枚を除いて)がそれで機能するからだ。だからといって《ヴォルラスの多相の戦士/Volrath's Shapeshifter(STH)》を守るために種類別ルールを入れ替えるという選択肢は無い。もしそんなことをしたら、《押収/Confiscate(USG)》をコピーしている《エンチャント複製/Copy Enchantment(RAV)》や《誘惑蒔き/Sower of Temptation(LRW)》をコピーしている《クローン/Clone(10E)》など、有名な組み合わせが機能しなくなってしまう。
《ヴォルラスの多相の戦士/Volrath's Shapeshifter(STH)》が種類別システムで問題となるのはコントローラーの墓地の一番上を問題にするからだ。つまりコピー効果は誰がコントロールしているかということに依存している。プレイヤーAが《ヴォルラスの多相の戦士/Volrath's Shapeshifter(STH)》をコントロールしていて、プレイヤーBがそれを《押収/Confiscate(USG)》した。すると《ヴォルラスの多相の戦士/Volrath's Shapeshifter(STH)》はあいかわらずプレイヤーAの墓地を見続けることになる。これは、《ヴォルラスの多相の戦士/Volrath's Shapeshifter(STH)》がもとのコントローラーを覚えているからで、コピー効果は《押収/Confiscate(USG)》のコントロール変更効果よりも先に適用されてしまう。
これを解決するために、《ヴォルラスの多相の戦士/Volrath's Shapeshifter(STH)》の効果はコピー効果から文章変更効果へ変更された。(3種なのでコントロール変更より後に適用される。)《幻覚/Mind Bend(10E)》のように、テキストの1単語を変えるのが大部分の文章変更効果だ。《ヴォルラスの多相の戦士/Volrath's Shapeshifter(STH)》は自分自身のテキストをすべて変える。そして「文章」の定義を拡大し、色やマナ・コストやもろもろまで含んでしまう。酷いものだが解決法のひとつだ。
このカードのエレガントな訂正が気に入っているし、これがリストに入っている理由でもある。さて、若干不必要なテキストがカードにあるのでこれを削除し、コンマを加え、注釈文は斜体にした。要は「場にある間」が明白すぎて不要であった。

新オラクルテキスト:
あなたの墓地の一番上のカードがクリーチャー・カードである限り、Volrath's Shapeshifterはそのカードの全ての文章を持つとともに「{2}:カードを1枚捨てる」の文書を持つ。(Volrath's Shapeshifterはそのカードの名前、マナ・コスト、色、タイプ、能力、パワー、タフネスを持つ)
{2}:カードを1枚捨てる。

《ヨーグモスの行動計画/Yawgmoth's Agenda(INV)》
《コルフェノールの計画/Colfenor's Plans(LRW)》や《法の定め/Rule of Law(10E)》が、より最新のテンプレートを使っている。これに沿うようにする。

新オラクルテキスト:
あなたは毎ターン1つしか呪文をプレイできない。
あなたは、あなたの墓地にあるカードをプレイしてもよい。
いずれかの場所からあなたの墓地にカードが置かれる場合、その代わりに、それをゲームから取り除く。

ニコル・ボーラスは知っている。ネスk ・・・ではなく、力への道はそう望んだ手下たちの背中で舗装されていることを。

多元宇宙を支配するというのは誰かの家の玄関に置いてあるプレゼントのようなものではない。それは、ボーラスのような超越した知恵者であっても変わることはない。

力とは人々にとって真に憧れるものだ。

ステキな悪魔的計画には、手下が必要だ。それはまるで良い機械が小さな、丈夫で、正確な部品を必要とするようなものだ。
しかし昨今、そんな良い手伝いを探すことは困難である。

悲しいかな、あなたが少しでも注意をそらせばその手下はあっという間に裏切るものなのだ。たいていの人間が平均2週間と待たないで2つの共同体をそれぞれ裏切っている。研究家は、今日の悪党たちがそのシステムを理解するにはあまりにも浅はかで単純な脳味噌をしていることを示している。嫌になってくることで服従の意志もゆらいでしまうわけだ。

じゃあ、邪悪なる指導者はどうするというのだろう?標準以下の歯車でなんとかする?みずから腕まくりして一人でがんばる?まったくすべてなにもかも絶望的なのだろうか?

否。断じて。

良い手下を見つけることはとても簡単で、とても面白いのだ。あなたは心理的特徴をよく観察しなければならない。サインを読み取り、すばやく正確に、良い手下となりうるかどうかを品定めしなければならない。

今日、われわれは悪党がいずこかで手下を探した結果、2人の成功例を見ることが出来る。



グゥファ・ハジード バントの商人

まずはバントの次元の商人、グゥファ・ハジードの例だ。ハジードは、王国の宗教と学問の混ざった他の多くの住人と同じように、勤勉で天使を敬い社交的だ。法律への服従、より高位の階級への敬意と権威への尊重は、バントの住人たちの常識である。

だが、そういった人々をあなたの手先にしようと考えるのは大間違いだ。バントの人々は忠義だけでなく道徳的価値にも盲目的であり、そういった献身を邪悪な目的に変換することは無駄である。たしかに、騎士長の輝かしい経歴を見たなら、味方につければ心強いと思うだろう。けれどちょっと考えてみて欲しい。そういった名誉を重んじる騎士らはあなたの邪悪な目的とは正反対な規約を守っている。

幻覚を見せる魔法でその忠誠を無効にできるが、そういった試みは目的を堕落させ、戦士の魂を鈍らせてしまうことが多かった。それに、あの胸を張って、陽のもとで栄光に輝く目。あれは悪の匂いをかぎつけようものなら見敵必殺と言わんばかりだ。こういうのは手下には向かない。

しかしハジードは事情が違う。彼はバントにおける大規模なキャラバンを率いる主人であり、世界でも有数のレオトー引きの荷車はバントの5つの国を巡っている。彼は抜け目ない商人であり、商談はすべて最終的に彼の勝ちに終わっている。そして常に動き回り、商品を待つ顧客のためにワゴンいっぱいの品物を運び続けているのだ。

そして、ハジードの商売は常にバントの法律に書いてあるとおりに行っているわけではない。まったくもって―無法な商品も、幾多のキャラバンのなかのひとつには見出すことが出来る。そのために彼の首が処刑台に登ることになるようなものだ。国境検査官や祝福階級の役人が彼の行為を見咎めるときには、彼は別の場所を詮索するように説得しはじめる。実際、ハジードはこの手の説得の専門家であり、彼はどんな人でも丸め込むことが可能なのだ。

《成金、グヮファ・ハジード/Gwafa Hazid, Profiteer(CON)》

ハジードはバントの住人の大半が持っていない野心を持つがゆえに、手下となる可能性が大きい。彼は生活で得られるものよりさらに多くを欲している。それは、バントのガチガチの階級制度のなかでは万死に値することなのだ。彼は自分の現在地より高く、遠くへ行きたい人間なのだ。だから彼は嘘をつき、こそこそ立ち回り、持っている貨幣のいくらかで買収し、ときには脅迫するのだ。

ハジードの野望の鼻先に正しい約束さえぶらさげてやれば、さらなる暗き行為をバントで行わせることさえ可能になるに違いない。言い換えれば、手先となる人材として最適なのだ。つまりはそれが、大いなる計画の一部として彼を従えるためにニコル・ボーラスが彼と接触を持った理由なのだ。
計画の全容とハジードの役割はまだ明らかになっていない。だが野望を手にすることは彼の運命にとっても鍵となるに違いない。果たして、それはアラーラ自身の運命の鍵でもあるのだから。




ラッカ・マー ジャンドの精霊術士

2つめの例はジャンドの人間のシャーマン、精霊術士ラッカ・マーの件だ。ラッカの事情はすこし異なる―彼女は自分の手下を持つことが栄誉である手下なのだ。

彼女はジャンドにおける平均年齢を超えた女性であるー50歳になんなんとしている。この残虐で弱肉強食の断片ではその年まで生きていることが前人未到だ(訳者注:《血編み髪のクレシュ/Kresh the Bloodbraided(ALA)》も同じぐらいのナイスミドルです)。
彼女は片腕として怒りと炎のエレメンタルを召喚する強力な才能を持っており、この手先をジャンドの脅威と自分の間に置くことで生き残ってきた。

《ラッカ・マー/Rakka Mar(CON)》

数年の間、ラッカ・マーは人間の戦士の部族から部族へと放浪し、迎え入れてくれる者には自らの精霊術で手助けをすることを申し出ていた。彼女は「命狩り」―巨大な獲物を狩るために勇敢な戦士を集め、自滅的な戦いをするジャンドの伝統行事―を追い求めるがために壊滅した部族を多く見てきており、彼女のエレメンタルはそういった狩りで非常に有用な武器となるのだが、彼女にとって「命狩り」はまた別の目的があった。

ラッカの願望はもっと強力な、さらに破壊的なエレメンタルを喚び出す事―それは襲い来る死と戦う防御のための願いとも見えるが、根っこの部分は単純な力への渇望であった。力への欲求は手下候補としてもっとも簡単にかなえることが出来るものの一つである。新しい呪文や儀式の幸運な授かりものをでっちあげれば、そいつは死ぬまであなたについて来ることだろう。

ニコル・ボーラスはラッカ・マーに目星をつけた。彼女がジャンドじゅうを歩きまわり、部族という部族へ働きかけているという事実は、彼女の働きでジャンドの文明人の心と考えに対してボーラスの優位が生じるということである。ボーラスはラッカの影響力を利用し、人間の戦士部族を、さらなる規模のいっそう劇的な「命狩り」へと駆り立てていった。そうして間も無く始まる衝合での他の次元との戦争をすぐにでも始められるように準備を整えさせたのだった。

その見返りとして、ラッカはこれまでに感じたことのない精霊術の暗い力が増大していた。彼女の才能は若きシャーマンの娘だった頃の才能をはるかに超えていた。彼女の魂は暗き怒りがあふれ、彼女自身の仲間たちへの悪意が増大することを隠しておくことが難しくなっていった。しかし同時に、それは異常なほどの活力をも与え、ジャンドの筋骨たくましい肉食動物たちと歩むことを可能にしていた。彼女はボーラスの計画の一片だけを見ていた―彼女に助言を与えるためにジャンドに立ち寄った竜の薄暗く光る目をーだが彼女は、自分の運命がこの野蛮な世界でないどこかにあることを感じ取っている。
彼女は自分が手下に過ぎないことも承知の上だが、その役割を演じることを厭わない。

ライオンマーク

ライオンマークは1988年、英国トイ&ホビー協会によって制定され、玩具の安全性と消費者に対する品質のシンボルとして、CEマークとは違って、このマークがそれを示しているのです。
英国トイ&ホビー協会(BTHA)の会員の間でのみ使われているものですが、これはヨーロッパの国々や多くの主要な諸外国がメンバーとなっています。BTHAの会員はイギリスで販売されている玩具の95%を提供しています。

ライオンマークのポイントは何でしょうか?
ライオンマークを表示するためには、提供元は厳しい試験規約にサインをしなければなりません。(TRAコード――アメリカのタイヤ用途などをコード化したもの――は、この文書に基づいています)
それが示すのは、安全性の諸問題の解決や、高い水準で要求されている広告の倫理観と偽造を困難にする手法の解決が成されているということなのです。


グリーン・ドット
グリーン・ドットは環境保護を会社が確約していることを示す国際的なシンボルです。

グリーン・ドットトレードマークは世界の160を超える国々で守られています。デュアルシステム・ドイチュラントが90年代前半にドイツでこのマークを確立しました。傘下組織であるプロ・ヨーロッパは、グリーン・ドット・プログラムを執行し、20カ国のパッケージの回収と、シンボルの分類を守ってリサイクルを行っています。

グリーン・ドットの基本理念は、ロゴを見た消費者がこの製品の製造元がごみ回収とリサイクルに貢献していることがわかることにあります。
これは当局(特別な袋―たとえばドイツでは黄色の袋です)によって集められた家庭ごみや公共の施設、駐車場やスーパーマーケットの外にあるようなゴミ箱などから回収されるのです。

ライセンス料は製品の開発元が支払います。金額は国によっても、そしてパッケージの材料によっても違ってきます。(紙、プラスチック、金属、木、ダンボールなど。)

それぞれの国で分類に応じて決まった、あるいは可変の料金が存在しています。その料金には、分別する費用や、収集、リサイクルする費用を考慮に入れているのです。単純な論理で、パッケージのコストを削減すればライセンス料も安くなるということです。